tsurfの機械設計研究室

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【製造業全般】3DCADがあれば 2DCAD は必要なくなるのか?

本ブログの御訪問ありがとうございます
機械設計歴20年以上のtsurfと言います

 

今回は以下に関する記事です

【製造業全般】3DCADがあれば
2DCAD は必要なくなるのか?

  

⇩本記事は以下の方にオススメです⇩

とある設計者

3DCADを導入すれば
2D図なんていらないだろ

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

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管理人TSURF

そんなことはありません。
勘違いされているかもしれませんが
3DだろうがCADはツールにすぎません。
従って使い分けの問題です。

 

 

 

①結論

設計という工程だけを考えれば、
現代の複雑化した装置の設計において、3DCADで3D設計したほうが
早いし、正確にできます。

しかし、それによって2D図が消滅するのでしょうか?

 

現状では、そんなことはありません。


2Dが完全消滅するわけではないことを理解するには、
まず 以下の当たり前すぎる大前提を抑えておく必要があります。

3DCAD 2DCADともに
単なるツールに過ぎないので適材適所

 


上記の大前提を抑えた上で 重要ポイントを以下に簡潔にまとめます。

  • 3D出図にしろ 2D出図にしろ 出図が必要なのは、
    設計ではなく後工程(加工、検査 組立)であること。

  • 後工程にとって3Dデーターを、使わせることが第一目的ではなく、
    使った結果が従来と比較して確実に改善されたかどうかが、
    求められる。

  • 後工程に3Dデーターで業務させた結果、効率がダウンし
    実質の改悪となれば、2Dは必要となる。

  • 3Dデーターを用いた結果、従来と比較して改善されるかどうかは、
    会社が置かれた環境であるとか、扱っている装置による。

 

 

②3D導入で後工程の業務が円滑になるのか?

設計~出図だけを考えるのであれば、確かに2D図は必要ありません。

しかし、3D出図なり 2D出図なり、出図を必要としているのは、
設計ではありません。

 

出図を真の意味で必要としているのは、後工程である
加工、検査、組立です。


『3DCAD導入によって、2DCADが必要ない』
と言えるには、
3D導入によって、後工程である(加工、検査、組立)が
支障なく業務できることが大前提になります。

 

いや、支障のない業務ではなく、
従来の2Dによる業務より、
後工程の業務効率が、大幅に改善する必要があります。

 

これで、後工程の業務効率が、落ちるのであれば、
3DCADの導入は必要ないことになり、2DCADは必要となります。

 

つまり、
3DCADは、後工程に使わせることが目的ではなく
使わせた結果どうなったかが、問われるのです。

 

これは、会社の置かれている環境であるとか、
扱っている装置によって違ってくるでしょう。

 

次章で、後工程が3Dデーターで作業させられる際に
考えられる問題点を列挙します。

 

 

③後工程3D化の問題点

加工


2D出図を廃止して全てを3D出図にするとします。
先述のとおり私は
『表面処理、面肌 寸法公差などを
織り込める3DCADもあることは知っています。』

と言いました。

 

しかし、大前提として、以下の状況がある中で

『実際の加工依頼は、社内であったり、加工業者に依頼することもあり、
依頼する加工先ごとで所持設備や加工技術が違う』

実際には以下の問題点があります。

  • 全ての加工品をNC加工にすることは現実的なのか?
    (パネルのような部品や曲げのような部品も?)
  • 表面処理、面肌 寸法公差などを織り込めない3DCADもある
  • 上記のCADの場合 結局2D併用となる
  • 面肌 寸法公差を織り込んだ3DCADだとしても
    依頼する加工先の設備で、3Dのみの対応ができるか?

結局 設備的なところで、どこまで対応できるのか?
3DCADのためだけに設備を全て買い替えるのか?
というところになります。

 

 

検査

私は、検査業務をしたことがないのでわかりませんが、
2D出図を廃止して全てを3D出図にするとします。
どうやって検査するのでしょうか?

3次元測定器を用いるのでしょうか?


であれば、3次元測定器に対応する部品ばかりであれば
『検査に関しては2D図は廃止できる』と言えるでしょう。

 

 

組立

設計者でも、手伝いなどで、多少の組立経験のある方なら
わかると思いますが、3Dを見ての組立は、手間がかかります。

 

設計者本人が組み立てる場合など 
わかっている人が、一人で組み立てる場合などは問題ありません。

 

しかし 組立部の方にとって、3Dデーターのみでの組立は
は少々、不親切です。
まず、実際の組立は一人で行うわけではありません。

みんな、自分が組み立てる持ち場があり、そのたびに
小さいディスプレイを見に行かなくてはいけなく、
しかも順番待ちになります。

だったら、図面を一枚広げて、みんなで見たほうが手間も少なく
場合によっては、その図面を自身が組み立てている場所の
近くにもっていけば、組図を見ながら組立ができます。

 

3Dデーターで組み立てるのが目的ではありません。

3Dデーターで組み立てることにより、
組立効率が下がっては、何の意味もありません。

 

組立に対して、『3Dデーターのみで2Dは必要ない』
と言い切れるには、上記の問題をクリアする必要があります。

 

もちろん、例えば『I PADのようなもの』を組立部の一人一人に
支給するなどして、上記の問題をクリアできるのであれば、
『組立に関しては2D図は廃止できる』と言えるでしょう。

 

 

④まとめ

  • 設計部が設計から出図までだけを考えるのであれば、
    3Dのみで完結できる可能性はあります。
  • しかし、モノ作りは設計部で完結ではありません。
  • 出図自体は手段にすぎず、それ自体が目的でありません。
  • 出図は、加工、検査、組立などの後工程の方が必要とするものです。
  • 出図の目的は、加工、検査を通して、最終的に、
    組立が設計者の意図通りの装置を組み立てることです。
  • 従って設計部自体が、3Dなんだら2Dがいらない というのは
    違和感があります。
  • 3DCAD自体は、後工程の方に使わせるのが目的ではありません。
    使わせた結果、効率が上昇したのかが問われます。

本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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