科学

思考力が低下し始めるのは44歳頃から! 〜脳の老化とエネルギー不足の関係〜

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脳の老化はいつから始まるのか……。

  

最新の研究によると、その兆候は44歳頃から現れることが明らかになりました。

 

アメリカの研究チームは、大規模な脳スキャンと認知テストの結果を分析したところ、平均して67歳から急激に脳の老化が加速することも確認されました。

 

さらに、その主な要因は神経細胞のエネルギー不足であり、適切な介入によって老化の進行を抑えられる可能性があるといいます。

 

本記事では、研究から判明した脳の老化メカニズムと、現在考えられている予防策についてまとめていきます。

 

参考研究)

Brain aging shows nonlinear transitions, suggesting a midlife “critical window” for metabolic intervention(2025/01/13)

 

 

研究:44歳頃から見られる脳の老化

米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の研究チームは、19,300人を対象に脳スキャンと認知テストを実施しました。

 

調査の結果、脳の老化が最初に明確な兆候を見せるのは44歳頃であることが分かりました。

 

Brain aging shows nonlinear transitions, suggesting a midlife “critical window” for metabolic interventionより

  

この時点ではまだ緩やかな変化ですが、67歳になると脳の老化速度が急激に加速することも判明しました。 

  

さらに、90歳を迎える頃にはその老化の速度が一定になることが確認されています。

  

研究者たちは、この発見が将来的に脳の健康を維持するための介入方法の開発につながると期待しています。

 

 

脳の老化を引き起こす要因は「エネルギー不足」

今回の研究で注目されたのは、神経細胞がエネルギーをどのように利用しているのかという点です。

 

研究チームは、脳の神経細胞がストレスを受けた際にどのように反応するかを分析しました。

  

その結果、脳の老化の主な要因の一つが神経細胞のインスリン抵抗性であることが判明しました。

  

通常、インスリンは神経細胞にブドウ糖を供給し、エネルギーを生み出す重要な役割を果たしています。

 

しかし、加齢とともに神経細胞がインスリンに対して鈍感になり、ブドウ糖の取り込みが減少してしまいます。

 

この状態が進行すると、脳のシグナル伝達が阻害され、認知機能が低下するのです。

 

さらに、研究チームは遺伝子レベルでの分析も行いました。

 

その結果、ブドウ糖の吸収を助けるGLUT4タンパク質脂肪輸送を担うAPOEタンパク質の活動が、脳の老化と密接に関連していることが分かりました。

 

APOEは、これまでの研究においてアルツハイマー病との強い関連性が指摘されており、今回の研究結果と一致しています。

 

この発見は、“エネルギー供給の仕組みを改善することで、脳の老化を防ぐことができるかもしれない”という、脳の健康維持の大きな希望になるかもしれません。

 

  

なぜ中年期が脳の老化にとって重要なのか?

 

研究チームによると、脳の老化を防ぐための最適な介入時期は「中年期」である可能性が高いといいます。

 

その理由は、この時期の神経細胞はまだ生存可能であり、適切な対策を取ることで機能を回復できる可能性があるからです。

 

ストーニーブルック大学の神経科学者Lilianne Mujica-Parodi氏は、「中年期の神経細胞はエネルギー不足によりストレスを受けている状況が考えられるが、まだ完全に機能を失っているわけではない。したがって、この重要なタイミングで適切なエネルギー供給が行えれば、機能を回復できる可能性がある」と述べています。

 

しかし、高齢になると状況は変わります。

 

エネルギー不足が長期化すると、神経細胞の損傷が進行し、修復が困難になる可能性があるのです。

  

このため、脳の健康を維持するためには、早期に適切な介入を行うことが極めて重要であると研究者たちは警告しています。

  

  

ケトンサプリメントが脳の老化を抑制する可能性

この理論を検証するために、研究チームは101人の被験者に対してケトンサプリメントを摂取する実験を行いました。

  

ケトン体は、神経細胞のインスリン感受性を高め、代謝的なダメージを抑えると考えられています。

  

実験の結果、ケトンサプリメントを摂取した被験者では脳の老化が安定し、特に40歳から59歳の中年層で最も顕著な改善が見られました。

  

これは、適切なタイミングでの介入が効果的である可能性を示唆するものです。

   

同大学の神経科学者Botond Antal氏は、「これまでは、認知機能の低下が表面化するのを待ってから対策を講じることが一般的だった。しかし、今回の研究結果から、代謝マーカーを用いてリスクのある人を特定し、適切なタイミングで介入することで、脳の健康を守ることができる可能性がある」と説明しており、本研究が、脳の老化予防に関する考え方を根本から変えるものであるとの見解を述べています。

 

この研究結果は、神経変性疾患の予防や治療法の開発にも応用できる可能性があると研究者たちは期待しています。

 

 

まとめ

・脳の老化は44歳頃から始まり、67歳で急激に進行する

・神経細胞のインスリン抵抗性がエネルギー不足を引き起こし、脳機能を低下させる

・中年期にケトンサプリメントを摂取することで、脳の老化を抑制できる可能性がある

・早期介入が脳の健康維持にとって極めて重要であり、代謝マーカーを活用した予防策が有効

・この研究は、アルツハイマー病などの神経疾患の治療法開発にもつながる可能性がある

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