半ば強引にゲームをやることを了承させると。俺はもう一度、愛の頭をとんとんしてやった。
良く考えたら、逝くって自分で良く分かってないのに最初にこれはキツいか？ と思ったので、愛の耳元でこう言った。
「ゲーム内容変えてやるよ。１分間、まばたき禁止。これなら余裕だろ？」
一瞬、きょとんとしたが、ルールは理解したようだ。
俺はスマホのタイマーを操作し、１分にセットして、その画面が見えるようにスマホをスタンドにのせる。
「はい、スタート。スマホ、じっと見てろ、愛。」
画面をタップしてタイマーをスタートさせる。 言われた通り、愛はスマホの画面をじっと見ている。
１分なら普通に耐えられるだろう。いや、耐えてもらわないと困るのだ。
タイマーはあっという間に１分経過を知らせた。その音が店に鳴りひびいた２秒あとに、安心したように目をギュッと閉じた。
「１分はクリアか……。」
目を開けたが、こっちを見て、頼み込むように言った。
「写メ、消してっ……。」
しっかり覚えてるなあと思いながら、スタンドからスマホを取り、写真を画面に出す。
「これな？」
そう言うと愛はうなずいた。
まぁ約束は守ろう。愛に見せながら、画像の削除の操作をする。
「これで、削除するからな？ 見とけよ？」
愛に見せながら画像を削除したあとでもう一度愛に聞いた。
「さっきは１分だったからな。次は３分で勝負、どうだ？」
先ほどの１分勝負があっけなかったので、今回の ３分勝負ものってきた。
「よしよし、そうこなくっちゃな。じゃ、３分勝負だ。今度は、３分間、俺の目を見つづけること。目をそらしたら愛の負けだからな？」
そう言って、俺はまたスマホのタイマーを操作して３分にセットした。
それから、笑いながら言った。
「これで愛が勝ったら、動画も消す。もしも、愛が負けたら、プロジェクターに大写しにして、店で動画の上映会やるからよ？」
「へっ？ 上映会……？ なっ、何をバカなっ……。」
俺の目を見た愛が、俺の目が笑ってないことに気がついたのか、いきなり目がマジになった。おー、やる気になったか、愛？
「負けなきゃいいだろ。さっきみたいにあっさり 勝てるかもしんねーだろ。始めるぞ？」
スマホの画面をタップして、タイマーを動かす。
愛の両目がじっとこっちを睨んでいる。決して目をそらすものか、という強い意思の表れだろうか。
さすがに上映会がきいたか。
さっきと違って、まばたき禁止なワケではないが、愛はずっと俺を睨みつづけていた。
すごいな、マジで……。
なかなか気の強いトコがあるじゃんよ。こーゆうコを堕とすのが、楽しいんだよなぁ……。
楽しいのはこれからだからなあ、愛？
そんなコトを俺が思っているところまで見透していたら、驚きたが、さすがにそれはなさそうで。と思っていたら、タイマーが鳴った。
「お、すげェな。３分勝負も愛の勝ちかァ。」
続・痴漢電車 ５
続・痴漢電車
コメント