銀行員の転勤事情

銀行について
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転勤・異動が多いってほんと?

1.異動・転勤の頻度

銀行員は、転勤・異動がとても多い業種です。

現状の一か所あたりの在籍期間は
早い人だと1年半、3年も在籍すれば長いなという印象です。

特に新入行員の異動は早く、2年以内で異動するケースがほとんどです。
早くいろんな現場を経験し、即戦力になってほしいからですね。

悲しきかな、「やっと仕事になれてきたぞ!」「お客様とも職場の人とも打ち解けてきたな」というところで異動になってしまうのが銀行員の宿命です。

なお、一か所あたりの在籍期間は、担当する係や配属先によって多少の差があります。

営業店へ配属された場合は、おおむね1年半~3年程で異動するのが一般的ですが、

外回り・渉外担当に比べ、営業活動をしない内部事務係は在籍がやや長い傾向にあります。

本部配属ともなれば、5年以上在籍することもザラにあります

営業店は、事務も営業も融資も幅広く対応できるゼネラリストが求められるのに対し、
本部は業務も細分化され、その分野に精通したスペシャリストになることが求められていますからね。

専門的な部署の中心人物になるほど、異動させると運営が立ち行かなくなるので、

結果、本部に10年ぐらい在籍することも珍しくないです

余談ですが、実際に本部には「いないと業務が立ち行かなくなる人」が結構います(笑)

営業店からはもちろん、本部の同じ部署の人からも「そこまで詳しいことはわからないな。〇〇の事務ならAさんにかけなおして!」等と言われるほど頼りにされる人も少なくありません。

そこまでのスペシャリストになるには、やはりある程度の在籍期間は必要ですよね。

2.異動回数と出世の関係

異動・転勤と出世の関係性についてですが、結論から言うと

異動の回数よりも「どこに配属されるか」のほうが重要です。

たしかに「転勤は出世コース」という言葉もあるように、

優秀で期待されている人材ほど、異動のペースはやや早い傾向にあります。

一方で、最近は銀行も人員削減で営業店の人手がタイト。

異動の決定前に、人事部が各支店長に異動内容を打診がすることもふえています。
支店長がこっそり人材を引きとめている場合もあるので、
かつてほど異動の早さと優秀さが直結しているとは言えない状況です。

むしろ体感ですが、あまりにも短期間で異動を繰り返す人は少々難ありな印象があります。

大きなミスを繰り返していたり、前任店で辞職騒動を起こしていたりする人も多いですね。

やはり出世=栄転かどうかのいちばんの判断材料は、転勤先ですね。

異動と合わせて昇格する場合はもちろん、
期待される人材は、各支店の中でも厳しい支店や稼げる支店に配属されるもの

都市部や中心部にあるような大型店舗への異動になると「ああ栄転だな」と心から送り出せます。
評価が高い証拠ですね。

3.異動・転勤の時期

なお、異動・転勤が発令されるタイミングは銀行によってまちまちです。

おおむね以下のパターンが多いようですね。

  • 年2回(4月と10月)の大きな異動のみ
  • 年2回の大きな異動+不定期な人員調整ための異動
  • 4半期ごとに異動(3か月に1回)
  • ほぼ毎月のように異動がある
  • ほぼ不定期

ちなみに私がいた銀行は、規模の大小はあれど、ほぼ毎月異動発令がありました
次々異動者がでて、4か月連続で歓送迎会をしたこともあります(笑)

中でも4月と10月の異動は、どの銀行も大きな異動になることが多いですね。

銀行は3月の決算にあわせて、4~9月を上期、10~3月を下期としています。
4月と10月はそうした「節目」として、銀行にとっても人員調整しやすい時期。


特に4月は、多くの銀行が唯一の昇級のタイミングにもしています。
「次の支店へ役職者になって栄転」というケースが良くみられるのもこの4月ですね。

異動はいつも突然かつスピーディー

銀行員は、自分の異動が発覚すると、途端に鬼のように忙しくなります。

その理由は大きく2つあります。

一つ目は、自分が異動するかどうかも直前までわからないから

二つ目は、引継ぎのスケジュールが超短期間だから

しょぼ
しょぼ

正直、銀行員の異動は超たいへんです。


1.直前までわからない自分の異動

銀行員の異動は本当に突然です

事前に異動が知らされる「内示」なんて、あってないようなもの。

転居を伴わない異動だと、本当に月末最終日(前日)に来月の異動が知らされます

そして、いざ辞令がでれば、1週間から2週間前後で次の店舗へ着任となります。

当然、その間にお互いの業務の引継ぎも行わなければなりません。

これが外回り・渉外担当になると、そのたった一週間前後の間に「担当するお客様への挨拶まわり」も必要になりますから、本当に怒涛の忙しさになります。
担当が100件以上あろうが、引継ぎと挨拶まわりにかけられる時間はせいぜい3日程度しかありません。

なお転居を伴う「転勤」の場合は、1週間ほど早く赴任先を教えてもらえるのが一般的です。
それでも部屋探しや引っ越しの準備が必要となりますから、本当に時間が足りないですよね。

2.【超高速】引継ぎスケジュール

お客様からすれば、今まで担当していた人が変わるとなれば、

「後任の人にもスムーズに対応してほしい」「今まで相談してきたこともしっかり共有してほしい」と思われるのが当然ですよね。

しかし、異動が決まった銀行員にはそんな時間の猶予は全く残されていないのが実情です。

参考に、私の銀行で渉外担当者が異動になった場合のスケジュールを紹介します。

着任までの大枠の流れは以下の通りで、期間は土日ふくめ最短10日間です。

内示(3/31)→異動発令&引継ぎの日程調整(4/1)→引継ぎ(4/2-4/10

事前準備期間:1日目(内示)~2日目(異動発令&日程調整)

銀行員は、発令前まで自分が異動かどうか本人にもわかりません

そしていざ異動となれば、3日目には担当者同士で引継ぎをスタートしなければならないので、
引継ぎの「事前準備」ができるのは、実質この内示から発令までの2日間だけです。

この2日の間に、

赴任先へ持っていく自分の荷物のパッキング後任の方への案件や顧客情報の引継ぎ表を作成します。
実際は集金などの日常業務もあるので、この2日間も自分の引継ぎ準備だけに注力はできません

しょぼ
しょぼ

正直、異動がわかってから準備していると間にあわないです!

みんな支店の古参になってくると、前もって引継ぎ表を準備したり、

月末にかけて身辺整理したり、為念で準備しています!

②送別・赴任までの土日休み

土日休みは、一度赴任先への通勤経路等を確認します。

また企業文化にもよると思いますが、

私の銀行では、お世話になった支店の方には1人ずつちょっとした餞別と手紙を、

赴任先には人数分の焼き菓子セットを持参していました。

異動の前の土日も、こういった

今の支店の最終出勤日、赴任先への最初の出勤日にむけた準備で忙しいことが多いです。

各営業店の引継ぎ期間:(4/2-4/10のうち 前後半3日ずつ)

自店と赴任先と、それぞれ3日ずつかけて『業務の引継ぎ』と『挨拶まわり』を行います。

どちらの支店で先に引継ぎを行うか等の日程調整は、辞令当日に支店長同士の話し合いで決まります。

ただ、挨拶まわりといっても、本当に顔見せ程度しか時間がありません。

期間も決まっているため、長く付き合いのあるお客様でも

都合があわなければ電話だけで挨拶を済ませなければならないことも多々あります。

しょぼ
しょぼ

1日に何十件もお客様のところを回ります。

とてもじゃないですが、丁寧に時間をかけて引継ぎをする余裕はありません・・・

3.ドタバタと異動するわけ

お客様にとっては、丁寧に引継ぎしてほしいのに、

このように頻繁にバタバタとあわただしく銀行員が異動していくのには理由があります。

それはずばり「不正行為の防止」です。

万が一横領などの不正行為を行っていた人がいたとしても、

前置きなく異動が決まり、引継ぎ期間もたった1週間程度しかないとなると
不正を完全に隠し通すことは困難です。

銀行はあえて余裕のないスケジュールにすることで、不正の早期発見と抑止を図っているのです。

また不正行為は、

一人の銀行員が「単独で」「長く」同じ業務やお客様を担当する過程で発生しやすいです。

異動を頻繁にし、他者の手を強制的に介入させる仕組みを持つことで、
悪意をもった不正行為の牽制と、
銀行員がお客様に肩入れしすぎて不正融資等を誘発する事態を未然に防ぐ狙いがあります。

異動のメリット・デメリット

異動や転勤はバタバタして本当に大変なんですが、

異動の頻度が高いこと自体は、働く銀行員にもメリットがあります。

以下に紹介していきます。

異動が多いことのメリット3つ

1.環境をリセットできる

①職場の人間関係のリセット

銀行員は早いと1年半で転勤する人もいます。

つまり、

例え嫌な人と同じ職場になっても、数年一緒に働けばおさらばできる』というわけです。

30年先の定年まで一緒に働かなければいけないのと比べると、雲泥の差ですよね。

もちろん、つねに異動を心の支えにしているうわけではないですが、

いやなことがあると「ああ、来月あたり異動にならんかなあ」とぼやく銀行員は結構多いです。

嫌な人がいなくても、

職場の人間関係が変わることは、心機一転、気持ちが引き締まる要因にもなります。

「職場の人間関係を数年で正当にリセットできる」のは、異動が多い銀行のメリットです。

②顧客との関係をリセット

渉外担当者の場合、「顧客との関係のリセット」も実は大きなメリットになります。

銀行は、課されるノルマも大きく、まだまだお願い営業が多い業界です。

クレジットカードの契約や金融商品の購入等、

在籍が長引くほど、同じお客様にお願い営業に行かざるをえない場面もふえてきます。

赴任したての頃は、応援もかねて協力してくれるお客様も多いですが、

お客様と仲良くなればなるほど、どうしても断りやすい雰囲気はでてきてしまいます。

もちろん、ノルマを自力で達成できれば問題はないのですが、

「顧客を一新できる」というのは、寂しくも、営業のしやすさにつながってきます。

2.頼れる人が増えていく

「人脈」は働きやすさに直結します。

自分の支店では実績のない案件の相談をしたり、

ささいな事だと不足した伝票や書類等を貸してもらったり、

とにかく「自分の支店以外に親しい頼れる人が多い」ことのメリットは大きいです。

特に、本部の方とパイプができるとなお良いですね。

本部の専門部署の判断は一番確実ですし、

審査部門や監査部門等の人とは、仲良くなっておくとメリットも大きいです。

公正に判断しなければいけない立場とはいえ、やっぱり人ですからね。

ちょっと大目に見てもらえたり、「ここを直したら?」とアドバイスをくれることもあります。

しょぼ
しょぼ

仕事がすっごくできるわけじゃなくても、

本部にパイプがある人が上席になってくれるのは大歓迎です。

私自身も、何度も助けてもらいました!

3.スキルアップができる

いろいろな支店や業務を経験することは、大きな武器になります

各支店にはそれぞれ地域性があります。

都市部と地方では経済事情がまったく異なります。

工場等が多いところもあれば、人口流入が多く不動産会社が多い支店、会社が少なく農家さんなどの個人顧客がメインの支店等、銀行員は土地柄にあわせた営業を進めていかなければなりません。

異動・転勤をしながら様々な土地で営業や融資などの経験を積んでいくことで、

幅広いスキルと知識を身に着けた金融のプロ』として成長していくことができます。

その過程で運よく優秀な上司の下につくことができれば、

仕事の進め方や交渉の仕方等も学ぶことができます。

『スキルアップ』という点でも、異動のメリットは大きいです。

異動が多いことのデメリット

1.新しい環境のストレス

新しい職場へ移るのは、何度繰り返しても慣れないものです。

赴任先では、店内の人間関係もお客様との信頼関係もすべて一からのスタート。

同じ業務とはいえ、支店が違えば客層や細かなルールも異なるため、慣れるまでは大変です。

また異動に伴って、前の支店とまったく畑違いの仕事を任されるケースもあります

異動は苦労がつきものだと思ったほうが良いです。

2.飲み会が多い

最近はコロナで自粛気味ですが、異動には歓送迎会がつきもの。

もともと飲み会が多い業界ではありますが、

特に引継ぎ期間中は毎日のように飲み会が発生することも。

銀行によっては毎月異動があるので、その都度飲み会が開かれると考えると・・・

お酒の席が苦手な人はちょっとつらいかもしれませんね。幹事を引き受ける下っ端の子も大変です。

3.お金がかかる

企業文化にもよるところですが、自分が異動するときには結構お金がかかります。

①赴任先への手土産:3000円~5000円前後

引継ぎの初日に持参する手土産ですね。赴任先の人数のリサーチは必須。

支店規模にもよりますが、

派遣社員さんをふくめ人数分以上のお菓子を持っていくので、数千円はかかります。

▽こういった小袋でたくさん入っているものが選ばれます。

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②異動元の職員へ送別の品:1人当たり200円~1000円前後

500円分の図書カードを配る方も多いですね。自己啓発にも使えるので喜ばれます。

数百円のささいな餞別なのですが、人数分となると結構痛手になります。

大型店舗は人数も多いので、購入した焼き菓子を自分で袋詰めして配って費用を抑える人もいます。

③【転勤の場合】引っ越し費用

転居を伴う異動の場合は、当然転居費用等がかかります。

何十万とかかかりますので、馬鹿になりません。

4.【エリア限定職】結局同じ人と顔を合わせがち

異動のメリットとして『数年我慢すれば嫌な人とおさらばできる』といいました。

しかし、『エリア限定職』の場合は、人間関係の完全なリセットは少々難しいです。

異動しても、別の支店でまた同じ人と顔を合わせることも少なくありません

というのも、いま銀行はどこも店舗網を縮小中。

エリア限定職』として異動できる支店が限定されると、

どうしても比較的家が近い人同士は再度同じ支店配属される可能性が高くなります。

実際に、私も一番苦手な人と連続で同じ支店になりました(笑)

また直接一緒にはならなくても、

その人と以前一緒に働いていたことがある人と同じの職場になったり、

結局完全に人間関係をリセットするのは難しいです。

実際に自分の支店に異動があると、

「今度来る人ってどんな人?」ってみんな顔見知りに聞いて回りますからね。

悪いうわさが立たないように、品行方正に頑張りましょう。

5.【全国転勤あり】家を買うと遠くにとばされる??

人事部の人には否定されますが、優秀な人が家を買うと、

とたんに海外支部などの遠くのハードな支店へ転勤させられがち。

栄転には違いないんですが、働いている側からすると

「住宅ローン返済しないといけないから、やめれんでしょ?」って魂胆が見え透いて嫌になります…

特にメガバンクなど全国に支店があるところは、

家は買ったが、ずーっと単身赴任で住んでないなんてことも全然あります。

もちろん家の購入と合わせてエリア限定に変えるという選択肢もありますが、

同じ仕事内容でも給料ががだいぶ下がりますからね。

そしてやはり、エリア限定職は女性が多い。男性はなかなかジョブチェンジしにくいのが実情です。

最近の銀行員の転勤事情

実はそんな長年続いた銀行員の異動・転勤事情も、最近変わりつつあります。

あわただしく短期間で異動するのは同じですが、

金融庁主導で、在籍期間の長期化する方向で各行の検討が今すすめられてきています。

きっかけは令和元年の金融庁の『人事ローテーション等に関する規定の見直し』です。

(参考)https://www.fsa.go.jp/news/r1/190828.pdf

そもそも銀行が『不正行為の防止』のために頻繁に異動をおこなうのも、

すべて金融庁の監督指針に基づいた対応でした。

▽金融庁の監督指針

「人事管理に当たっては、事故防止等の観点から職員を長期間にわたり 同一業務に従事させることなくローテーションを確保するよう配慮されているか。(中略)なお、派遣職員等についても、事故防止等の観点から、可能な範囲で職員と同様 の措置を講じているか。 」

https://www.fsa.go.jp/news/r1/20191011/bessi1.pdf

ここでいう『事故』とは、銀行員と顧客との癒着や横領などの不正行為をさし、

頻繁なジョブローテーション(異動・係替え)は銀行の義務とされていたのです。

そもそも不正行為を防止するなら、異動以外にもいろいろな方法があるわけで、

義務でなければ、コストもかさむ異動を繰り返す必然性が銀行にはないんですよね。

特に最近は、銀行が扱う業務も多様化。

ビジネスマッチングや事業継承などの長期案件も増えています。

そうした長期案件に対して、

『担当者がころころ変わるのを好ましくない』との意見が銀行・顧客双方で増えてきたこと等を背景に、金融庁は人事ローテーションに対する考え方を軟化。

令和3年に「人事ローテーション等に関する規定の見直し」項目を抹消するに至りました。

なかなかすぐに人事制度について銀行が方向転換することは難しいですが、

すでに一部の銀行等では、在籍期間の長期化にむけて対応をを進めています。

時には顧客満足以上に「不正行為の防止」を重視する

銀行や金融庁の在り方に一つメスが入った形ですね。

お客様にとっては、待ちくたびれた当然の変化かと思います。

まとめ

長くなりました・・・

まとめます。

銀行員の転勤・異動は、金融庁の指示に基づき、

銀行員と顧客との癒着や横領などの『不正行為防止』のために

1〜3年程度の短いスパンで頻繁におこなわれていました。

その異動のスケジュールも、突然かつ超スピーディー。

銀行員に不正を隠す余地を与えません。

一方で、昨今の銀行業務は多様化しています。

ビジネスマッチング等の長期案件も増える中で、担当が頻繁に交代する銀行の人事体制の在り方に疑問を投げかける声が大きくなりました。

そうした背景から、金融庁も銀行のジョブローテーションの考え方を軟化。

昨年令和3年には、監督指針から人員配置に関する条項を撤廃。

現在、各銀行も担当の長期化へ向けて舵を切り始めている、という状況です。

しょぼ
しょぼ

銀行員の人は、今まで以上に丁寧な関係づくりをしていきましょうね

お客さまとともに歩み続けるパートナーをめざしましょう!

おわり

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