ペンギンが教えてくれた物理のはなし / 渡辺佑基

読書感想文
読書感想文

The Physics, taught by penguins.

バイオロギングについて

タイトルは「物理のはなし」ですが、内容はバイオロギングという生態に関する情報を記録する技術と、その成果の紹介です。とはいえ水深は圧力の測定を、位置情報は電波の解析をすることで得られるので、物理のはなしといっても差支え無いと思います。
同様に本書にはペンギン以外にも様々な動物が出てきますが、タイトルにふさわしいのはやはりペンギンだと思います。

さてこのバイオロギングは、動物に記録計を取り付けてから、動物の行動を記録した後に回収します(記録計からデータが送られる場合は回収する必要はないですが)。数か月にもわたる調査の後に回収できなければ、データが得られないこともあります。また動物のデータですから、さぞかし暗号のような生データもあると思います。本書では触れられてはいませんでしたが、おそらく周到な実験計画能力と緻密なデータ解析力が求めらることと思います。とりあえずやりながら考える、といった人間には務まらない研究分野でしょう。

バイオロギングの歴史

本書ではバイオロギングの歴史が説明されています。アナログからデジタルに移り変わり、大きさや稼働時間も進化してきました。ただ、まだウナギは難しいそうで、今後の技術革新が期待されます。

科学系の読み物でいつも感心するのは、短期的視野と長期的視野の話です。10年後にやりたいこと、10年後の技術であれば達成しうることを見据えたうえで、今できる限りをやりぬく。革新的な技術は、10年前の計画があったからこそ達成できたともいえるでしょう。

動物の進化とは

長期的な計画に関心する一方で、動物の進化は行き当たりばったりのこともあるそうです。地上で肺呼吸に進化したのに、また海に戻ってくる、なんて動物もたくさんいます。それも自然という厳しい世界の中で、必死に子孫を残すために進化してきた結果なんですよね。だから、ざんねんないきものなんていないと思います。

人間社会も、行き当たりばったりに対応してきた結果だと思います。いつになったら落ち着くんだろうと考えることもありますが、そもそも落ち着くことなんてないのかもしれません。そう考えたら、なんだか落ち着いてきました。

ペンギンが教えてくれた物理のはなし (河出文庫)
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