『ファーストラヴ』(2021)★★★☆☆

★★★☆☆

第159回直木賞を受賞した島本理生の同名サスペンス小説が原作。
父親を殺害した容疑で女子大生の聖山環菜が逮捕された。彼女の「動機はそちらで見つけてください」という挑発的な言葉が世間を騒がせる中、事件を取材する公認心理師の真壁由紀は夫である我聞の弟で弁護士の庵野迦葉とともに彼女の本当の動機を探るため面会を重ねるが、環菜の供述と関係者から聞く話との相違との間で翻弄されていた。由紀は環菜の過去に触れたことをきっかけに心の奥底に隠したはずの「ある記憶」と向き合うことになるなだが。

関わる相手、特に親という存在が子どもに与える影響の大きさを考えてしまう映画だった。
今作で扱われる性虐待はダイレクトな暴力ではなく刑法上は犯罪にならない虐待ではあるのだが、親からの心無い態度の結果子どもの精神と認知がこれほど歪んでしまう可能性があるのだということを環奈の話している内容を聞いて考えてしまった。視線によって傷つけられるという感覚については考えたことがなかった。
性的に傷ついた女の子がその後たどる道というのはいくつかあるようなのだが、この映画の環菜のように性に奔放になってしまうというのは心の中で悲しい歪みが生じているのだなと思った。

ファーストラヴというタイトル。原作の作者の島本さんはインタビューでこう語っていた。
〝この小説って、正しい初恋って一個も出てこないんですよね。むしろ初恋だと思っていたものは本当に初恋だったのか、という。本当はちょっと別のものだったかもしれないし、実は傷つけられたのに、それを見ないふりをしているのかもしれない。そうした逆説的な意味をこめてこのタイトルにしました。〟
私にも後から考えるとあの感情は恋ではなく寂しさや執着の気持ちだったのかもしれないと思う恋があって、それによって私が激しく傷つく可能性もあったのかもしれないと思うとなんだかどきりとした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました