G.Garage///公演「リチャード二世」@中野ウエストエンドスタジオ | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

作 ウィリアム・シェイクスピア

演出 河内大和

河内大和/鈴木彰紀/清水寛二/長谷川朝晴/野村龍一/齋藤慎平/横井翔二郎/松之木天辺/風間晋之介/真以美/エミ・エレオノーラ

 

 久しぶりのシェイクスピア劇、面白かったー🎉 3方を客席が囲む長方形の舞台。その周りに小石が敷いてあり、舞台上の前方には小さい岩が1つ置かれていて、枯山水の風景を作り出している。冒頭と休憩中には、作中にも登場する庭師が出てきて、熊手で小石を整えたりする。イングランドを「庭」に例えるセリフがあるのでそこからヒントを得たのだと思われます。衣装も、袴風のボトムス、リチャード王の腰巾着たちが付けている派手な柄の帯、打ち掛けをアレンジしたような王妃のローブなど、和のテイストがある。侘びの世界観が漂っていて、頂点から地に堕ち死んでいくリチャードや、その後のイングランドが辿る内紛の歴史と重ねると、諸行無常を感じてしまいます。

 目の前の光景は石庭っぽいけど、水のイメージも演出されていました。天井から手水鉢のような器が吊り下がっていて(使われれない時は上に上がっている)、最初リチャードが目を瞑ったような感じで出てきて手水鉢の水で手を洗います。手についた血を拭うような仕草はマクベス夫人だった。叔父グロスター公を殺したのが彼であるかのような黙劇で、彼が決して清き王ではないことを思わせます😔 また、アイルランド遠征からウェールズの海岸に戻ったリチャードがボリングブルックの謀反を知り、自分たちの劣勢を知らされるたびに大波の音がしてリチャードが押し戻されるようによろめく。彼の意気を打ち砕くような波音が印象的でした。

 

 河内大和のリチャードは、彼の持ち味でもあると思うんだけど、高質な冷たさ、内に隠れた繊細さ、時々見せる纏わり付くような情念など、さまざまなアスペクトを持った、ある意味つかみどころのない男でした。王冠をボリングブルックに譲っても「悲しみは譲れない」と言う彼のセリフからは孤独と虚無が感じられた😢 地位や富や妻や家臣や、手にあったものを失った彼に残されたものは悲しみだけ。自分を憐れみ嘆くことでしか自分を感じられないなんて😭 王冠をボリングブルックに渡す渡さぬのシーンは、その王冠の虚しさをボリングブルックに教え諭しているようでもあったな。王冠に執着していると言うよりその魔力に虜になっているみたいで。

 国王然とした衣装から、王冠譲渡のシーンではシンプルな白いシャツで現れ、幽閉された城では上半身も脱ぎ捨てる。身に着けるもの削ぎ落とすにつれて彼の心が露になり、結局彼は「自分は何者なのか」と自問したまま死んでいくのかー💦

 ところで先に触れた、初めに舞台前方に置かれてある小さい岩は、物語が進むに連れて舞台の奥に押しやられていき、最後に再び前方(リチャードの遺体の方)へ押し戻されるんだけど、あれの意味がよくわからなかったな。彼の魂、自我、存在自体?🙄

 

 その河内リチャードのセリフ術や所作は圧倒的なんだけど、決して彼だけが突出して目立つわけではない。どの役者さんも役を自分のものにして身体でセリフを発しているから説得力のあるドラマになっている。たとえばボリングブルックの鈴木彰紀。最初はリチャードに忠実で、父を愛し、友情にも厚く、欲など持たない純粋な若者(のよう💦)だったけど、王冠を戴いて登場した姿は、まるで脱皮したかのようにセリフもしぐさも堂々として力強く、まさに王その人になっていてびっくりしました。

 ジョン・オヴ・ゴーントを演じた能楽師の清水寛二さん(なんとなく彼だけ「さん」付け😅)も良かったな👏 知性が感じられる品のある物腰、説得力のあるセリフ回しで、王を息子をそしてイングランドを思う堅実で高潔の男だった。ノーサンバランド伯(松之木天辺)と息子ホットスパー(風間晋之介)が割といつも一緒に並んで立っている……というか常に2人セットでボリングブルックの陰に控えている感じに見えるのが面白かった。この2人は続く「ヘンリー四世」でボリングブルック(=ヘンリー四世)に反旗を翻すので、今回の立ち位置に皮肉かつ不穏な雰囲気を感じてしまったけど、考え過ぎだろうか。

 ブッシー(野村龍一)バゴット(齋藤慎平)はリチャードの腰巾着なんだけど、最初に王が「ジョン・オヴ・ゴーントの財産と権利を没取する!」と宣言したとき「え、それはまずいんでは?」という感じで2人顔を見合わせ微かに狼狽するという細かい演技がありました。本心でリチャードに付き従っているわけではないことが伺える一瞬。で、原作ではリチャードを暗殺するのは、それまで全く登場していなかった騎士なので観ている方は「この人だれ?」となるんだけど、ここではバゴットとホットスパーが共謀して王を殺害していた。これは面白い解釈だと思いました。ただ、暗殺者をどちらか1人にせず2人にした理由は分からないんですけどね……。

 

 この「リチャード二世」という作品はセリフがとても美しいいんですよね。セリフが詩になっていて耳に心地よく響く。ジョン・オヴ・ゴーンとがイングランドを憂えるセリフとか✨牢獄でのリチャードのモノローグとか✨修辞を凝らしたセリフに聞き惚れます。今回はそれを改めて確認しました。残念ながら、特に1幕、皆さん割と大声で張り上げるしゃべり方が多くて、そうなると役者によっては言葉が聞き取れない時もあった😖 叫ばなくても気持ちは伝えられるんじゃないかって何度か思ったことも確かです。

 

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