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コメディカルが知っておくべき”貧血”の話

全理学療法士向け
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「なんか今日は頭がふらつくな・・」

「それ 貧血 じゃない?レバーとかほうれん草食べないと!」

「でも、よく血の気が多いって言われてるから大丈夫かな。ガハハハ…」

……こんな会話を一度くらいは耳にしたことがあるだろう。

この様に、貧血 は巷でもよく耳にするワードであり、比較的病態がイメージしやすいように思う。

読んで字のごとく、血が貧するわけであり、端的に言えば血が足りないことである。

ただ、医療従事者が一般人と同等の理解であることはいけないと思われるので、今回はより医学的な側面に沿った上で、貧血について考える記事にしていく。

 

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貧血とはなんだ

そもそも 貧血 とはどういったものなのかをおさらいしておく。

貧血とは血液が薄くなった状態である。医学的には、血液(末梢血)中のヘモグロビン(Hb)濃度、赤血球数、赤血球容積率(Ht)が減少し基準値未満になった状態として定義されるが、一般にはヘモグロビン濃度が基準値を下回った場合に貧血とされる.                                                           Wikipediaより

また、WHOの基準によると、血中ヘモグロビン濃度が、男性で13.0g/dl以下 女性で12.0g/dl以下とされる。

論文によっては、130gと一桁多い数字が記載されているものもあるが、これは、g/Lと単位の分母がデシリットルからリットルに変わっているだけである。
論文を見て、明らかに異常な数値が出ていた場合は、単位を確認する癖をつけてもらいたい。

 

上記を踏まえると、貧血は今まで散々話題に上がった、赤血球の減少ヘモグロビン濃度が低下した状態といえる。

 

よくある貧血の原因としては、出血・赤血球産生不良(血液疾患・腎疾患)・溶血・消耗性疾患・鉄不足・ビタミン不足などが挙げられる。

 

次に、赤血球及びヘモグロビンの特徴や役割について述べていきたいと思う。

 

 

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貧血の基準と関連要素の解説

赤血球とは?

血液細胞の一種であり、酸素の運搬に関わる。読んで字の如く、赤色の細胞であるが、これは後述するヘモグロビンの色素を反映している。正常値は、400〜500万個/μlとされる。

骨髄で産生され、肝臓や脾臓で分解されるが、寿命としてはおよそ120日と言われている。

腎臓から放出されるエリスロポエチンが赤血球産生のトリガーとなるため、エリスロポエチンの産生量が低下する腎障害にて赤血球の産生量が減少するため、貧血が誘発される。(腎性貧血

ヘモグロビンとは?

ヘモグロビンは血中に含まれる赤色のタンパク質であり、その役割としては以下がある。

・酸素の運搬
・二酸化炭素の運搬(酸塩基の干渉作用)

また、ヘモグロビンは酸素よりも一酸化炭素との親和性が高いため、一酸化炭素が多い環境であるが、相対的に酸素との結合が少なくなるため、組織の低酸素状態を引き起こす。(一酸化炭素中毒)

ちなみに、ヘモグロビンは中心に”鉄”を有しているため、鉄分が少なくなると”鉄欠乏性貧血”となる。

冒頭にも述べた、レバーやほうれん草は鉄分を多く含む物質であるため、鉄分不足の場合は積極的に鉄を摂取する必要がある。

 

さて、貧血を考える上での、基礎的な知識はここまでとし、これからは貧血という病態を生理学的視点で考えてみよう。

 

 

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貧血の病態を考えてみる

まずは一般的に言われている貧血の症状について整理してみる。

①めまい 立ちくらみ 集中力低下
②倦怠感 疲労感
③息切れ
④頻脈

一般的によく聞く症状としては、①が多いか。

冒頭のやりとりでも挙がっていたが、通称“脳貧血“と言われる病態であり、脳細胞への低酸素状態を反映しており、起立性低血圧と概ね同じベクトルの問題であるといえる。

②についても、基本的には①と同様であり、全身的な低酸素状態が主な要因だろう。

 

では③と④はどのように解釈するべきか。

実は、今回のブログの大きな目的はこの二つについての話が主になる。

 

貧血に関係する息切れと頻脈を紐解く

貧血を見た場合、医者であれば原因検索や治療(止血術・服薬調整)などを行うが、コメディカルについては貧血に対して直接的な介入手立ては皆無と言っていい。
貧血に限らないが、運動麻痺や痛みと違い、介入の手立てがないものについてどこまで知識を持っているべきかは悩むと思われる。さて、直接解決できない問題について、どこまで理解を深めるべきか……

 

これは完全な私見であるが、リハビリテーション関連(特に理学療法士)であれば、運動に関する部分は何かないか?という視点で情報収集するのが良いと考えている。

特に介入におけるリスク管理に関する情報は重要となるため、この貧血における息切れと頻脈の意味について考えてみたいと思う。

 

さてと、このブログではおなじみになってきたが、今回も回転寿司の例で考えてみる。

貧血とは、レーンを回る皿の絶対量が減少した状態となる。呼吸と循環の役割は、寿司(酸素)を客(組織)に適切な量届けることである。(適切な量とは?といった部分は今までのブログをご参照頂きたい。)

呼吸循環の例(回転寿司)

 

 

皿の量が少なくなるということは、通常運転において客に届く寿司の量が減少することを意味する。下図下段。

 

前回も述べたが、組織に酸素が滞ることは、すなわち細胞死に直結することになる。体がこれを全力で防ごうとするため、様々な代償反応が出現する。

貧血の場合はどうかというと、レーンを回る皿が少ないことは変えようがないため、レーンの速度を上げて、単位時間当たりの寿司の量を確保する

すなわち、DO2を維持しようとする

DO2の構成要素

 

 

また、少しでももれなく寿司を皿に乗せようとするため、板前が全力で働くようになる。

レーンの速度を上げることは、循環の賦活化を意味し、これが心拍数の上昇として表れる。

他方、板前の頑張り呼吸数と換気量の上昇で表されるため、呼吸数の増加や息切れが出現する。

 

つまり、貧血による頻脈と息切れは、ヘモグロビン低下によるDO2の低下を防ぐために身体が代償的に反応したことによる症状と言える。

 

ではここで重要なポイントだが、貧血患者で頻脈と息切れが出現することは、悪であると言えるだろうか。

 

一般的に、息切れや頻脈が出現した場合は、異常な状態として扱われるため、悪として認識されるだろう。

しかしながら、貧血の場合については、DO2を代償した結果であることに注意が必要だ。

仮に重度な貧血があるにも関わらず、脈は正常で呼吸も乱れてない場合は、DO2が維持できていない可能性もある

 

今まで述べてきた通り、呼吸と循環は恒常性維持のために重要であり、それらの至上命題は”DO2を維持すること”に他ならない。

すなわち、重度な貧血にも変わらず、呼吸循環が反応を示していないということは、DO2を維持するという使命を果たせていない可能性がある

 

単に、バイタルに異常がないからOK!ではなく、組織の低酸素状態を示唆する所見が無いかどうかを注意深く観察する必要があるため、いわゆる”正常値”に踊らされないように注意されたい。

 

 

貧血を示唆する所見

このブログを見た頂いている方の中には、維持期や在宅などで頻繁に採血検査を行っていない領域に従事する方も多いかもしれない。

ただ、急性期で働いていると、在宅において消化管出血などで急激に貧血が進行し、入院に至る症例も少なくないため、在宅や維持期でも貧血の可能性を考えられるに越したことはない。

 

これらを加味し、採血検査が行えない領域で働く方々にも参考になるような、貧血を示唆する代表的な所見ついて簡単に紹介していこうと思う。

皮膚の蒼白
貧血になるということは、ヘモグロビンの濃度が低下することを意味し、ヘモグロビンは赤色の色素を有していることから、皮膚の赤みが減少し、白っぽい色に変化する。特に、顔面や手掌の蒼白はわかりやすいが、手掌でも手の皺(手相占いのあれ)が白くなっている場合は、貧血の可能性が極めて高くなる。

ちなみに、唇が青黒くなるようなチアノーゼとは異なることに注意が必要だ。

結膜辺縁の蒼白
貧血にてすぐに変化が出やすいのが目である。”あっかんべー”をした際に見られる下瞼の裏が白くなっている場合は、貧血を疑っていい。
特に下瞼裏を鏡で見てもらうと、辺縁に沿ってより赤みの強い部分が確認できると思う。この部分までも白くなっている場合は、貧血を強く疑う特徴的な所見になる。
上記の所見を認め、かつ頻脈や頻呼吸などの症状を認めた場合は、貧血の可能性が高まる。
特に、短期間のうちに出現したものについては、消化管出血を含めた活動性出血の可能性があるため、早めに医療機関に相談するといいだろう。

 

他にも、特別な検査を行わなくても貧血を予測するフィジカルアセスメント方法があるが、今回はこの辺りで一旦終了とする。

 

 

まとめ

今回は、貧血について述べた。

特に皆さんに注意してもらいたいのは、一般的には悪とされる頻脈や頻呼吸についても、見方を変えれば、あるトラブルを解決するために仕方なく出現しているものもあるということだ。

採血検査やバイタル測定などは、数値として結果が表出されるため、正常値や基準値などといった比較対象が存在するため扱いやすい。

ただ、これらの数値は、各種検査単体での基準でしかないため、状況によっては基準からはみ出たとしても、正常な反応であることも少なくない。

ゆえに、数値に踊らされることなく、体全体の状態を考えた上で、その数値が持つ本当の意味を考えていく必要がある。

今回はほんの一例ではあるが、今後についても皆さんの参考になれるようなものがあれば、記事にしていきたいと思う。

それでは今まで長々と進めてきた、呼吸循環の本質的な話は今回で一区切りとする。

次回については、実際に行われたとんでも臨床研究を紹介し、極論的な話から生理学の面白さについて説明できればと思っている。

このブログが参考になった方がいれば、次回もチェックして頂きたい。

それでは、今回はこの辺で。

 

”献血に行ったら、いつもヘモグロビンが正常範囲の上にありますが、性格は極めて温厚です(自称)”
(´-`).。oO

この記事を書いた人
りゅうぞう

生理学好きのギャンブラーPT
経済と投資について勉強中!!

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