心臓が動く仕組み

「心臓って、一生のうちに何回動くんだろう?」
そんなことを考えたことはありませんか…?
実は、私たちの心臓は1日に約10万回も鼓動し、生涯では約30億回も動き続けると言われています。それなのに、なぜ止まらずに動き続けることができるのでしょうか?
今回は、心臓の動く仕組みや、その不思議なメカニズムを分かりやすく解説します!
心臓はなぜ勝手に動くのか?

腕や足の筋肉は、脳からの指令がなければ動きません。しかし、心臓は特別で、「自動能(じどうのう)」という能力を持っています。
この「自動能」により、脳の指示がなくても自律的に動き続けます。つまり、心臓は、“自分自身で動くスイッチ” を持っているのです。
そして、そのスイッチの正体が「洞結節(どうけっせつ)」というものになります。
心臓を動かす「洞結節(どうけっせつ)」の役割


心臓の右上(右心房)にある洞結節(どうけっせつ)は、「自然のペースメーカー」とも呼ばれ、規則的に電気信号を発生させます。
この電気信号が心臓全体に伝わることで、心臓の筋肉が収縮し血液を押し出すのです。
心臓が動く仕組み
それでは、心臓が動くまでの仕組みを順に見ていきましょう!


- 洞結節(どうけっせつ)が電気信号を発生し、一定のリズムで心臓を動かす。
- 電気信号が心房に伝わり、心房が収縮して血液を心室へ送る。
- 信号が「房室結節(ぼうしつけっせつ)」を通過し、さらにヒス束(ひすそく)・プルキンエ線維(プルキンエせんい)を介して心室へ伝わる。
- 心室が収縮し、血液を全身へ送り出す。
この一連の流れが1分間に60〜100回 繰り返されているというわけなのです。
なぜ心臓は止まらないのか?

「ずっと動き続けて、疲れて止まってしまわないの?」と思うかもしれませんが、実は心臓はとても効率的な仕組みを持っています。
① 常にエネルギーを供給している

心臓は「冠動脈(かんどうみゃく)」という特別な血管から酸素と栄養を受け取り、絶え間なくエネルギーを生み出し続けています。
② 電気信号が自動で発生し続ける

洞結節(どうけっせつ)の働きにより、特別な刺激を与えなくても電気信号が発生し、リズムが維持されるため、心臓は自動的に動き続けることができます。
③ 交感神経と副交感神経がリズムを調整

「自律神経」〔体の機能を無意識にコントロールする神経〕が心臓の働きを調整し、運動中などは心拍数が上昇、安静時は心拍数が低下するようコントロールしています。
このように、心臓は止まらずに動き続けるための仕組みを完璧に備えているのです!
もし心臓が止まったらどうなる?

心臓が動かなくなると、血液が脳や臓器に届かず、数分以内に酸素が供給されなくなり、意識を失うことがあります。
そのため、心停止が起こった場合は、すぐに「心肺蘇生法(CPR)」〔胸を押して血流を維持する救命処置〕や、「AED(自動体外式除細動器)」〔心停止した人に電気ショックを与え心臓の動きを回復させる装置〕で心臓の正常なリズムを回復させる必要があります。
心停止後1分ごとに生存率は約10%減少

AEDを使用することで、心停止からの生存率を大幅に向上させることができます。
心停止後、何の処置も行わなければ、生存率は1分ごとに約10%ずつ低下すると言われています。しかし、AEDを1分以内に使用して電気ショックを与えれば、生存率が最大で60~70%まで改善されることが示されています。
早期の対応が生存率に大きく影響するため、できるだけ迅速にAEDを使用することが非常に重要です。
119番通報・心肺蘇生・AEDまでの流れ

安全場所で、意識と呼吸を確認
- 肩を軽く叩いて「大丈夫ですか?」と声をかける。
- 呼吸がない、または異常な場合はすぐに行動。
119番に通報し、AEDを探す
- 自分だけで解決しようとせず、周囲の人に「119番をお願いします!」「AEDを持ってきてください!」と頼む。
迅速に救助を呼び、AEDを準備してもらうことで、救命処置がより効果的に行えます。
心肺蘇生(CPR)を始める

CPR(心肺蘇生法 しんぱいそせいほう)

心肺蘇生法(CPR)は、心臓や呼吸が停止した際に行う緊急の救命処置です。主に胸部圧迫(心臓マッサージ)を行い、必要に応じて人工呼吸を組み合わせることで、血流と酸素供給を維持し、生命を守ることを目的としています。
現在のガイドラインでは、胸部圧迫(心臓マッサージ)を最優先で行うことが推奨されています。人工呼吸は感染防止のため、マスクなどを使用することが望ましいですが、一般の人が実施する場合、胸部圧迫のみでも有効とされています。
心肺蘇生を行う際は、胸部圧迫を途中で止めずに続けることが重要です。
- 胸の真ん中に両手を重ね、強く・速く(1分間に100~120回のペース)押します。
- 押す深さは約5cm〔小児や乳児の場合は、胸の厚さの約3分の1ほど沈む強さを目安にします〕
- 肘を伸ばし、体重をかけて胸部を圧迫します。
AEDが手元に届いたら使用する


- 電源を入れる(ボタンを押すか、フタを開ける)
- 音声の指示に従って、パッドを胸に貼る。
- ショックが必要な場合、AEDが自動で判断するので、指示があればボタンを押してショックを与える。


女性の場合、AEDを使用する際に躊躇することがあるかもしれませんが、少しの配慮で対応できます。
例えば、妊婦の場合はパッドをお腹に近づけすぎないように胸部に正しく配置。また、洋服や上着を一枚かけるなどの工夫をすることで適切に使用できます。
救急隊が到着するまで続ける
- AEDの指示に従いながら、必要に応じて心臓マッサージ(胸部圧迫)を続ける。
まとめ|心臓が動き続ける理由

✅心臓は「洞結節(どうけっせつ)」の働きで自動的に動く。
✅ 電気信号が心臓全体に広がり、規則的に収縮を繰り返す。
✅冠動脈が酸素と栄養を供給し続けるため、心臓は止まらない。
✅ 自律神経が心拍数を調整し、リズムを維持する。
このように、心臓は「自動で動くシステム」を持っているため、止まらずに鼓動し続けるのです。
普段意識することは少ないかもしれませんが、心臓が正常に動いているからこそ、私たちは生き続けているのです!

