桜の時季がやってきました🌸
花見客が日本各地で増えているようですね♫
相撲の春場所がもうすぐ始まる頃かと思いますが、昔の若貴ブームの頃は相撲取りになりたいという子供がたくさんいたんだそうです。
なりたいスポーツ選手ランキングの上位に入るほどの大人気でした✨
大昔になると今ほど1年中相撲興行をやっていません。
年にたった2場所❗️
1回の興行につき10日ほどの日程です。
「1年を 二十日で暮らす 良い男」
…という言葉があったくらい。
ただ普段は日々厳しい鍛錬・修行。
興行でも100キロ以上もある人間同士が思い切りぶつかるわけですから、決して楽な商売ではないですね。
大昔は今の最高位・横綱は無く、大関が最高位。
娯楽の少ない中の相撲人気は高く、その相撲取りの当時のチャンピオンである大関は凄まじい人気だったようです✨
競技は違いますが昨年亡くなりました、プロレスラー・アントニオ猪木。
当時は
「レスラーたるものナメられてはいけない!」
という理由でとにかく体を大きくしろというのが主流でした。
やはり職業柄、見た目や風格も大事だということですね☝️
ましてチャンピオンともなれば尚更です。
相撲も同じで身体が大きくないとなれない。
しかし身体が大きいだけでもなれない。
中でも相撲は古来では神事であったというように、まさに神に選ばれし職業でした。
〜ストーリー〜
ここは大阪の相撲部屋。
播州高砂にて相撲興行が決定したものの、なんと大人気の大関・花筏(はないかだ)が急病で興行への参加が不可能に💦
しかし観客が見たがるのはやはり大阪で1番強いと評判の大関・花筏❗️
不在となればとてもじゃありませんが興行が成り立ちません。
そこで部屋の親方はある秘策を思い付きました💡
「大関・花筏の代わり⁉️
いやいや…私、ただの職人ですよ⁉️
見た目が似てるって言われても、いくら何でも誤魔化せんでしょ」
「何も相撲取れとは言わん❗️
土俵入りの形だけしてくれてたらええんや。
あとは座ってるだけでかまへん!
お前さん、1日働いて1分(約2万円)稼ぐくらい腕のいい職人なんやろ?
じゃあそこを1日2分出そうやないか!✌️
しかも興行の間は飲み食いも自由や」
さてこのとんでもないことを頼まれた今回の主人公・徳さん。
普段は提灯や番傘の紙張りを生業としているとても腕のいい職人です🏮☂️
当時は写真もありませんからバレる心配はない。
相撲は取らず、どんな不恰好でも土俵入りさえ済めばあとは2週間飲み放題の食べ放題✨
しかもそれでお金も1日2分…現代で言えば4万円ももらえる🤑
この条件にも目が眩んで引き受けてしまいます。
さて高砂で興行が始まると
大関花筏、急病のため取組は相叶わず
土俵入りのみ勤めます
という内容の断り書き。
それでもひと目でいいから花筏を見たいという観客は集まり、大賑わいです✨
付け焼き刃で不恰好とはいえ土俵入り。
大勢の観衆から
「待ってました❗️」
「花筏、日本一ぃ〜❗️」
とワーワーキャーキャー割れんばかりの声援✨
宿へ戻れば勧進元(かんじんもと・興行を開催した人)やら地元の名主やらが挨拶にくる✨
若い女の子がキャーキャー言ってくれる✨
それでいて好きなだけ食べ・呑みしたあとはゴロッと寝て、翌日も土俵入りだけ済ませばあとは同じ日々。
「こんなことなら10日や20日といわず、ものの3年も続けばいいのになぁ〜♫」
なんてことを考えている間にいよいよ明日は千秋楽。
大関・花筏というスター不在のこの興行。
しかし蓋を開けてみれば連日満員御礼❗️✨
さらに今回の興行で盛り上がりを呼んでいるのは唯一まだ負け無しの千鳥ヶ浜(ちどりがはま)❗️
なんと本職の相撲取りではないのに強い強い!💪
素人がプロの関取相手に連日の大番狂わせ🔥
しかもこの地元の漁師を束ねる網元の息子だということで花筏に代わる大人気となりました✨
さて取組の最後に行司が明日に控えた千秋楽の取組みを大声で披露します。
「千秋楽結びの一番〜
千鳥ヶ浜には大関・花筏〜
千鳥ヶ浜には大関・花筏〜」
その瞬間にお客さんが一斉にウワァーっと歓喜します‼️
「明日は花筏が相撲取るんやって‼️」
「全勝の千鳥ヶ浜が花筏と‼️
これは何をおいても観なあかんで‼️」
わいわいとどっちが勝つなどと言いながらみんな帰っていきました。
「おーい、徳さん。何をしてるんや?」
「『何をしてる』って…見てわかりませんか?
帰る荷造りしてるんですわ!」
「帰るやて?
ハハハ…明日まだ1日残ってるやないか」
「知らんがな、そんなもん!
約束違いますやないか!
私は相撲取らん約束でしょ⁉️
明日の取組聞いてました⁉️
『千鳥ヶ浜には花筏』って、明日本物の花筏がここへ来るんでっか⁉️」
「いいや、来ぇへんな」
「ほなあの『花筏』って誰です?
私でしょ⁉️
それも事もあろうに相手は千鳥ヶ浜⁉️
アンタも観てたやろ。
バーンと突いたら相手が外まで飛んでいくわ、ヨイショーって投げつけたら相手が土俵にめり込んでますがな!
あんなもん人間やないで❗️
鬼か天狗の息子とかいう噂や
わたし命までは取られたくないんですわ‼️」
「それではワシが困るやないか」
「困ったらええがな。
そんなもん最初から身代わり立てて誤魔化そうとするからいかんのや。
アンタが撒いた種やねんからアンタが困りなはれ!」
徳さんが怒るのも無理はありません。
ところが親方もフ〜っとため息をついて言いました。
「あのなぁ徳さん…。
それやったらお前さんもいかんで。」
「わたしが何しました⁉️」
「いやいや…確かにワシは呑み食いは自由やと言うた。
でも『大関・花筏は相撲の取れん病人や』と言ってあるんやで?
宿屋の主人が言うてたわ。
『毎日飯は3升・酒は5升呑んではりますが、病人とはいえさすが大関は大したもんでんなぁ」
…ってな。
ワシも『いや〜普段なら飯は5升に酒なんか8升呑みますから、やっぱり弱っとりますなぁ』と返したわ。
ところが徳さん…。
お前さん…言い訳のならんこと1つしたやろ…?」😑
「…な、なんです…?」
「お前さん…おとついの晩やったか。
この宿の女子衆(おなごし・女中さん)のところへ…夜這いに行ったやろ…?」😑💢
「………ブフッ!」
「何がブフッや❗️
行儀の悪いことしくさって‼️
『そんな元気があるんならこっちの素人相手に一手二手教えてもらってもバチは当たりますまい』
って、こんなん言われてみぃ。
向こうは素人、こっちは大阪の大関や。
断れるもんかどうか考えてみぃ‼️」
「・・・」
「ワシも考えた。
まぁ八百長でも何でもええわい。
『ほな千秋楽は土俵にあげましょか』と言った言葉尻を向こうもガッと掴んだがな。
『ほな今全勝中の千鳥ヶ浜と取組しておくんなはれ‼️』
…と来たわ。
夜這いなんかした手前、もう偉そうに言えんやろ。
ここは度胸決めて、相撲取ったらどうじゃい⁉️」
「グス…えらいことなりました…😢
おっしゃる通りです…あれか…あれ、あかんかったなぁ〜…!
何ちゅうことしてしもたんや…!
親方…私がやったことなんで相撲取るのはもう仕方ないとしてね…私、家には今年26になる息子と3つになるカカァが…😭」
「息子とカカァが逆や…😓
まぁ落ち着け。命までは取らん。
1つだけ…みんなが丸く収まる手がある」
「そんなうまい手がござりまするか⁉️」
「どこの言葉やそれは…😓
任しとけ!相撲はこっちが玄人や。
とにかくお前さんは花筏のふりしてどっしりと構えとけ」
親方の考えは「ハッケヨイのこった!」と聞いたら何も考えずに両手を思い切り突き出す。
その手がちょっとでも千鳥ヶ浜に触れたらあとはできるだけカッコ悪くドタ〜っとひっくり返れというもの。
「そうすりゃ周りは
『天下の大関・花筏があんな無様に負けるはずがない。噂通りの病気で負けるのも承知してみんなに相撲見せるために土俵に上がってくれたんや!大関たるものさすがやなぁ〜!✨』
と喜ぶ。
お前さんも無事やし、千鳥ヶ浜にも華は持たせられるし、大関・花筏にも傷がつかんやろ」
「なっ、なるほど…!
そうさせて頂きます‼️」
徳さんと親方がこんな話をしている一方で、こちらは千鳥ヶ浜。
「おとっつぁん、今帰ったぞ」
「おぉ、おかえり…さっき店のもんからまたお前さんが勝ったと聞いたわ。
まぁ勝ち負けはともかく、そんな危ないことで体は壊さんようにしておくれな。」
「心配かけてすまんな。
でもおとっつぁん、喜んでくれ。
明日はなんとあの大関・花筏と取組やで!」
「そうかそうか。
まぁさすがに断ってきたんやろ?
…喜んで引き受けた⁉️
オマエは何という…こんなアホなやつやとは思わんかったわ!」
「なんでや?
ここまで全部勝ってるんやから…」
「アホ‼️相手は修行を積んだ商売人。
素人に負けるわけないやろ?
ワシはここを束ねる網元や。
この興行にもようさん金を出してる。
その息子のオマエをわざと勝たせてくれてることに何で気付かんのや⁉️」
「そんな…ハハ…いくらなんでもわざと負けてくれてるかどうかぐらいはわかる…」
「アホやなぁ…そこが玄人の技やないか。
向こうはなんぼ商売でもこんな若造に負けんとあかんのやから、ハラワタは煮えくり返ってるぞ〜💦
オマエがどうなろうと明日が終わったらこの先ここに来るのは何年先になるかわからん。
それを喜んで引き受けたやなんて、腕の1本や2本じゃ済まんぞ…!
断ってこい!
もし断らんのやったらオマエは勘当や‼️」
「勘当⁉️
どうしてもあかんか…?
うぅ…そんな顔するなて❗️
わかった!わかったから…!
明日は…相撲取らんわぃ!」
渋々、親父さんと明日の相撲は取らないと約束しました。
翌日の千秋楽、お客さんはやはり満員御礼❗️
あの千鳥ヶ浜と花筏の取組が観れるというのでいつにも増して会場が異様な熱気に包まれております。
そんな中、土俵の横でビクビクの徳さん
千鳥ヶ浜も土俵からは離れたところに座ってましたが、取組を見ていく中でやはり自分の相撲好きの血が騒ぎます🔥
ハッと気付いた時には土俵の横に座っておりました。
「にぃ〜しぃ〜、千鳥ヶ浜。
千鳥ヶぁ〜はぁあ〜ま〜。
ひがぁ〜しぃ〜、花筏。
花ぁ〜あいかぁ〜あぁあだ〜」
沸き起こる地鳴りのような歓声‼️
この声を聞き、千鳥ヶ浜も興奮して親父さんとの約束を忘れ、ついつい土俵の中へ。
ヨタヨタと徳さんも土俵に入りますが、塩はどこやら水はどうするやらアワアワしています
行司に呼ばれ、お互いが仕切りのポーズで見合う緊張の瞬間…。
ところがここで徳さん。
人間の不思議な癖「怖いもの見たさ」というものが働きます。
「千鳥ヶ浜ってどんな顔してんのかな…?
チラッ」🙄
そこには血走った眼をギョロッと向いて鬼の様な形相の千鳥ヶ浜の顔面👹
「こっ、ここ…怖ぁ〜…❗️
…み、見るんやなかった…。
どえらい顔で睨んでるわ…あかん…これは殺されるで…あっ、手足固まってしもた…!
もうおしまいや…嫁も子供ももう見ることなく、これがこの世の見納めか…!」
目からはボロボロと涙が溢れます。
それと同時に思わず口から出た言葉。
「な、ナンマンダブツ…!」
「?……『ナンマンダブツ』…???
なんや今、目の前から聞こえたで…?」
千鳥ヶ浜も同じようにチラッ🙄
「…な、泣いてる…?
なんや…なんで泣いてんねん…⁉️
ナンマンダブツて…あっ、ひょっとして!
親父の言った通り…こ、コイツ…ホンマにオレを投げ殺す気や…
こんなとこで不憫なやつやと思うから泣いてるんや…!
あぁあ…あかん…偉いことなった…あっ、手足固まってしもた…。
親の言うこと聞かんばっかりに…これがこの世の見納めか…!」
千鳥ヶ浜も徳さんと同じ。
涙と共に「ナンマンダブツ…!」
行司がその2人を見てギョッとしますが、とにかく始めなければいかんというので
「ハッケヨイ〜、のこった‼️」
「ハッ❗️てっ、手を出さなあかんのや!」
思い出して無我夢中に両手をドーンと前に突き出すと、千鳥ヶ浜もあまりの恐怖に腰が抜けているため後ろへひっくり返ってしまいました。
「〜…!😫
…んっ…?🙄
あれっ?…あらら?
倒れるのこっちじゃなかった…?
あんたが倒れるの…?
ま、まぁいいかぁ」
「花ぁ〜いかぁだ〜‼️」
行司の勝ち名乗りと共に会場は割れんばかりの大歓声‼️
「凄いなぁ〜!
見たか、あの花筏の強さを‼️」
「さすが大関や!
1発張っただけで千鳥ヶ浜が飛んでしもた❗️
さすが張るのが上手いなぁ‼️」
張るのがうまいはずで、
提灯屋の職人でございます。
〜終〜
さて、イカダでした…じゃない。
いかがでしたか?(^^)
作中に名前が登場した「花筏」
これから桜の時季に知っておいて損はない言葉です🌸
イカダというのは本来は木で出来ているものですが、これから桜が散ると花筏が出来上がります♫
それがこちら↓