ナンパの神様

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同じクラスに、ナンパの神様がいた。

大学の同じクラスにナンパの神様がいた。仮にY君としておこう。どこと言って特徴があるわけでもなく、ハンサムでもない。大学に通った4年間、一度も下宿代を払ったことが無いというのが、彼の唯一の自慢だった。どういう事かというと、彼女を作って彼女の部屋に同居するということを、4年間次々と繰り返したということである。常人に出来ることではない。

クラスメート4,5人連れだって歩いている時でも、気に入った女性を見かけると、仲間のことは忘れて、一人だけで女性の後を追いかけて行く。次の同居先を見つける為の準備なのだろう。

「なんで、アイツがもてるのだろう?」仲間の共通した不思議だった。

ある日教室でY君が一通の封書を仲間に示しながら

「彼女からこれが送られてきたけど、どういう意味かわかるか?」当の彼自身が、理解出来ていない風だった。

封書の中から取り出して見せたのは、白いハンカチだった。ハンカチには血痕らしきシミが付いている。

仲間A君「白いハンカチは別れの印しだが、血の意味はわからん。」

仲間B君「別れには血を見るぞという意味だ。キット。」

仲間C君「きっと、お前を殺すというサインだよ」

仲間達は不吉な想像をそれぞれ無責任に言っていた。Y君はその後、いつものように授業に出席していたから、仲間たちが心配するような事は起こらなかったに違いない。

「アイツばかりが何故モテル」Y君を除いた仲間の鬱積した不満を払うように誰かが提案した。

「俺たちもナンパしに行こうぜ」近所にお嬢様学校で有名な白百合学園がある。ターゲットは決まった。

白百合学園の下校時間を見図って仲間4,5人が通学路をふらふらと歩きながら下校する生徒たちを眺めていた。

「コーヒー一緒に飲みに行かない?」下校中の一人の生徒に声をかけた。声をかけられた生徒は、顔を上げてはっきりした口調で「あなた方に引っかけられるくらいなら、車に引っかけられたほうがましヨッ」

おとなしそうな少女から返された言葉に、膨らんでいた期待感は一瞬でしぼんだ。

「もう帰ろう」誰かがつぶやくように言った。さっき迄の元気はどこに行った?

人には、一生忘れられない言葉があると言う。少女の顔は忘れたが、その口から出た言葉は一生忘れられない言葉の一つとなった。

俺たちが束になってもY君の足元にも及ばない、やっぱりY君はナンパの神様だ。

元店長

世の中にはウルトラスーパーマンがいる

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