こんばんわ、きよし弁護士です(弁護士細川潔、東京弁護士会、登録番号37962)。

 

 

以下のような記事を見かけました。

 

 

韓国の雑踏事故には衝撃を受けました。

 

記事によりますと、事故に巻き込まれて負傷した後に自殺した10代の男子高校生について、医療専門家らの意見を聴取した結果、事故との「因果関係が成立する死亡者と認められる」と判断されたようです。

 

この記事を見て、交通事故と自死の問題を思い出しました。

 

交通事故で受傷した被害者が事故後の後遺症による苦痛や生活環境の変化等で精神が追い詰められた結果自死したという場合、加害者は自死の結果にまで賠償責任を負うのか、という問題です。

 

この問題は昭和40年代以降に現れてきました。

 

この問題については昭和50年に最高裁判例が出され、結論として、当該事故と自死との間の相当因果関係を認めず,自死について加害者の責任が否定されました(最判昭50 ・10 ・ 3 (集民116号243頁)。

 

しかし、事故と自死の間の相当因果関係について,すべてを否定することに関して不合理ではないかとの認識から,加害者の責任を部分的に肯定するような下級審判例が目立ち始めました。

 

このような中、平成5年にこの問題に関する最高裁判決が出て、

 

「本件事故によりAが被った傷害は, 身体に重大な器質的障害を伴う後遺症を残すようなものでなかったとはいうものの, 本件事故の態様がAに大きな精神的衝撃を与え, しかもその衝撃が長い年月にわたって残るようなものであったこと,その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって,Aが災害神経症状態に陥り,更にその状態から抜け出せないままうつ病になり,その改善をみないまま自殺に至ったこと,自らに責任のない事故で傷害を受けた場合には災害神経症状態を経てうつ病に発展しやすく, うつ病にり患した者の自殺率は全人口の自殺率と比較してはるかに高いなど原審の適法に確定した事実関係を総合すると,本件事故とAの自殺との間に相当因果関係があるとした上, 自殺には同人の心因的要因も寄与しているとして相応の減額をして死亡による損害額を定めた原審の判断は, 正当として是認することができ」るとされました(最判平5 ・9 ・9 (交民集26巻5 号1129 頁・判夕832号276頁・判時1477号42頁))。

 

要するに、本件の状況の下では、当該事故と自死の間には相当因果関係があるとした上で、自死の場合は本人の心因的要因もあるので賠償額を減額するとされたのです。

 

この最高裁判決が出た後は、この問題に関しては、この最高裁の判断に倣った判断がなされています。

 

交通事故の場合もそうですが、なんらかの事故に遭った後に、被害者が自死してしまった場合には、事故の加害者に対して損害賠償請求を行うことも検討すべきでしょう。

 

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