三月二十五日、ようやく桜の開花宣言が出た
なんだ、今ごろ
何か腹立つな
いつまで待たせるんだよ
満開の桜を待ち侘びて、一体どれだけの人が
一目見ること叶わず死んでいったと思ってるんだ
別に気象庁やソメイヨシノが悪い訳ではないことは
知っている
実は、春はなかなか非情で残酷なのだ
三寒四温は決してほのぼのとした
長閑なものじゃない
束の間、暖かい日差しを感じたあとの
寒の戻りの根性の悪さは呪いたくもなる
ひところ雨が少ないと給水制限すらあったが
近頃の延々とぐずつき続ける天候はどうだ
春は立春からが、果てしなく遠い
その間にどれだけの人々が行き倒れていくことか
雨は降る降る人馬は濡れる
西南戦争の田原坂か日露戦争の二百三高地か
はたまた二・二六事件か
陰陰滅々たるものがある
一体いつになったら、からりと暖かく晴れ上がり
日和が安定するのか
冬のあとには黙っていても順繰りに
春が巡り来るというのは違う
幾多の旅人が力尽き、行き倒れ
人々のこころが遂に折れてしまったのを見計らったように
春は、累々たる屍(しかばね)の上に
のほほんと寝ぼけ眼のような顔をして
のたりのたりと、遅れてやって来るのだ