パワーバンクを基板込みで手作り

前回紹介した防災用バッテリの中で、一番の容量を誇る自作のパワーバンクの製作記事です。
パワーバンクの定義ははっきりしませんが、大容量のモバイルバッテリ又は充電式のポータブル電源を、通称で呼んでいるようです。

内蔵しているバッテリは、破棄予定のノートパソコンから回収しました。(手順については、残念ながら公表しません。)
一応お約束ですが、

注意
今回紹介する「パワーバンク」は、破棄予定のノートパソコンのバッテリからリチウムイオン二次電池を回収して使用しています。
この回収作業は、広くて可燃物のない換気の
出来る場所で行う必要があります。金属製の工具などを使用すると、少しの手順の誤りで火災が発生します。
また、自宅の敷地内で行っても、非常に急激な炎が発生して通報される恐れがあります。
当サイトは、この作業を推奨しません。行う場合は、
自己責任で行ってください。

パワーバンクの構成

災害が発生した時に、非常持出で使うことを想定しています。
最近ではキャンプ・ブームの影響なのか、ある程度の家電も使用可能な、高性能なパワーバンクも市販されていますが、そこまでは求めません。
家族で避難する時には、他の防災用品と共に、愛猫と猫用品が必要なので、じゃまにならない程度のサイズと重量で、ある程度の期間、スマホなどの通信手順を確保できることを目標とします。

具体的には、
1 整備性が良いこと
一番手軽なのは、リチウムイオン電池をある程度の数をまとめて溶接することです。
場所も取らないし安価で、配線の抵抗も低く抑えられます。
しかし、その中の1つのバッテリが不良になった場合に、交換が出来ません。
そこで、今回は電池ケースを使用します。

2 低価格
せっかく無料の回収したバッテリを使用するので、価格は安全に配慮した範囲で安価に仕上げます。
安全性を最優先するなら、「リン酸鉄リチウムバッテリ」などを購入すれば、市販品に負けない高性能な物を作ることも可能ですが、1セルで2万円は覚悟する必要があり、常用しない防災用品としては高価すぎます。

3 小型軽量
他の防災用品を人力で不整地を運ぶことを考えると、可能な範囲で小型・軽量であることが必要でしょう。

そこで、こんな形を考えました。
ケース:工具箱
電池:回収した「18650型」リチウムイオン二次電池 20本程度
基板:「18650型」用の電池ケース付き
その他:安全確認のための温度計付き。試験的にAC 100 Vインバータを内蔵

部品の入手

ケース

ホームセンターでも確認しましたが加工することを考えて、ダイソーで良いケース(工具箱)を見つけました。
「smoky シリーズの工具箱」です。色は、緑とオレンジがあったので両方購入しました。税込み220円です。
サイズは実測値で、25 × 12.5 × 10 cmです。

ダイソーの工具箱

防水性はありませんが、キャンプではなく屋内の避難所(又は自宅避難)で使うので大丈夫です。
蓋には3つの半透明ふたが付いた収納部分があります。大きいほうはUSB端子に、小さいほうはインジケータ類にちょうど良さそうです。
内部は内蓋がありますが使いません。

工具箱の内部

基板

内蔵する基板には4種類必要です。
動作に重要な「リチウム電池充電基板」、「電池ホルダ基板」、「LED制御基板」と「5 V電源基板」です。
全て自作しても良いのですが、今回は安易にAliExpressで購入します。
工具箱の内寸が縦 85 mm × 横 225 mm位なので、この範囲で探します。

リチウム電池充電基板

色々な種類がありますが、充電に12 Vを使うなら3セルタイプが良さそうです。
「18650型」リチウムイオン二次電池は、1本で3.7 V(満充電で4.2 V)、2000 mAh程度ですから、
3本で約12 Vですね。
ちなみに電池規格の「18650型」は、直径18 mm、長さ65 mm です。

「リチウム電池充電基板」

電池ホルダ基板

元々は、この基板を見つけたのが、この製作記事の始まりのようなものです。
AliExpressの販売元が記載している基板のサイズも、150 mm × 85 mm × 25 mmで、ケースにピッタリです。

LED制御基板と5 V電源基板

ケースの側面に、非常時に便利なようにLEDライトを付けます。
ライトはダイソーの「カラビナ付 2WAYランタン」を分解して使います。(COBとLEDが付いて110円です。)

LEDの入り切りにはスイッチでもよかったのですが、プッシュスイッチで軽くON出来るようにLED制御基板を使いました。(手前にメインスイッチを付けるので、待機電流はゼロです。)
T1端子とT2端子間にプッシュ・スイッチを付けるだけでLEDを制御してくれます。

LED制御基板

5 Vへ降圧するコンバータ基盤です。
ノイズが気になるアナログの回路へ供給するわけではなく充電用なので、適当な基板を選びました。一応、規格どおりの電圧と電流は出ています。

5 V電源基板

その他

その他で試験的に内蔵する「AC 100 Vインバータ」です。車載用でDC 12 VをAC 100 Vに変換します。
サイズは87 mm × 76 mm × 43 mmと小型で、公称出力200 Wです。
一時的に簡単な電化製品の動作試験が出来ます。

AC 100 Vインバータ

電池ホルダ基板の組み立て

「電池ホルダ基板」を組み立てました。
そして、工具箱に入れてみると・・・

基板の様子

上で引っかかって基板が入りません。
計ってみると実測で横幅が86 mm以上あります。(HPでは85 mmだったのに。)
困りました。1ケースにこれを3枚入れるのに、何枚も基板を削るのは面倒すぎます。
(ガラスエポキシ製?の基板は結構固いので、手動で削るのは大変ですよね。)

でも、気持ちを入れ替えます。
ラッキーな事に、購入した「電池ホルダ基板」キットは1セットのみです。
これまで、自作にはユニバーサル基板を使っていましたが、これもいい機会なので、自作基板にチャレンジしよう!

基板の製作

で、出来ました。
基板CADは評判の良いKiCadを使いました。

そして、基板製作会社には色々と比較してELECROWさんに頼みました。
一番の理由は、その安さです。

ELECROWさんは、注文のメールは英語(又は中国語)のみで、出来上がるまでも格安基板会社では一番時間がかかるようですが、今回の製作は全然急ぎませんし、細かな精度もまったく必要ありません。
そこで、初めての基板製作なので失敗しても良いように安価なところを選びました。

基板の注文サイズは、10 cmをこえると途端に値段がはね上がります。本来の基板サイズの85 mm × 150 mm にすると、5 cm 大きくなっただけなのに数倍の価格になります。
そこで、しかたがなく基板を2つに分けて、接続することにしました。
10 cm 四方の基板なら10枚で$5以下、2種類で$10以下でした。送料は佐川急便の早い便が意外と安く$9.3でした。
色々ありましたが、送料込みの合計で$19程度でした。

基板の製作は、KiCadが非常によくできたソフトなので、はじめてでも簡単に出来ましたが、記事が長くなったので別記事にします。
(基板のパターンは、市販品のコピーに近いので、ぼかしをかけました。)

出来上がった基板

今度の基板サイズは、しっかりと計って作ったオリジナル基板なのでケースにピッタリです。

オリジナル基板をケースに入れる

部品の組み込み

LEDライトのケースを加工します。
模型用の精密ノコギリで、上下をカットしました。
残ったケース部分には、スイッチ、LEDと単4電池3本の電池ケースがあるので、大事に部品箱に収納しました。(また、いらないものが増えます。)

カットしたLEDライト

切り取ったLED部分を、スイッチがあった側を上にしてケースに取り付けます。
それ専用に作ったようにピッタリです!

LED取り付け部

必要なケースの加工を済ませ、部品を組み込んだ状態です。

左にダイソーのLEDを分解したものをボルトで固定しました。
その上には「LED制御基板」が入っています。
なお、写真の下側に映っているプッシュボタンの基板は、「電池ホルダ基板」の余白で作った「スイッチ用ボード」です。(1枚のボードの余白から「スイッチ用ボード」が2枚取れました。)

オーダー基盤とスイッチ用ボード

右側にバッテリを1段に付き6本、3段組で18本入った基板が入っています。
なお、基板と基板をつなぐ給電方法は、基板キットのメーカのオリジナルらしいので記載しません。

表示装置

蓋部分には温度計とバッテリの残量表示を付けました。
一応、ここでの消費電流を抑えるためにスイッチを付けています。

インジケータ部分

温度計周りをホットナイフで切り取ったのですが、大きく切りすぎてホットボンドで固めたので少し汚いですが、通常は蓋を閉めるので分かりません。

動作確認

メインスイッチを入れると、給電が開始されます。
LED横のプッシュスイッチを押すとLEDライトが点灯します。

LEDライトの動作

2台作ったので、ACインバータ搭載型には、Acコンセントが付きます。
横のスイッチを押すとAc 100 Vが供給可能です。

AC 100 V出力部分

内部はこのように、ACインバータがピッタリ収納されています。

AC給電付きパワーバンクの内部

DC 5 Vの供給部分です。
1台で2個のUSB出力を付けました。
中央のスイッチを入れると、給電が開始します。

パワーバンクのUSB給電部

追加・加工した蓋部品は、Fusion 360で設計して3Dプリンタで製作しました。
蓋を固定する部分はスイッチを内蔵するために切り取ってしまったので、蓋の取付はM3のボルトで固定しました。

3Dプリンタで製作したフタ部分

「5 V電源基板」は、発熱や不具合があってもバッテリに影響が少ないように、この蓋部分に分けて内蔵しました。

評価

実測で2 000 mAh以上のバッテリを18本内蔵したので、合計で40 000 mAh程度の実力がある小型で持ち運びが容易なパワーバンクが、安価に2個自作出来ました。(合計で80 000 mAh程度)
この容量のパワーバンクを購入するには4~5万円は必要でしょう。
これで、避難所に行っても家族のスマホの電源は大丈夫です。

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