天動説ってなぜわかったの?

「宇宙は私たちの地球の周りをまわっている」という考え方が「天動説」、「私たちの地球は太陽の周りをまわっている」という考え方が「地動説」です。

宇宙(天)がまわる(動く)のか、地球がまわる(動く)のかの違いです!

普段生活をしていても、「地球が動いているなー」なんて感じることはないから、感覚的には「天動説」の方が本当っぽいけどね!

そうなんです!
感覚的には「天動説」の方が本当っぽいというのが大問題で、人々が感覚的に信じがたい「地動説」を証明するのは、とても大変だったんです……。

望遠鏡がなかった時代、太陽と月以外の星はすべて「光る点」としか見えませんでした。
そのため、星空についてはほとんどわかることがなく、人類は長い間ずーっと星空を神々の住む遠い世界として眺めていました。

目次

望遠鏡の発明

しかし17世紀の初め、人類が望遠鏡を開発すると、世界は一変しました。
遠くて手の届かない、人々はただ想像するしかなかった宇宙の様子を、少し詳細に見ることができるようになったのです。人類で初めて望遠鏡で天体観測をした人物は、その業績から天文学の父とも称される、ガリレオ・ガリレイさんです。

ガリレオ
ガリレオ・ガリレイ

というと、望遠鏡を発明した人かと思われますが、ガリレオが望遠鏡を発明したのではありません。
1608年、オランダのハンス・リッペルハイという人が望遠鏡を発明しました。

ハンス・リッペルハイ
ハンス・リッペルハイ

当時のヨーロッパの国々は、激しい争いを繰り広げていました。そのような時代に、遠くを見ることができる望遠鏡はオランダ政府から高く評価されました。望遠鏡の初めの用途は、軍事用途だったのです。

そのため、オランダ政府は望遠鏡の独占をもくろみましたが、商人たちによって、「2枚のレンズを組み合わせれば遠くの景色が大きく見える」という、望遠鏡の重大なヒントが広まりだしました。

この噂を聞きつけたのが、ガリレオ・ガリレイです。
1609年に自分で作った望遠鏡を使って、天体観測を始めました。

月に望遠鏡を向けると、それまでつるつるのボールに模様がついた天体と考えられていた月に、山や谷があることを発見しました。

ガリレオ・ガリレイの月のスケッチ

ガリレオは他にもさまざまな天体を望遠鏡で覗きました。
例えば、土星は私たちの目でよーく見てもただの点にしか見えませんが、望遠鏡で覗くとこんな風に見えました。

望遠鏡で見た土星のイメージ
望遠鏡で見た土星のイメージ


目では見えなかった土星の輪を見ることができたのです。
これ見たガリレオは「土星には耳がある」と書き残しました。

現代に住む私たちはこの耳の正体は土星の輪であると知っていますが、当時の望遠鏡は性能があまりよくなかったため、輪であるとしっかり見分けることができなかったのです。ガリレオは、土星の周りを大きな星が2つ回っているのではないか?と考えたそうです。確かに上の土星を見たら、そんな風にも見えるかもしれません。

ガリレオが想像した土星
ガリレオが想像した土星

このように、ガリレオが人類で初めて望遠鏡を使って星を見たことで、それまでの人類は知らなかった宇宙の姿が次々と明らかになりました。
そして、その発見が当時の常識を覆すことになりました。

実際の土星と望遠鏡で見た土星

天動説と地動説

当時、この世界は神様が作った完璧な世界と考えられていました。
完璧な世界では、星は全て完璧な球の形をしており、完璧な円の軌道を描いて動いていると考えられていました。
この完璧な世界というのが、ガリレオの観測結果から、崩されていきます。

現代に住む私たちは、太陽の周りを惑星が回っており、その惑星の一つが私たちの住む地球だということを知っています。これは地球が動いていますので「地動説」と呼ばれています。

しかし、ガリレオが生きていた当時、「天動説」が常識でした。
つまり、天、星が動いており、地球の周りを他の星たちが回っているという説です。
中心に地球があって、その周りを月、水星、金星、太陽等の星が回っています。


天動説と地動説の簡略図
天動説と地動説の簡略図

みなさん、空をご覧ください。星々は時間とともに、動いていきます。
この時、私たちは立ち止まったり、座ったりしながら星を眺めていますので、当然動いていません。この状況だけを見れば、私たちの住む地球は動いておらず、星が動いていると思うのが普通です。

また、星はとても規則正しく動きます。北極星を中心としたきれいな円の形を描き、1日に必ず一周回ります。この規則正しさ、完璧さは「神様が動かしているからだ」と考え、星々から神様のメッセージを受け取ることができるという考え方も生まれました。

星占いの始まりだね!

しかし、そんな完璧な世界で、すこし変な動きをする天体がありました。
惑星です。惑星は惑う星と書きますが、他の星とは違う動き方をします。
毎日観察していると、規則正しく同じ方向に動いていきますが、急に反対方向に進んでしまうこともあります。

こんな気まぐれに動く星があったら、この世界は神様が作った完璧な世界とは言えない!?と思いきや、当時の人はその動きを完璧な世界のままで説明してしまいます。

惑星たちは、地球の周りを回りながら、さらに円の形に回っているという説です。

改良した天動説の概略図
改良した天動説の概略図

世界がこの図のようになっているのであれば、惑星たちの変な動きを説明することができました。
しかし、その後、天文学の研究はさらに進んでいきました。
詳細に惑星の位置を記録していくと、この説明では、現実の惑星の動き方と少し差が生じてしまい、正確に説明できていないということもわかってきました。

理論的に考えていくと、地球が回っている地動説の方が、惑星の動きをより正確に説明することができる、そして、天動説が、「惑星たちは地球の周りを回りながら、さらに円の形に回っている」という複雑なものなのに対し、地動説は「太陽の周りを惑星が回っている」「星が動いて見えるのは、地球自身が回転(自転)している」からだというシンプルなもので、こちらの方が自然だと考える人たちが出てきました。

地動説の概略図
地動説の概略図

皆さんは天動説、地動説どちらの方が、自然だと思うでしょうか?

しかし、惑星の動きをより正確に説明できる地動説でも、実際の火星の動きと理論上の動きに少し差がありました。
これは、惑星たちが正確には円ではなく楕円の軌道を描きながら回っているために、生じてしまったものですが、当時は惑星が円の軌道で回っているという考え方から抜け出すことができなかったため、この差の原因を説明することができませんでした。

つまり、地動説も天動説もどちらも現実の動きと少し差があったのです。
どちらも差があるなら、天動説の方が自然だと考える人が多かったのです。
天動説ではなく地動説が正しいという説は、ここでは世界の常識を変えることができませんでした。

地動説に対する反論として、有名なものがあります。
地球が自転しているとすると、その速さは、時速約1700kmになります。
そんな猛スピードで地球が回っているとするなら、空を飛んでいる鳥たちは取り残されてしまうというものです。

どうでしょうか?皆さんも、地球が時速1700kmで動いているとするならば、空を鳥が飛べることはおかしいと考えるでしょうか?

この考えを否定するためには、当時決定的な証拠がありませんでした。
しかし、ガリレオが望遠鏡をのぞいたことにより、待ち望まれていた決定的な証拠となりました。
地動説が真実だとするならば、宇宙はこうなっているはずだ。というものがいくつかあります。

観測から得られた地動説の証拠

金星の満ち欠け

一つは、金星の満ち欠けです。
地動説が正しいのであれば、金星は満ち欠けをするはずだと考えられていました。
しかし、金星はとても遠くにあります、いくらじっと見つめても、点にしか見えません。満ち欠けをしているかどうかは、望遠鏡を使うまではわからなかったのです。

「とても目のいい人が、かけている金星を見た!」なんていうエピソードもありますが、みんなが見えなければ科学的な証拠にはなりません。

ガリレオは、望遠鏡を使うことで、金星が満ち欠けをするという、科学的な証拠を得ることに成功しました。
もし天動説が正しければ、金星は、常に三日月状に見えることになります。
満ち欠けをしていることは、地動説を裏付ける強力な証拠となりました。

金星の満ち欠けでわかる天動説と地動説
金星の満ち欠けでわかる天動説と地動説

そして、天動説を支持する人たちにとって、地球は特別な存在でした。
全ての天体は、特別な存在である私たちの地球を中心に回っているんだという考え方です。
これを否定したのが、ガリレオ衛星の発見だったのです。

木星の周りに4つの衛星、つまり木星の周りを回っている星を発見したのです。
これは、すべての天体が地球の周りを回っているわけではないという証拠になりました。

望遠鏡で見た木星とガリレオ衛星
望遠鏡で見た木星とガリレオ衛星

また、大きな木星の周りを、小さな衛星が回るという関係が、大きな地球の周りを小さな月が回るという関係と似ており、大きな天体の周りを小さな天体が回るのが自然だという考えにもつながりました。
つまり、天動説のように、地球の周りを大きな太陽が回っているのは、不自然だという考え方になったのです。

現在、木星の周りには、100個近く(80個; 2022現在)のたくさんの衛星が回っていることがわかっていますが、この時ガリレオが見つけたのは、その中でも特に大きい、4つの衛星でした。
内側から、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストという名前がついています。

この証拠を基にガリレオは、地動説の正しさを主張しますが、当時は宗教的な問題もあり、ガリレオの主張は認められませんでした。

残念ながら、ガリレオが証明することができなかった地動説ですが、その後、ケプラーの惑星運動の法則や、ニュートンの運動の法則、ブラッドリーによる光行差の発見等、後世の様々な研究者の研究結果を経て、徐々に地動説を支持する人が増えていき、現在では地動説が正しいということが常識となっています。

このように科学の常識というものは、さまざまな研究を経て、作られていきます。
最近では、新型コロナウイルスに関しても、例えば、感染対策として有効なのは、手洗い、消毒、マスク、フェイスシールド、飲食店のパーテーションと様々なことが研究されてきました。

今信じられている科学が本当に正しいとは限りません。何十年後か、振り返って考えると、本当に効果がある感染対策が次世代に受け継がれていくかもしれません。

地動説と天動説も、数百年にわたって研究されてきました。現代では、地動説が正しいだろうと考えられています。
しかし、何百年後か、実は天動説が正しかったとなっているかもしれません。
ぜひ、みなさんの目で真実を確かめてみてください。

ガリレオの使った望遠鏡は、今考えるとそこまで性能が良いものではありませんでした。
現代では数千円で買えてしまう程度のものだったのです。
数千円で買える望遠鏡で、ガリレオ衛星を見つけることができます。ぜひ、みなさんの目で、ガリレオ衛星は本当にあるのか、確かめてみてください。
そして、一度見るだけでは、ガリレオ衛星が本当に木星の周りを回っているかどうかは、わかりません。ガリレオ・ガリレイのように、毎日、ガリレオ衛星を見続けることで、まわりを回っているかどうかがわかります。

ガリレオ衛星は早いものだと2日で、遅くても17日程度で木星の周りを回っています。
意外とこのくらいの期間であれば、毎晩動く様子を見続けられると思いませんか?

これを機会に、ぜひ天体観測を始めてみて下さい!

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この記事を書いた人

大学2年で宇宙の写真を撮ったことがきっかけで宇宙にはまる。
大学院で宇宙の研究をし、そのまま宇宙に関わる仕事に就いたまあまあな星好き。一児の父。
いつか「オーロラ・ウユニ塩湖・南十字」を見に行きたいと思っていたら、新婚旅行でオーロラを達成。

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