コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

手紙とは本心を伝えるデバイスである2-1

一F 食堂→四F

 完全にこちらを疑った聞き方、あれが事情聴取というのだろう。まったく、理に適った方法がもう少しあっただろうに。いや、あれが完璧なのかも。だって、私の神経は軽く逆なで、まるで、不意に肌の表面を絶妙なタッチで触られた不可思議な、うずくて、気持ちがいい感覚だった。スリル、それもあるか。

 武本タケルは、しかし、仮眠後の頭と体の始動にとってはかなり刺激的な出会いだったように思う。エレベーターで四階へ。工事は進んでいるのだろうか、エレベーターに乗り込む前に、私は三つ並ぶ左側の一基をぼんやりと階下に降り立つ箱を待ちわびて、視線を合わせていた。武本は思う、もしかするとこのエレベーターの一基から天井をぶち破り、スタントさながら、ワイヤーをつたって上階、つまり社長室のフロア、六階にたどり着いたのかも。ドアが開かないのは認証されていないからであり、止まったエレベーターにはその機能は果たして有効に働くのか。私は疑問を抱くと共に、やはり安全上、電気系統はすべて遮断するのであって、力任せで扉は開いてくれるのか、それとも頑なに侵入を拒むのか、と考えを廻らす。

 エレベーターを降りる。武本は自室のフロアに戻り、距離を置いた仕事に早速取り掛かった。まずは、デザインのコンセプトをざっと見返す。ここで大まかな変更点を見出すことは稀であるが、やり直しは考えられる、あり得る作業。決定の意志も大切だが、決め付けないこともまた同様の価値を有する、武本タケルにとってはだ。

 文房具のコンセプトはほぼ決定事項が最有力のまま、進行に踏み切るか……。武本は見直し、変更がないことを自らに言い聞かせ、行動を解放させる。意識は前の傾向をよく気にかけるので、こちらから言い聞かせ、正常な判断に疑う考えを直してもらい、最後にちょびっと背中を押す、という作業が一般的な私の中での特徴である。

 息を吐いて、次のステップへ。何かの行動と結びつけると、意識の変化はつけやすい。

 それから約二時間、ディスプレイと格闘する。ブラインドを閉めていたので、室内はうっすら、明かりが必要なほどに照度が落ちていた。気がついたら、ということは、つまりはそれだけ外部の変化が如実に現れていたのだろう。午前中に明るさを意識はしないし、昼までの空腹や明るさよりも気温や暑さが時間経過の指標となっている。そう、体はどこかで何かしらの変化を計っているのだ。時間によって。