Regen 「雨」で始まる複合語


Regen- で始まる語は結構多いので、ここでは比較的よく見かける語に絞って紹介したいと思います。


降雨現象

降雨現象そのものを表す語としては、まずは Regenfall (m. -(e)s/-fälle) 「降雨(字義:雨の落下)」があげられます。通常は Regenfälle のように複数形で用いられることが多いようです。後半の Fall (m.) は「落下」を意味する一般的な名詞で、ドイツ語では雨も「落ちる」 (fallen) ものとして扱われます。英語やフランス語も同様で、落下を意味する動詞は降水の意味でも使えます。当たり前だろ、と思われるかもしれませんが、例えば日本語では雨はあくまでも「降る」ものであって「落ちる」ものではありません。(日本語で「落ちる」のはあくまでも「雨粒(あまつぶ)」や「雨滴」「雨だれ」などであって、雨そのものが「落ちる」と表現されることはありません。)当ブログ筆者が大学時代に研究対象にしていたとある中東の言語でも、降水現象には「下りる」「下る」くらいの意味を持つ別の動詞が使われ、「落下」を意味する動詞は使われていませんでした。他にもそういう言語は探せばそれなりにあるのではないかと思います。


雨滴、雨雲

その「雨つぶ」は、ドイツ語では Regentropfen (m. -s/-) (字義:雨のしずく) と呼ばれます。(ちなみに雪の場合は Schneeflocke (f. -/-n) 「雪片」という言い方をします。)それらが形成される場所である「雲」は Wolke (f. -/-n) といいますが、雨を降らせる雲であれば Regenwolke (f. -/-n) という言い方がされることも多いです(通常は複数形 Regenwolken の形で使われます)。文字通り「雨雲」です。雨雲が大量の水分を含んで大雨が降りそうになっている状態を指して、 regenschwer (adj.)(字義:雨で重い)という形容詞が使われることもあります。


にわか雨(驟雨)

「にわか雨(驟雨)」を表す語としては、通常は Schauer (m. -s/-) (英語の shower とも同根語です)が使われます。これはいわゆる「短時間強雨」と呼ばれるもので、降る時間は短いものの、大雨で、しかも降雨強度が短時間で大きく変化する対流性の雨です。これに Regen- を付して Regenschauer (m. -s/-) という呼び方がされることも多いです。特に Schneeschauer (m. -s/-) 「にわか雪(驟雪)」などと区別する必要がある場合にはしばしば使われます。これらの語の基礎語の位置にある Schauer-artig 「〜のような」という形容詞語尾を付加して Regen の前に置くと、 schauerartiger Regen 「驟雨性の雨」という表現ができます。「驟雨というほどではないが、それに近い驟雨的性質を帯びた降雨」くらいの意味合いでしょうか。


土砂降りの雨

「土砂降りの雨」は Regenguss (m. -es/-güsse) と呼ばれることもあります。ただ Guss (m.) (動詞: gießen 「注ぐ」)単独でも土砂降りの雨の意味で使えます。


雨量

次に降雨現象と関わりの深い語ですが、Regenmenge (f. -/-n) 「降雨量」や Regensumme (f. -/-n) 「総雨量(字義:雨の総計)」などがまずはあげられるでしょう。どちらもドイツ語では一平方メートルあたりのリットル数 l/m2 (Liter pro Quadradmeter) もしくはミリメートル数 mm (Millimeter) で表記されます。どちらの単位も数字としては同じですが、ドイツでは前者の表記の方が多いようです。


気候的スパンでの雨

regenarm (adj.) 「雨が少ない」「少雨の」、 regenreich (adj.) 「雨が多い」「多雨の」などの形容詞もあります。降雨が全く観測されない状態を指して regenfrei (adj.) (もしくは niederschlagsfrei (adj.) 「降水のない」) という形容詞が使われることもよくあります。語尾の -frei は単独でも「自由な」の意味で用いられる語形ですが、英語の tax-free 「免税の」の後半部分の -free と同じようなもんだと思えばいいでしょう。逆に24時間以内に 0.1mm 以上の降雨が観測された日のことは Regentag (m. -(e)s/-e) と呼ばれることがあります。あえて訳せば「降雨日」でしょうか。雨の多い月は Regenmonat (m. -(e)s/e) 、「雨季」は Regenperiode (f. -/-n) と呼ばれます。


雨よけ、雨対策

Regenschutz (m. -es/-e) 「雨よけ」「雨対策」という語がありますが、これは直訳すれば「雨(からの)防御」です。 regendicht (adj.) や regenfest (adj.) 「雨を通さない」「雨に耐える」などの形容詞もあります。具体的な物としては Regendach (m. -(e)s/-dächer) 「ひさし(字義:雨よけの屋根)」とか Regenmantel (m. -s/-mäntel) 「レインコート」、 Regenschirm (m. -(e)s/-e) 「雨傘」などがあげられるでしょうか。


「雨の影」

Regenschatten (m. -s/-) という語がありますが、これは直訳すると「雨の影」となります。降雨域が山岳地帯などでせき止められて、その反対側で雨が降らなくなっている地域のことを指す語のようです。フェーン現象 Föhn (m. -(e)s/-e) の際に山の風下側で雨雲が途切れてできる晴天域のようなものでしょうか。逆に降雨域は Regengebiet (n. -(e)s/-e) と呼ばれます。


雨にまつわる動物、諸現象

降雨にまつわる語としては、他にも Regenpfeifer (m. -s/-) があります。鳥の一種で、小学館『独和大辞典』コンパクト版 (1985, 1990) では「千鳥」という訳が付されています (p.1762) 。 Regenwurm (m. -(e)s/-würmer) は「ミミズ」です(字義:雨のワーム)。 Regenbogen (m. -s/- (-bögen)) は「虹」を指します。 Bogen (m. -s/- (Bögen)) は「孤」「弓」を意味する語です。


変わったところでは、 Regengeruch (m. -(e)s/-gerüche) という語があります。これは、直訳すると「雨の匂い」を意味し、長期間降雨がなく、地面が乾燥している状態で、新たに雨が降り出した時に発生する匂いを表す言葉なのだそうです。その発生過程については、ドイツ気象局の気象語彙集 Wetterlexikon の Petrichor の項目、もしくは2016年9月6日の気象ブログ Der Geruch des Regens 「雨の匂い」で解説されています(後者の方が若干詳しいかも)。ご参考までに。

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