【課題】スポーツビジネスに必要不可欠な「経営の目線」とは

【課題】スポーツビジネスに必要不可欠な「経営の目線」とは

投稿日:2024年3月28日 更新日:2024年3月28日

コラム
スポーツビジネス関連

コロナウイルスから回復し、今後ますます盛り上がりを見せるであろうスポーツビジネスですが、今後の市場規模拡大に向けて抱える課題は少なくありません。

そのうちの一つとして挙げられるのが、「経営を担える人材の不足」です。

文部科学省もスポーツ業界の抱える最重要議題の一つとして、団体をマネジメントするスポーツ経営人材の育成を掲げています。

当記事では、スポーツビジネスにおける経営人材の重要性とその現在地・課題について詳しく解説します。ぜひ最後までご覧ください。

なぜスポーツ業界に経営人材が必要なのか

発展途上なスポーツ業界

今現在、日本のスポーツ参加市場規模(2023年)は三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングとマクロミルによる共同調査によると1.4兆円となっており、コロナ禍前の2019年の2.3兆円にこそ届いていませんが、前年2022年の1.1兆円に比べて大幅な回復を見せています。人々の健康志向拡大や、各プロスポーツの盛況により、スポーツ業界の発展は今後ますます期待できるでしょう。

しかし、海外と比べると日本のスポーツ業界はまだまだ発展途上です。日本で一番人気のある野球を例にとってみても、NPBの平均年俸は4468万円なのに対して、MLBの平均年俸は6.8億円となっており、10倍以上の差があります。

スポーツ市場の拡大を目指して

そんな発展途上な日本のスポーツ業界の中で、特に課題とされているのが経営人材の不足です。今現在、日本のスポーツを「ビジネス」でとらえる動きは海外に比べると小さく、スポーツを通じて収益を上げるという考え方はまだ広くは普及していないように思います。その証拠として、皆さんの中で、スポーツビジネスやスポーツマーケティングを専門に扱う会社の名前を調べずにあげられる方は少ないでしょう。

その原因の一つとして、各プロスポーツ団体・チームの経営規模が大きくないことがあります。今現在のスポーツ断定・チームには、ビジネスにおける専門的な知識を備え、スポーツという多くの人に届くコンテンツを用いて「稼ぐ」ことのできるプロフェッショナルな人材が大幅に不足しています。各プロスポーツ団体・チームに所属して働く人の数は決して多くなく、社員の方も親会社からの出向や業務委託が中心で、新卒採用などは公に行っていない場合がほとんどです。またその待遇も決して良いとは言えません。

こうした現状を解決するためには、各団体・チームが独自に自分たちが持つ「スポーツコンテンツ」を利用して財源を確保し、収益化モデルを構築する必要があると言えます。その達成のためにも、他業界で活躍した経営のプロフェッショナルが必要であり、今後に向けてはスポーツ経営のプロを育成していく必要があるのです。

スポーツ業界を「稼げる業界」にするには

ここまでスポーツ業界において、「稼ぐ」という経営視点を持つことが大事という話をしてきましたが、今後スポーツ業界はどのように収益化を進めていくのが良いのでしょうか。結論から申し上げますと、海外の収益システムを参考にしていく必要があるように思います。海外のシステムと比較した際の日本スポーツ界の問題点を各クラブ、リーグの目線から考えてみましょう。

①「親会社」と「チーム」の関係性

日本のプロスポーツチームの多くは親会社を有しており、チームの経営者の多くは親会社からの出向です。ジャイアンツの親会社と言えば読売新聞社ですし、マリノスの親会社と言えば日産自動車と割と多くの人が思い浮かぶはずです。対して海外はどうでしょうか。メジャーリーグのチームやヨーロッパサッカーの有名チーム、ヤンキースやバルセロナFCの親会社と言われてもピンとこない方が大半だと思います。

歴史をさかのぼると、日本のプロスポーツチームは元は企業に所属するスポーツクラブであったことから、経営においても親会社の影響を強く受けます。その分チームでの収益が悪化しても親会社が補填してくれることから、大幅な収益化のために舵を切る必要はなかったのです。一方で海外のチームはチームの独立採算で運営が行われ、収益を出して企業規模を拡大していくことを目標に経営者中心に活動してきたのです。今後の日本スポーツ業界においても、親会社に依存せずに独自に収益を上げれるようチーム単位で施策を打っていく必要があると言えます。

②チームをまとめるリーグ機構の存在

先ほどはチーム単位での収益化の問題について触れましたが、日本のプロスポーツチームの一部は独立採算でも大幅な利益を上げているケースもあります。例として、プロ野球の福岡ソフトバンクホークスはコロナ禍前の2019年度には324億円の売上を算出するなど一部チームでは改革が進んでいます。

もう一つ大きく日本と海外のスポーツ業界の違いとして挙げられるのは、各チームが所属するリーグ機構が持つ機能の違いです。例えばMLBではその収益の多くが放映権料が占め、全30球団の放映権をリーグが一括管理し各放送局やOTTに販売して大きな収益を上げています。一方で日本プロ野球は球団それぞれが独自に放映権交渉を行っていることから、全12球団すべての放送が見られるメディアサービスは現状存在せず、DAZNやスカパーなどを複数契約しなくてはならない状態です。コンテンツホルダーがリーグではなく各チームが主体となっているため、大規模でのビジネスチャンスが生まれづらい他、クラブ間での格差が生まれてしまいやすくなっています。

スポーツ経営プロフェッショナルの育成に向けて

ここまで日本スポーツ界の経営における問題点を指摘してきましたが、今後の状況改善のためにどのようにしてスポーツ経営におけるプロフェッショナルを育成し、活躍できる環境をつくっていくのかについて考えていきます。

スポーツ経営プロフェッショナルの育成

スポーツビジネスにおいて経営者目線での施策について学ぶためには、スポーツの「稼ぎ方」について学ぶ機会が必要です。

現在、そういったスポーツ経営について学べる環境をいくつか紹介します。

①JOC国際人養成アカデミー主催:公益財団法人日本オリンピック委員会

本アカデミーは、JOC、JOC加盟競技団体からの推薦を受け、将来IOC、IF/AF等の国際スポーツ組織における役員、または国際競技大会のスポーツディレクター等として、その団体や組織の政策決定過程で活躍が期待できる人を対象としたプログラムで、国内スポーツ組織が国際スポーツ組織との関係を強化することへの支援を目的にした、人材の国際力向上を図る人材育成事業です。

実際に学べるのは以下の項目です。
[A] スポーツリーダーとして持つべき基礎知識(10コマ)

[B] 国際スポーツリーダーして持つべき知見(11コマ)

[C] グローバルマインドセット(5コマ)

[D] 国際スポーツリーダーの本質的条件となる考え方や意識(14コマ)

[E] 国際コミュニケーション演習(42コマ)

②つくば国際スポーツアカデミー(TIAS) 主催:筑波大学 

本アカデミーは、日本政府が推進するスポーツおよびオリンピック・パラリンピックムーブメント普及のための「Sport for Tomorrow」プログラムの一環として2015年に開設されたプログラムで、グローバル人材の育成を目指し、大学院修士課程レベルの教育プログラムの開発及び提供を行っています。

実際に学べるのは以下の項目です。

■専門科目(共通)(8~10 単位履修)
瞰力と現場での実践力をもとに、国際スポーツ界のリーダーとしての総合能力を身につける。

■専門科目(専門分野)(4~8 単位)
5 分野(オリンピック・パラリンピック教育、スポーツマネジメント、スポーツ医科学、開発と平和のための スポーツ、ティーチング、コーチングと日本文化)から一つを選択。先端的なスポーツ科学に対する理 解力を基盤にした現場での実践力を身につける。

■専門基礎科目(必修)(11 単位)
スポーツ・オリンピック学の基礎力として、オリンピズムとスポーツの価値に対する理解力と実践力、日本文化に対する理解力、そして以上を基盤にしたコミュニケーション能力を身につける。

③SBA(スポーツビジネスアカデミー) 主催:一般社団法人スポーツビジネスアカデミー

本アカデミーは、スポーツ業界の更なる発展のため、圧倒的な実績を誇る講師陣による実践的かつ体系化されたプログラムを通して、スポーツ業界で活躍するための機会の提供を行っています。

スポーツ業界への就職・転職を目指す方、すでに業界で働いているがスキルアップを図りたい方やスポーツを商材としたマーケティング活動を企画している方などを対象に、個別テーマごとに学べる「セミナー」から、週末に短期集中で体系的に学べる「コース(短期集中講座)」があり、忙しい方でも効率的に学ぶことができるプログラムになっています。

まとめ

いかがだったでしょうか。当記事では、スポーツビジネスの今後の発展に向けた経営目線での改革の必要性について取り扱いました。

スポーツ業界、スポーツビジネスに興味がある方・興味を持った方はぜひ当サイトのコラム記事をご覧ください。

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