霧が漂う静かな湾に、二匹の子猫がぽつんと佇んでいた。
月が雲間から顔を出すたびに、その瞳が星のようにきらめく。
二匹は船の灯りが点々と浮かぶ水面を見つめていた。
あの灯りの先には、伝説の「月光の島」があるという。
そこには、失われた時間と記憶が眠っているらしい。
二匹は少し震えたが、小さな胸を張り「行こう。怖くなんてないさ」と言った。
水面には月が描く航路が一筋。
まるで導くように、波は穏やかに揺れる。
二匹は、そっと一歩を踏み出す。
小さな肉球が岩の上を離れ、二匹は月の航路へと歩き出した。
彼らが進むごとに、霧はゆっくりと晴れ、船は静かに彼らを迎え入れた。
どこか懐かしく、しかしどこにもないような世界。
その向こうには、永遠に続く夜と、いつか帰る朝が待っている。
月光に包まれた子猫たちの航海は、まだ始まったばかりだった。