別離_1 | 忘れられない記憶 ~ごめんね、そしてありがとう~

別離_1

僕が実家に着いた頃には、もう日が変わっていた。


見慣れた玄関を無言でくぐり居間へと向かう僕。

「お帰り・・・」

そこにには憔悴しきった母と、親戚がいた。

そして・・・

隣の部屋には布団の上に横たわった親父が、

顔に白い布を被されていた。


「何で?どういうこと?」

帰路の間に全ての涙を出し切った僕は、

少し冷静に母親にそう尋ねた。

「あのね、脳溢血だって。みんなでご飯食べてたの。
 で、いつもの様にお酒少し飲んで横になったのよ。

 お父さん酔ったらすぐ寝るでしょ?

 だから、最初は誰も気付かなかったの。

 それでしばらくして起こそうとすると、

 様子がおかしかったので慌てて

 ・・・スン、救急車を、うっ、呼んだの」

そう言いながら最後の方は思い出してしまったのか、

泣きながら僕に説明する。

「親父さん見てやってくれ・・・」

そう叔父に促され、僕は隣の部屋の布団の側へ座った。

白い布をゆっくりと持ち上げる。

その下から現れたのは、生気が見られないが

まぎれもなく親父の顔だった・・・


「綺麗な顔だろ?お医者さんが言うには、

 ほとんど苦しまなかっただろうって」

「まるで生きてるみたいだろ?」

「うぅ・・・えっ、えっぐ」

そう涙声で僕に話す叔父達の言葉で、

再び泣き出す母親。


その声を聞きながら僕は、出し切ったはずの

うっすらと浮かぶ涙が零れるのを堪えていた・・・・

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