谷崎潤一郎をめぐる人々と着物 ~事実も小説も奇なり~ | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、弥生美術館で開催されているのは、

“谷崎潤一郎をめぐる人々と着物 ~事実も小説も奇なり~”

ノーベル文学賞の候補者に何度も選ばれ、

世界的にも評価の高い小説家・谷崎潤一郎をフォーカスした展覧会です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

実は、谷崎潤一郎は着物に強いこだわりがあったのだそう。

それゆえ、谷崎文学に登場する女性は着物を着用していることが多いのだとか。

そんな谷崎文学の登場人物たちの衣装を、

アンティーク着物コレクターの田中翼さん全面協力のもと、

アンティーク着物で再現してみようというのが、今展の試みです。

星

 

 

例えば、こちらは谷崎の代表作 『細雪』 の4姉妹をイメージしたもの。

 

 

 

4姉妹のキャラクター造形に合わせて、

着物はもちろん、帯や半襟、帯留めなどのアイテムもスタイリングされています。

 

 

また例えば、こちらは 『鍵』 に登場する郁子 (谷崎の妻・松子がモデル) をイメージしたもの。

 

 

 

戦後という時代背景も加味して、セレクトされた着物だそうです。

黒い鳥がなんとも大胆。

色はシックですが、柄としてはだいぶアバンギャルドです。

 

 

他にもインパクトあるアンティーク着物がいっぱい。

『蓼喰ふ虫』 の美佐子 をイメージした着物は、

海外の街並みがラメのような素材で再現されていました。

 

 

 

しかも、よく見ると、帯には 「千一夜物語」 の文字が。

 

 

 

異国情緒が溢れるにもほどがあります。

 

 

また、谷崎の初期の自伝的小説 『神童』 には、

花街の女性たちに強い憧れの感情を抱くようになる一幕があるのだそう。

それに関連して、当時の花街の女性の着こなしも紹介されていました。

 

 

彼女らは、カラフルな色合いではなく、

シックで粋な着こなしをしていたのだそう。

なお、右側の着物の半襟は・・・・・

 

 

 

墓地をデザインしたものとなっていました。

粋を越えてパンクです。

 

 

ちなみに。

展覧会では、谷崎の3人目で最後の妻・松子の着物をはじめ、

 

 

 

 

谷崎をめぐる人々が実際に着用していた衣服も展示されています。

また、谷崎自身が着用していた長襦袢も。

 

 

 

大津絵が大胆に配置されています。

これまたパンクなデザインです。

 

 

ただ、着物以上にパンクだったのが、

会場で紹介されていた谷崎自身の数々のエピソード。

特に衝撃的だったのが、通称 「小田原事件」 です。

 

悪女好きだったという谷崎。

どストライクな悪女に結婚を申し込むも、

人妻を理由に断られ、代わりに妹・千代を勧められ、結婚することに。

(↑実の妹を差し出すところが、やはり悪女)

千代は良妻賢母を絵に描いたような女性でしたが、

悪女好きの谷崎的には、物足りなさを感じずにはいられません。

それからしばらく経ったある日、千代の妹・せいが谷崎家に転がり込んできます。

長女と似て、奔放でわがままだったというせい。

悪女好きの谷崎はすっかり20歳下のせいに惹かれてしまいます。

谷崎が実の妹を想っていることを知りショックを受ける千代。

そんな千代を不憫に思った谷崎の友人で、

『秋刀魚の歌』 で知られる詩人・佐藤春夫は、

千代を慰めるうちに、憐憫がやがて愛情へと変わっていきます。

いつしか、佐藤と千代は恋仲に。

その関係を知った谷崎は、「逆にこれはせいと結婚できるチャンス!」 と、

佐藤を責めるどころか、むしろ千代と結婚しちゃえ、と彼をけしかけたのでした。

ところが、その後、谷崎がせいに告白したところ、あっさり玉砕。

その結果を受け、谷崎は佐藤とともに小田原に向かう列車の中で、こう告げたのです。

「せいにフラれたんで、やっぱ奥さん返して」 と。

この前言撤回に佐藤が激怒。

谷崎と佐藤は絶縁状態となったのでした。

 

ちなみに。

谷崎と佐藤、千代の3人を不幸にしたせい。

その彼女をモデルに描いた小説が、『痴人の愛』 なのだそうです。

 

 

 

なお、「小田原事件」 の数年後、

谷崎と佐藤は 「妻譲渡事件」 も引き起こしています。

そちらも説明していると、記事が長くなってしまうので割愛。

気になる方はネットで検索してみてくださいませ。

「小田原事件」 で炎上、「妻譲渡事件」 でも炎上。

他にも私小説を発表しては、たびたび炎上していたという谷崎。

LINEのやり取りが流出して炎上したあのタレントやあのミュージシャンと違い、

谷崎は誰に頼まれたわけでなく、自分自身で詳細を流出させては炎上していたようです。

 

 

 

 

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