佐伯祐三 自画像としての風景 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、東京ステーションギャラリーでは、

“佐伯祐三 自画像としての風景”が開催されています。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

大正から昭和初期にかけて活動し、

パリにて30歳という若さでこの世を去った、

伝説の洋画家・佐伯祐三の大規模な回顧展です。

 

大阪中之島美術館が所蔵する国内最大の佐伯祐三コレクションを中心に、

東京国立近代美術館、ポーラ美術館、個人の所蔵品など、日本全国から佐伯作品が集結。

それらの中には、《郵便配達夫》や、

 

《郵便配達夫》 1928年、大阪中之島美術館

 

《ガス灯と広告》といった代表作も数多く含まれています。

 

《ガス灯と広告》 1927年、東京国立近代美術館

 

 

出展作は、実に約100点!

考えうる限り、ベストofベストな布陣の佐伯祐三展です。

これを超える佐伯祐三展は、おそらく無いでしょう!

いや、強いて言えば、巡回先である大阪中之島美術館は、

東京ステーションギャラリーでの展示よりも、出展数が20点近く多いとのこと。

ということは、大阪で観るべきかも・・・。

いやいや、佐伯祐三といえば、その生涯で、

憑りつかれたかのように、多くの壁を描いた画家。

 

 

 

そう考えると、赤レンガ壁が代名詞である、

東京ステーションギャラリーの展示室で観る方が良いかも。

 

 

 

結論としては、東京と大阪、

どちらも観ておくに越したことはなさそうです。

星星

 

ちなみに。

これは個人の感想ですが、展示室の壁に、

佐伯の作品が掛けられていたおかげで(せいで?)・・・、

 

 

 

建物の中にいるにも関わらず、

まるで、建物の外にいるかのような、

不思議な感覚を味わうことができました。

内側なのか外側なのか。

クラインの壺を彷彿とさせるものがありました。

 

 

と、それはさておきまして。

大正・昭和初期の洋画家の中でも、

イケメンゆえか、特に人気の高い佐伯祐三。

それだけに、過去に何度も佐伯祐三の展覧会は開催されてきました。

 

25歳で東京美術学校を卒業し、その年のうちにパリへ。

2年間滞在した後に、一時帰国。

新宿区下落合で1年半を過ごし、再びパリへ。

そして、1年後に客死。

 

これまで、そんな怒涛の画家人生を追体験するような、

時系列で作品を紹介する佐伯祐三展がセオリーでしたが。

今展ではあえて、時系列ではなく、

東京や大阪、パリといった佐伯が過ごした都市をフィーチャー。

各都市で描かれた作品をグルーピングし、

さらに、モチーフごとに分けて紹介しています。

もちろんパリの街角、外壁を描いたものが目立っていましたが、

意外と、それ以外のモチーフも、それも何枚も描いていたようです。

 

 

 

特に印象的だったのは、佐伯祐三による静物画。

 

 

 

風景画家の印象が強かっただけに、

佐伯の新たな一面を知ることができました。

個人的にお気に入りなのは、海産物3点セット(?)。

 

 

 

どれも素直に美味しそうでした。

とりわけ惹かれたのは、《蟹》

作品の隣に添えられたキャプションによれば、

活きが悪いからと捨てられた蟹を佐伯が拾い上げ、

30分間という短時間で仕上げたものだそうです。

なお、絵を描き上げた後、佐伯はそれを一人で平らげてしまったのだとか。

活きの悪い蟹だったのに・・・。

その後、お腹を壊さなかったのか心配でなりません。

 

 

また、本展では、静物画だけでなく、

佐伯には珍しい肖像画の数々も展示されていました。

こちらは、美術学校在学中の下宿先の女性、

大谷さくと、その兄である大谷安兵衛を描いた肖像画です。

 

 

 

どちらも本展初公開とのこと。

兄の安兵衛のほうはともかくも、大谷さくのほうは、

もう少しポップに描いてあげられなかったものでしょうか。

この世の不幸をすべて、しょい込んだような顔をしています。

金田一耕助シリーズの何かしらに出てきそうな感じを醸し出していました。

 

なお、他人を描いたから、

こんな仕上がりになってしまったのかと思いきや。

妻や一人娘を描いた肖像画も・・・・・

 

 

 

ご覧の通り、なんだか不穏な空気が漂っていました。

この家族、絶対に何かあります。

『呪怨』的な何か・・・・・。

あ、そういえば、『呪怨』に登場する伽椰子も、

その子どもである俊雄も、苗字が「佐伯」でしたね!

偶然にしては出来すぎている気がします(←間違いなく偶然)。

 

ちなみに。

展覧会の冒頭では、佐伯の自画像の数々で幕を開けますが。

 

 

 

そのセンターに置かれていたのは、

第1次パリ時代に描かれた代表作《立てる自画像》でした。

 

《立てる自画像》 1924年、大阪中之島美術館

 

 

大谷さくの肖像画よりも、

妻や一人娘の肖像画よりも、

悲壮感、ただごとではない感じが漂っています。

それもそのはず、最終的に顔の部分を削り取ったのだそうです。

なぜ、そのようなことをしたのか。

実はこの頃、佐伯の人生史に残る、

もっともショックな出来事に襲われます。

フォーヴィスムの画家ヴラマンクに、

自信作を見せたところ、こんな怒声を浴びたのだそうです。

 

「このアカデミック!」

 

それまでの画家人生を全否定されたことで、

佐伯は大きなショックを受けましたが、おかげで覚醒することに。

結果的には良かったとは思いますが、

ブラマンクも、何もそんな怒らなくても。。。

もし、今の世で同じ怒り方をしていたら、指摘されるかもです。

 

 

 ┃会期:2023年1月21日(土) ~4月2日(日)
 ┃会場:東京ステーションギャラリー
 ┃https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202211_saeki.html

~読者の皆様へのプレゼント~ 
“佐伯祐三展”の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。 
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。 
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、2月10日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。

 

 

 

 

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