今月の8日から9日にかけてソウルおよび首都圏を襲った豪雨の影響で10人以上の方が亡くなり、現在も行方不明となっている方が何人もいる。

この豪雨関連のニュースでもっともショックだったのは、ソウル市内の半地下住宅に住人4人が、浸水で自宅にいながら水死してしまったことだった。

同じ自然災害でも地震の場合は必ずしもそうとは言い切れないけれど、豪雨に襲われた場合、自分にとってもっとも安全に感じることができる場所はやっぱり自宅である。

窓をすべて占めて雨水が入ってこないようにして、朝になればきっと雨はやんでいるはず、と信じて布団をかぶって寝てしまう。

しかし、もし自宅が半地下住宅だったら、とてもじゃないけど同じことはできない。

半地下部屋があるような建物は古い建物がほとんどなので、玄関のドアを閉めて窓という窓をすべて閉めても、すぐ外の道路が冠水すればドアや窓の隙間から室内に水が入り込んできてしまう。

すぐに避難できればいいけれど、就寝中だったりして避難するタイミングを失ってしまえば、ドアは水圧で開けることができなくなってしまい、外に逃げるには窓から脱出するしかなくなる。

が、悪いことに、半地下住宅の窓は地面の高さとスレスレの位置にあるため、防犯のために窓には鉄格子がはめられている。

ちょっと力を加えるだけで簡単に外れてしまうような鉄格子だったら意味がないので、かなり頑強に作られており、浸水のような非常事態下でパニック状態になってしまったら、外すことはまず不可能に近い。

この半地下住宅は、朝鮮半島有事に備える形で退避場所として多く建造されたことがルーツだと言われている。普段は倉庫として使用されていたのが、北朝鮮との休戦状態が長引くにつれて次第に住居として使われるようになっていったらしい。

天井が地面とほとんど変わらない位置にあるので日当たりは最悪だし、窓を開ければ砂埃や排気ガスが入り込んでくるので換気はできないし、湿気がたまるからカビは生えるし、ゴキブリなどの害虫も発生しやすい。

住環境としては最悪だけど、それでなくても住宅価格や家賃が高騰し続けているソウル市内で、半地下住宅以外に選択肢がない層は確実に存在している。

今回の悲劇を受けて、ソウル市は半地下住宅の新設を禁止すると同時に、10~20年の猶予期間を経て既存の半地下住宅をなくしていく方針を発表した。

もちろん、今回のような悲劇を二度と繰り返さないために、半地下部屋の住居利用を禁止するという方向性には全面的に賛成である。しかしながら、現実問題として、半地下住宅を出た人々の受け皿となれるような住居が他にあるのだろうか? という疑問は残る。

当面の措置として、窓にはめられている鉄格子を部屋の内側からであれば簡単に外すことができるタイプのものに早急に交換することを各自治体の予算で行ったり、豪雨の予報が出ている時は、早めに近くの公立学校の体育館や講堂に避難できるようにしたりしてほしいと思う。

さて。

この半地下部屋、自分は今のところまだ実際に目にしたことがない。

ソウルには多くあるようなのだが、朝鮮半島の南西部に位置している光州は、北朝鮮との距離が遠く離れているからか、そもそもほとんど存在していないと聞いた。

・・・と書きながら思い出したのは、今のマンションに引っ越してくる前に住んでいたヴィラのこと。

そのヴィラにも半地下部屋はなかったのだが、坂道の途中に建っていたため、1階の管理人さん一家の住居が、坂の下から見ると1階でも、坂の上から見ると地下だった。

その管理人さん宅のバスルームの窓が、ちょうど坂道の道路に面したところにあり、パッと見は半地下部屋のように見える。

文章で説明してもわかりにくいと思うので、近くに行ったついでに実際の建物の写真を撮ってきた。

ちょうど前に車が何台も停まってしまっていて見にくいけれど、グレーのバンのすぐ横が、その「なんちゃって半地下」の部分。



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あらためてよく見てみたら、道路に面してバスルームの窓があるのではなく、ちょっと角度がズレているので、万一豪雨で坂道を大量の雨が流れてきても、よっぽどのことがない限り、構造的にこの窓から水が入り込んでくることはなさそう。

よく見ると、やっぱり防犯目的の鉄格子のようなものが内側にあるのが見えますね。



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こちらは、坂の上から見た、建物の裏側。




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・・・ああ、この建物自体は3階建てなので、こうして見ると、管理人さん宅は完全に半地下だわ。

管理人さん宅にお邪魔をしたことはないけれど、預かってもらっていた宅配便を受け取る際に玄関から室内を覗いたことがあるのだが、この畑に面した窓のある場所はキッチンだった記憶がある。

ちなみに、かつての我が家は上の写真の最上階(といっても3階ですが)の部屋だった。

エレベーターがないので、ベビーカーに娘を乗せて買い物に行き、帰宅した時に娘が寝てしまっていたら(←だいたいいつも寝てしまっていたw)、ベビーカーを畳んで肩に掛け、娘を抱っこし、買ったものを肘に掛けて、3階まで階段を上ったっけ。

あの頃はそれが「当たり前」だったので特に大変だとは思わなかったけれど、今思い返してみると、よくやっていたよな、と思う。

今住んでいるマンションは地下駐車場からエレベーターで部屋まで直行することができるけれど、このヴィラに住んでいた時は、車を停めてから建物の入り口までグルリと歩く必要があったので、荷物の多い雨の日などはけっこう大変だったことも思い出した。

まあ、住めば都、という言葉もあるし、自分的にはそれなりに満足して住んでいたんだけどね。






さてさて。

今回の豪雨被害に関連したニュース報道を見ているうちに、映画「パラサイト」をもう一度観たくなり、8月14日までネットフリックスで視聴が可能だったので、あらためて観てみた。

「パラサイト」は公開直後に一度観ていたのだが、時間を置いてからまた観ると、けっこう細かい部分の描写やセリフのやりとりなどを忘れてしまっていたな、と実感。

豪雨の日に、大金持ちのパク家に運転手や家庭教師として雇われているキム家の3人が、夜中にパク家を抜け出して自分たちが暮らす半地下の家に向かうシーンは、高台から低地へ、上流から下流へ、と下りていく様子が実に象徴的に描かれていて、最初に観た時はストーリーを追うのに夢中だったために気がつかなかったのだが、その上手さに思わずうなってしまった。

クライマックスの殺し合いのシーンや、その後のエンディングシーンについてもすっかり忘れていたので(←大丈夫か、自分の記憶力?)、終わり方の救いようのなさに、観終えてからしばらく暗い気分になった。

ちなみに、自分がもし、半地下一家の父親のキム・ギテクの立場だったら、絶対にあそこで逃げずに普通に自首することを選ぶ。刑務所暮らしも楽ではないだろうけれど、よその家の地下室で息をひそめて暮らすよりはずっとマシ!

ま、その展開では映画のラストとしては使いものにならないけどw


最後までお読み下さってありがとうございました♪


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