大阪・高槻で訪ねたJT生命誌研究館、元々興味があったというわけでもないに、逆に言えば興味から外れていたことなだけに結構長居をして見て来たもので、も少しだけ展示のお話を落穂拾い的に。

 

 

館内の展示は基本的には1階の展示スペースがメインで、2階は吹き抜けの周りにある回廊部分に少々、3階はラボでイベント時に入れることがあるのみのようですけれど、最上階4階まで階段がこのように続いているのでありますよ。なんとなれば、4階屋上部分には「Ω食草園」というものが設けてあるようで。こんな具合です。

 

 

訪ねた時にはどうやらここも立ち入れないようすでしたので、この写真は屋内からのガラス越しになりますが、それにしてもこぢんまりとした植え込みで。「食草園」と聞けばそれこそヒトが食べられる草を集めて栽培している…てなふうに思ってしまうところながら、実はこの草を食すのは蝶々のためであると。つまり、蝶の幼虫がむしゃむちゃするためにこそある「食草園」だったのですなあ。「身近な昆虫と植物の関係を見つめ、進化を読み解く研究の場所」なのだそうですありますよ。

 

という具合に昆虫研究に余念の無い施設でもありますので、虫にまつわる展示解説でも「ほお!」と思うものに出くわすのですね。そこではむしろ植物もまた、一方的に虫に食べられているばかりではないようすが浮かび上がったりするわけでして。

 

 

そも幼虫に葉っぱを食い荒らされる以前、卵を産み付けられたところから植物はそれと察するのであると。そして、「卵の下や周辺の葉の細胞を枯らして卵を乾燥させたり、卵の真下にこぶをつくって葉から落とそうし」たりするのであると。肉を切らせて骨を断つではありませんが、とかげのしっぽ切りのようなことが植物でも行われていたのですなあ。さらには、こんな対抗手段も。

 

 

卵への撃退作戦が奏功せずに孵化してしまった場合、早速に幼虫は葉っぱをむしゃむしゃしだしますが、例えば青虫が大好きなキャベツは食べられた葉っぱからハチを引き寄せる匂いを出すのだと言います。しかも、誘引されるハチというのが青虫くんに卵を産み付ける寄生バチであるとは。敵の敵は味方ということではありますが、いやあ、怖いですなあ。

 

 

ところで、2階の回廊の展示はこんな感じです。「生きもの上陸大作戦」として、当初は海中に暮らした生物たちが上陸することで多様性が格段に広がりを見せる、そんなあたりを歴史の流れでなぞって見せてくれておりますよ。

 

そんな中で目を止めたのが「手はどうやってできた?」という解説。水中での行動する限りでは便利この上無しとヒレが出来ていったのでしょうけれど、上陸した生きものはさらに陸地での適応としてヒレを手に変えていくのですよね。

 

 

左側の四角囲いの一番下にユーステノプテロン、およそ3億8500万年前の魚類のひとつだそうですが、そのヒレの根元にある骨を見ますと(図示されているを辿ってみているからかもですが)、なるほどこの部分がは前腕骨になり、また指に分化していったのであるなと思えてきたり。それにしても、ヒトの五本指に落ち着くまでの間には8本指の動物(3億6500万年前のアカンソステガなる初期の四足動物とか)なんつうのもいたのですなあ。

 

ということで、JT生命誌研究館の話がすっかり長くなってしまいました(実はまだ書きたいことがあったも…)ですが、大阪・高槻を訪ねて億年単位ほどではない歴史の話へと引き戻すことにいたしましょうかね。