戦 術 | ナベちゃんの徒然草

ナベちゃんの徒然草

還暦を過ぎ、新たな人生を模索中・・・。

今年も熱戦が繰り広げられている、夏の甲子園。

 

数々の名勝負や名場面を生み出してきたその甲子園で、今からちょうど30年前の今日・1992(平成4)年8月16日・・・日本中に大論争を巻き起こした試合が行われました。

 

後に巨人やヤンキースの主砲として大活躍した松井秀喜選手が5打席連続敬遠された、その

 

 明徳義塾 vs 金沢星稜

 

の一戦を、高校野球ファンならずともご記憶のことでしょう。

※その試合の模様と反響を、こちらの動画でご覧ください。

 

 

敬遠策が的中してか、結果的に金沢星稜は2-3で敗退。

 

しかし勝利を収めた明徳義塾も、試合直後から凄じいバッシングを受けたことが精神的な負担となったのでしょうか、次の試合を落として甲子園を去っていきました。 

 

    

 

実はプロ野球で活躍する一流選手って、高校時代に大なり小なりこういうエピソードを残した人が多いんです。

 

例えば元巨人のエース・堀内投手は、高校時代あまりに対戦相手が打てないので、わざと四球を出しては牽制で走者をアウトにして遊んだとか、あるいは横浜大洋ホエールズの主砲だった嘗てのホームラン王・田代選手も、無死満塁で敬遠されたとか。

 

ただ、この試合は地方予選や練習試合と違って、晴れの甲子園が舞台。

 

〝ゴジラ〟というニックネームがつけられ全国的に注目されていた松井選手が5打席連続敬遠され、しかも星稜が敗退。

 

なおかつ当時の牧野高野連会長が、暗に敬遠を批判するコメントを発したことも、騒動に拍車をかけたような気がします。

 

また主催の朝日新聞社を中心に、松井選手を〝悲劇のヒーロー〟、明徳義塾を〝ヒール役〟にしようという (偏向) 報道も目につきました。

 

当時盛んに言われたのが、「高校生らしくない」 という批判。

 

しかし率直に申し上げて、私はこの 「高校生らしく」 という言葉に違和感・・・いや、嫌悪感すら覚えます。

 

これってどういう意味なんでしょう?

 

牧野会長が言っていたように、それは 「正々堂々と」 真向勝負することなのでしょうか。

 

でも〝敬遠〟は戦術のひとつであり、ルール違反ではありません。

 

真剣に野球に取り組み、甲子園に行くことを夢見て日々辛い練習に明け暮れる選手たちが求めるもの・・・それは〝勝利〟です。 

 

野球王国・四国の代表として地元の期待を一身に背負い甲子園で戦うチームの監督が、勝つために最も確率が高いと考えた戦略が松井選手の敬遠だったならば、それは尊重されるべきだと私は思います。

 

(もし真っ向勝負して打たれて負けていたら、おそらく馬淵監督は逆に 「無策だ」 と地元ファンからボロクソに言われたかも・・・。)

 

また、「教育的見地から望ましくない」 という方もいらっしゃいました。

 

でもルール違反を犯したわけでもないのに批判を繰り返したマスコミや、試合中メガホン等をグラウンドに投げ入れてそれを選手に拾わせたり、明徳義塾ナインに対し 「帰れ」 コールを繰り返した観客の行為そのものの方が、余程教育上好ましくないでしょう。

 

    

 

毎日の練習や試合から、チームワーク・協調性、そして勝利の喜びと敗北の悔しさを学ぶことこそが教育だ、と私は思うのですが・・・。

敬遠策を批判した人の多くは、単に注目していた松井選手のバッティングを見ることが出来なかったことに怒り、後付けでもっともな理由を付けただけなのでは?

 

この試合について詳しく知りたい方には、松井選手や馬渕監督ら関係者のインタビューをまとめたこの書籍のご一読をお勧めします。

 

 『甲子園が割れた日』 (中村 計・著 新潮社・刊)

 

      

 

試合に出場した明徳義塾の選手は、同書の中でこう述べています。

「僕が何より嫌だったことは、監督が非難されること。
あの(チームがリードしている時は松井を敬遠する)作戦に対して、え?って思ったヤツは一人もいない。
僕らも勝ちたいですもん。 
監督のエゴの犠牲になったみたいな見方は全然違う。
(でも)そういう人たちに一々反論してもしょうがない。」

 

・・・さて、最後に質問です。

もし皆さんが明徳義塾の監督だったら、真っ向勝負させますか? それとも黙って一塁を指差しますか? 
野球ボール

 

 

              人気ブログランキング