83 年録音。ポール・ヒリヤー時代のヒリヤード・アンサンブル。ウィリアム・バードの三声、四声、五声のミサ曲を中心に、4曲のモテット、預言者エレミアの哀歌(五声)、光と日なるキリスト(五声)、天に喜び地には歓喜があふれ(五声)、アヴェ・ヴェルム・コルプス(四声)を加えた一枚です。当盤の翌年、タリス・スコラーズのバード作品集には三曲のミサにアヴェ・ヴェルム・コルプスが加わったものが登場しました。女声も加わり多彩な効果をあげるタリス・スコラーズに対して、バード時代の編成、基本は男声のみで構成されたヒリヤード・アンサンブル。その高域の鍵はカウンター・テノールが握ります。ここにはディヴィッド・ジェームズ。その特徴的な声質がアンサンブルの個性となっています。オリジナル・メンバーであったポール・エリオット(テノール)、ポール・ヒリアー(バリトン)に、リー・ニクソン(テノール)、ジリアン・フィッシャー(ソプラノ)、マイケル・ジョージ(バス)。ジリアンは五声のミサ、2曲のモテットへの参加です。バード作品では双璧ともいえる内容となっています。イギリス、エリザベス朝時代。エリザベス1世の庇護を受けて活躍した音楽家。王室の礼拝堂ではトマス・タリスと同僚となりました。この時代はイギリス国教会というイギリス独自の教会制とカトリックが混在していました。バードはカトリックであったため中央から離れることになりました。微妙な立場にあって、英語ではなくラテン語の宗教曲なのです。地方に逃れたカトリックを信仰する貴族の庇護もありました。エリザベス1世も比較的、寛容であったために、弾圧の強化以前、バードがイギリス国教会で働く余地もありました。
 のちのECM録音。とくにペルト作品や、サクソフォーン奏者のヤン・ガンバレクとの共演など、現代との接点をもち、音楽性をも変化させていき2014年には、その歴史を閉じていきました。イギリスの声楽アンサンブルらしい声へのこだわり。EMI録音はルネサンスへの特化があり、古くから録音も多かったバード作品に新しい光があたることになりました。デュファイ、ジョスカン、ダンスタブル、オケゲムに加えバード作品集もアンサンブルを代表するものです。


 


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