2008年録音。コパチンスカヤのベートーヴェン、ヴァイオリン協奏曲です。二つのロマンスに、作品番号のないハ長調の断章をあわせています。コパチンスカヤの録音はファジル・サイとの共演にはじまりました。ベートーヴェンのクロイツェル・ソナタに、ラヴェルのソナタ、バルトークのルーマニア民俗舞曲という組み合わせでした。同じ組み合わせのもと2022年にはブラームス、ヤナーチェク、バルトークの作品を取り上げています。古典的な曲目と、モダンを組み合わせるという趣向のものでした。ベートーヴェンの協奏曲は2007年のデビュー盤に続く第二段のものです。二作目にして、三大ヴァイオリン協奏曲を取り上げるのも豪胆です。新しい感覚に満ちた、人によっては眉をひそめるであろう演奏は、よく言えば自由度が高い。奏者の感性が全編に満ちたものとなっています。使用楽器はガット弦に張り替え、ヘレヴェッヘ指揮のシャンゼリゼ管弦楽という時代楽器を使用した時代楽器を使用しています。時代考証をとりいれた衒学的なものではありません。前衛的にさえ聞こえる奏者の感性は演奏自体に引き込む内容です。三大ヴァイオリン協奏曲の一角。残りのメンデルスゾーン、ブラームスとなると入れ替わることがあります。ベートーヴェン作品は不動のものです。ピアノ協奏曲はほとんど自身のピアノで演奏されました。しっかりと書かれた管弦楽パートに独奏の名技という構成です。ヴァイオリン協奏曲の趣向は独奏楽器の名技披露の面は後退しています。中期の充実期の最中にありましたが、いわゆる柔のベートーヴェンです。同時に、抒情的な表現と管弦楽の交響的な響きの調和はかなり難しい。指揮者にも交響曲を演奏するのと同様のものが求められるとされます。ロマン時代の名技披露のヴァイオリン協奏曲は、独奏に焦点が結ばれました。伴奏は簡単な形態を取ることが多い。ベートーヴェンの作品では管弦楽のうちにもあるヴァイオリンという楽器が突出するのではなく共に響きを生み出すのです。当盤ではコパチンスカヤが自由に飛翔する部分で協奏曲の華やかな部分を今一度、確認することができるでしょう。

 

この個性が引き立ったもののためにデビューに近いところのベートーヴェンが許容されます。カデンツァはピアノ販に基づいたものでコパチンスカヤ自身が作成しました。ガット弦、時代楽器の奏法に馴染むために、後半では管弦楽パートに混じって弾くことも行いました。時代楽器のものでも新しい感性に対応することができるものです。

 


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