Half bloom(3) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

駅から自宅まで5分ほどだけれど

 

柚はなんとなく緊張していた。

 

自然と言葉が途切れる。

 

マンションが見えてきた。

 

「・・ここ、です。」

 

柚は立ち止まった。

 

「ほんと。 駅から近いね。 雨でも走っていけばだいじょぶなくらい、」

 

成は笑った。

 

「・・はい・・」

 

 

どうしよう。

 

お茶でも飲んでいってもらったほうがいいかしら。

 

でも

 

ひょっとして。

 

胸の前でぎゅっとこぶしを握ってうつむいた。

 

すると

 

「じゃ。 またね。 今日・・一緒に花火見れて楽しかった、」

 

成は小さくバイバイと手を振った。

 

「あ・・、ハイ、」

 

「中入るまで見てるよ。」

 

そう言われて

 

「・・ありがとうございました。」

 

ふわっと頭を下げてなんとなく歩いてマンションのエントランスを入った。

 

後ろをチラっと見ると、笑顔の彼が見ていてくれてる。

 

柚はようやく安心したように笑顔で

 

「・・おやすみなさい、」

 

そう声をかけることができた。

 

 

部屋に帰って、壁に立てかけてある鏡の前にぺたんと座った。

 

 

自分の思いを

 

打ち明けて。

 

・・キスして。

 

 

今日一日あったことをぼんやりと思い出していた。

 

彼のことを思うと

 

胸がグッとなって

 

たまらなくなって。

 

自然と涙がはらはらと零れた。

 

 

 

なんか。

 

いい人オーラ出しすぎちゃったな・・

 

 

一方、電車に乗りながら成は成で落ち込んだ。

 

明らかに。

 

家まで送る

 

と言った時、彼女は一瞬ものすごく警戒したような目で見た。

 

おれのこと

 

好きって言ってくれたけど。

 

やっぱり

 

 

彼女の身体のことを思う。

 

いや、ホントにあんなにキレイな浴衣姿で夜一人で歩かせるなんて危なすぎる!

 

と思ってそうしただけで。

 

下心なんか。

 

・・なんか。

 

 

身体の傷はもちろん

 

心の傷も相当深いんだなあ。

 

癌の再発に怯えながら。

 

いや、一時は死にも直面して。

 

5年生存率が50%と

 

まだ20代半ばの女の子がそんな運命にぶち当たって。

 

恋人からは別れを告げられ

 

悲しむ親を見て、また悲しむ。

 

 

車窓には夜の光が流れ。

 

 

夢みたいに嬉しかったはずなのに。

 

なんだか不思議に切ない。

 

 

「あ、ゆーちゃん。おはよー、」

 

月曜日、事務所のビルのエレベーター前で柚はまひると神崎が一緒に出勤してくる所に出くわした。

 

「あ・・、お、おはようございます。」

 

なんだか二人の顔が見れなかった。

 

「今日の研修会。 長くなりそうだねー。 税務署の人、話長いから・・」

 

まひるはいつものように明るかった。

 

「寝ないで聴いていなさいよ、」

 

神崎が笑う。

 

「寝ませんよ・・。 失礼な、」

 

「片桐さんは。 体調はどう? 無理しないでしんどい時は言って下さいね、」

 

優しい言葉を掛けられて

 

「・・ありがとうございます、」

 

複雑な思いで静かに頭を下げた。

 

彼女の心の傷を思い成はそれ以上は踏み込めずに・・

 

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