「・・本当にご迷惑をおかけして・・」
彪吾の母は気まずそうにやって来た。
「いいえ・・ウチは構いません。 逆によそ様のおうちのことに首をつっこむような形になって申し訳ないです・・」
ゆうこは彼女に紅茶を淹れて来ながら申し訳なさそうに言った。
「彪吾。 帰るわよ。 ご迷惑でしょう、」
しかし彪吾は
「ヤだ! 帰らない!」
ソファでクッションを抱きしめて子供のように駄々をこねた。
「だいたい! どうして志藤さんのお宅に?」
怪しむ彪吾の母に
「あ、あの。 あたし水上くんと学校のクラスも塾のクラスも同じで。あたしが進路に悩んでる時も相談に乗ってくれたんです。で、今度は水上くんが進路に悩んでいるって言うので・・あの、」
ななみは勇気を出して仲介した。
「・・知ってます。 志藤さんは学校でも塾でもそれはそれは勉強ができる子だって有名ですから。それでも。 これはウチの問題なので、」
頑なな母に
「あ、あたし。 医者になりたいんです。」
ななみはさらに勇気を出して言った。
「は・・?」
意外そうに見やる彼女に
「そう言ったら。 水上くんが、おうちの病院の先生を紹介してくれて。お話を聞かせていただいて。とてもタメになりました。水上くんは医者にはならずに将来はIT企業を立ち上げたいって言ってます。おうちの病院のシステムももっと便利なものにしたいって言ってました。他の病院との連携がすぐに取れるように、患者さんがスムーズに診察が受けられるような・・システムを開発したいって。ホント、すごいことだと思います・・」
話し始めたら止まらなくなってしまった。
「お医者さんも素晴らしいお仕事ですけど。 水上くんはちゃんと患者さんのためになる仕事を考えてます。だから・・」
シーンとしてしまい、思わずハッとした。
「・・すみません、」
そして小さな声で彪吾の母にそっと頭を下げた。
また水を打ったように静まり返るリビング。
そこにひなたが思いっきりせんべいを食べる音が響き渡る。
「・・ちょっと、ひなた・・」
ゆうこは慌てて小突いた。
「・・なんか。 中学生なのに。 ななみも・・水上病院も。 すごくない? あたし中3のころこんなに考えてなかった・・」
いつものように思ったことをそのまんま口にした。
「は・・?」
彪吾の母は思わず聞き返した。
「あたしは。 高2になってようやく栄養士になりたいなーって考えるようになって。でも・・正直、ふんわりなんだけど!どうやったらなれるのかとかもよくわかんなかったし。 ひょっとして無理かも・・なんだけど。 でも。 パパもママもすごく協力してくれる。たぶん・・どうせダメだろうって思ってると思うんだけど。 あ、あたしはななみと違って全然勉強できないし、大学だってどうなの?って感じなんですけど。」
ひなたは一人でアハハと笑った。
彪後の母親がやってきましたが険悪な空気の中やはりひなたが・・
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