英国盲導犬協会から

一時預かりをしていた

盲導犬候補生の仔犬

(月齢8か月)が

パピーレイザー(犬が

訓練学校に入るまで

一緒に生活して

『人との生活』の基本を

教える役割のこと、

旧称:パピーウォーカー)

の元に帰っていきました。

 

引継ぎを兼ねて

パピーレイザーさんと

雑談の運びになり

「この子は我儘というか・・・

自分が一番じゃないと

嫌なところがあるんですが・・・

お宅のワンちゃんとは

そこらへん大丈夫でした?」

 

「ええ、大丈夫でしたよ」

 

わが愛犬アーシーは

そういう時

すすんで身を引く

性格の持ち主で、

飼い主としては

歯痒い場面もあるものの、

無駄に喧嘩っ早い犬よりは

こういう犬のほうがなんぼか

扱いやすい、というのが

最近の私の偽らざる本音です。

 

 

まあ今回預かった

8か月ちゃんも

『喧嘩っ早い』というのとは

またちょっと違うんです、

何だろう、とにかく

何事においても

自分が事象の中心に

存在したい、みたいな・・・

 

自分の好むことを

自分の好むやり方で

ひたすら手に入れたい、

みたいな・・・

 

でも訓練時における

理解力は高い。

 

これは普段生活を

共にしている

パピーレイザーさんの

手腕でしょう、と

「家でうちの犬と

遊んでいる時なんかは

仔犬らしい無遠慮さが

目立つ時もありますけど、

リードをつけて街を歩くと

びっくりするくらい

いい子になりますよね。

ここまでのご育成、

お見事だと思いますよ」

 

「あら、そう言って

もらえると嬉しいです、

実は私もこの子の育成では

色々面くらっている

ところもあって・・・」

 

「たしか以前も盲導犬候補生を

育成なさっていて、この子が

パピーレイザーとして

担当をなさっている

2頭目か3頭目なんですよね。

その頃とは協会側の

育成方針もかなり

変わったんじゃありませんか。

ほら、『ノー』と言うな、とか」

 

「そうなの!以前とは

本当に色々なことが

異なっていて、

それにこちらが

適応するのも大変で・・・」

 

「ですよね、わかります」

 

「ところでこの子、無事に

盲導犬になれると思います?」

 

「えっ、私はこの子は間違いなく

盲導犬になる資質を備えた

仔犬だと思っていましたが」

 

「本当にそう思います?」

 

「な、何故重ねて

お尋ねになるんです?

前に育成を担当した仔犬は

確か無事に訓練学校に

入ったんですよね?

その犬と比べて

気になる点でもあるんですか?」

 

「ええ・・・ちょっと・・・

その、何ていうのかしら、

仔犬だから悪戯をしたり

聞き分けがなかったりするのは

ある程度は仕方のない

ことなんですけど・・・」

 

「ことなんですけど?」

 

「他の仔犬に比べこの子には

罪悪感がないと思うの。

悪いことをしてもそれを

悪いことだと感じない。

まったくもって。

それって盲導犬の

資質として

どうなのかしら?」

 

・・・罪悪感を

微塵も感じない仔犬が

盲導犬協会に所属していて

良いはずがないのです・・・!

 

 

 

 

というのは冗談としても

私はこの

パピーレイザーさんの言葉に

納得してしまった面もあり。

 

何でしょうか・・・

 

たとえば仔犬がアーシーに

じゃれつき過ぎて

明らかにアーシーが

嫌がっている時、

私が間に入ると子犬は

じゃれつきの対象を

素直に私に代えるんですが

頃合いを見て私が

場から離れると

またアーシーに

ちょっかいをかけ始める。

 

アーシーが仔犬を無視したり

仔犬に怖い声を出したり

噛みつく真似をしても

仔犬は全くへこたれない。

 

仕方ないのでアーシーが

唸り声をあげながら仔犬を

甘噛みしても仔犬は

「キャー!迫真の演技ー!」

みたいな感じで全然退かない。

 

こうなったらもう

最後の手段として

仔犬とアーシーを

別の部屋にそれぞれ

入れるしかなかったのですが、

この時の仔犬の心理を

『罪悪感の欠如』という

言葉でまとめると

それは通りがいいような・・・

 

ちなみにパピーレイザーさんが

仔犬を連れて帰った後に

夫とこの話をすると

夫はしみじみとした口調で

「なるほどあの仔犬には

罪悪感がない、つまりあの子は

サイコパスってことですね」

 

 

 

 

「君、預かり物の候補生に

よりにもよってなんてことを」

 

アーシーは悪いことを

しているのが露見すると

人から目をそらすのですが

あの仔犬は何やら悪さをしながら

気後れすることなく真っすぐに

こちらの目を

見詰めることのできる

(そして堂々と悪さを続ける)

肝の太さを持っていたのです。

 

 

・・・これは将来の

盲導犬として

行く末頼もしい資質なのか

不安になるべき性質なのか。

 

興味深いところです。

 

 

考えていくと

仔犬の罪悪感というのは

どういうところで

生まれるのかな、と

そんなことも気になりませんか

 

現行盲導犬協会教育方針の

「『ノー』を言わない」も

ある程度は

影響しているのかな、とか

 

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