ここ数年、別宅の改築に

打ち込んでいる

わが夫(英国人)の父、

すなわちわが義父

(白色シュレック)。

 

堂々とした石壁、

豪奢な窓枠、雄渾な暖炉、

優美な家具に

使いやすそうな台所、

繊細なジョージアン式

バスルーム。

 

ここに水道さえ

通っていれば・・・!

 

そんなわが義父の

原寸大ドールハウスですが

恐ろしいことにわが義父は

この夏ここに1か月住み込みました。

 

ほら・・・

 

あの方、

 

入院なさったじゃないですか。

 

本宅に比べ別宅は

室内に段差がなく

いってみればバリアフリー、

しかし待って欲しい、

家に入ってしまえば段差はないが

駐車スペースから玄関までは

悪路も悪路、完全未舗装、

というか内装も外装も

まだまだ仕上げが必要なため

いってみれば工事中、

東京だったら間違いなく

『危ないです、

入らないでください』って

看板が出ている足場の悪さ。

 

 

しかも何度も言うように

あの家には水がない、

お洒落な蛇口は

各水場についているけど

あれを捻っても何も出ない

何故なら上水道が

通っていないから!

 

病み上がりの人間には

あまりお勧めしたくない

住環境なんです!

 

家族関係者一同

口を酸っぱくして義父を

止めようとしましたが

あの方はそれで

止まる人ではないのです。

 

あと当時、本宅は

暖房が壊れていてですね、

比較すると別宅のほうが

多少暖かく、しかし

この件についてわが夫は

「僕はずっとずっと

本宅の暖房を直せと

言っていたんですよ。

それを父はずっと

『まったくお前は虚弱だな!

人類の歴史を見てみろ、

人は長いこと全館暖房なしに

健康に暮らしてきたんだ!』

とか言って・・・さっさと

あそこで直しておけば・・・」

 

まあそれはいいんです、

問題は水です。

 

食事を作るにも

トイレを利用するにも

(当時下水は通っていた)

お風呂に入るにも水は必要、

ではどこからどうやって

それを調達すべきか。

 

義母が・・・

 

牛乳瓶や何かに水を詰めて

毎朝毎晩別宅に持ち込んで・・・

 

この状況をわが夫は

『現代の奴隷制度』と

形容したのでありますが

私はあえて

『イネイブラー』という

言葉を使いたい。

 

義母はですねえ、本当に

優しく心が清い、いい人は

いい人なんですけどねえ。

 

ちなみにわが夫は

『イネイブラー』という言葉を

これまで耳にしたことが

なかったようで

「どういう意味ですか?」

 

「・・・『イネイブラー』

『依存症』で検索すると

意味が出てくることでしょう」

 

ネット検索を済ませた夫は

「君って時々本当に

妙な言葉を知っていますし

辛辣なことを言いますよね」

 

「仮にも義理の母に対して

言い過ぎだったろうか、私は

義母のことは好きなんだが」

 

「いや、何が辛辣って

君の言っていることはたぶん

その通りなんですよ・・・」

 

色々あって義父は

別宅での生活を

1か月で切り上げ

現在本宅で暮らしていて、

懸案の漏水に関しても

業者を雇うことに

合意したらしいのですが

・・・新たな問題としては

業者がなかなか見つからず・・・

 

「しかしまあ夏場でよかった。

これが冬だったら大変だ」と

義父が言っている、という

情報が入ってきているのですが

お義父様、世間は

もうそろそろ秋です・・・

 

 

こうなると英国は

つるべ落として冬が来ます・・・

 

スリルに満ちた

わが嫁ぎ先の生活です。

 

 

本宅の台所のカビが消え

シャワーとトイレが

使えるようになったら

私はご挨拶に

伺いとうございます、と

いうのが現在の私の立場です

 

嫁としてこの態度は

正しいのか

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