本日2回目の更新です。
昨日、岡田准一さん主演の映画『燃えよ剣』を見てきました。
原作は司馬遼太郎さんの『燃えよ剣』。
新撰組副長 土方歳三を主人公にした小説です。
中学3年生の時にこの小説に出会い、一気に土方歳三ファンになった私。
以後、新撰組に関する本を読みまくりました。
土方さんが好きすぎて『上方文化の歴史』の「上方」までもが
「土方」に見えて足を止めていました。
大学時代にはファンクラブに入会。
新撰組の屯所だった壬生寺でのミーティングに参加したりも。
土方さん最期の地、北海道の五稜郭に行った時には感無量でございました。
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そんな私ですので『燃えよ剣』が映画化され、
しかも土方さんを演じるのが岡田准一さんだと知って、小躍りしました。
肖像画の土方さんと岡田准一さん、似ていますもん。
見たい、見たい、見るぞー!!
ということで映画館へ。
まず、結論から先に言うと、
これまで新撰組ものはたくさん見ましたが、
岡田准一さんは土方さんそのものに見えました。
映画全体の感想としては、
エピソードのつぎはぎ、パッチワーク的な感じがしないでもなかったです。
とはいえ、新撰組は6年間しか存在しなかったものの、
激動の幕末において、あれもこれもエピソードがありすぎます。
しかも原作通り土方さんが石田村のバラガキ(悪ガキ)だった頃から
描こうと思ったら時間がいくらあっても足りなかったのでしょう。
鳥羽・伏見の戦いなどは、さささっと終わってしまっていました。
この映画は元々新撰組や幕末について、
ある程度知識があることを前提に作られているのかなぁ……
原田眞人監督の映画、同じく岡田准一さんが主演だった
『関ヶ原』でも、私は同じことを思っていました。
だとしたらこれは原田監督の特徴なのかもね。
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それから、ストーリーには関係ありませんが、
「真逆(まぎゃく)」というセリフがあったのには びっくり。
真逆ってここ平成になってからの言葉ではないですか?
昭和の時代は「正反対」と言っていました。
江戸時代にはなんと言っていたのやら。
とりあえず「真逆」はないでしょうよ、と、
そこの場面では思わず心の中でツッコミを入れてしまいました。
じゃあ、不満だったのか、と聞かれると、とんでもない。
見に行って良かったと満足しています。
満足度が高かった最大の理由はキャスティングでしょう。
私が勝手に描いていた人物イメージと、
実際に演じている俳優さんのイメージがぴったりの方が多かったのです。
自然と映画の世界に引き込まれていきましたよ。
覚えている範囲で、個々の感想を。
俳優さんのお名前の敬称略で失礼します。
●土方歳三:岡田准一
鍛えられた体で、アクション(時代劇では殺陣)はもちろん、
乗馬もOK,、演技もできる。
もう岡田さんは俳優一本でいいのじゃないかしら?
映画は土方さんの語りから始まります。
独白?と思ったら、新聞記者か何かに取材を受けているのです。
すでに洋装で「キャー!!やっぱり写真で見る土方さんそっくり!」
ということで、全編通じて、うっとり見ていました。
●近藤勇:鈴木亮平
体格といい、顔つきといい、これまた、イメージぴったり。
ただ、鈴木さん自身は大河ドラマ「せごどん」で
薩摩藩の西郷隆盛を演じており、そのイメージがあるのに、
敵だった新撰組の局長役を引き受けていいものか、迷ったそうです。
確かに。
でも、田舎道場の朴訥な主人から、
最後は政界にも顔を出せるまでになった近藤さんの成長(?)を
演じる役者としての力はもちろん、
土方歳三、沖田総司と並んだ時の絵面も良くて、
この役を引き受けてくださってありがとう!と思いました。
私が労う筋ではないんですけども。
●沖田総司:山田涼介
ジャニーズHey Say Jumpのメンバーです。
映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で拝見したことがありますが、
あれは現代劇でしたし、現実の山田さんとそんなに距離感がない役でした。
が、時代劇ではどうなのか?と思っていましたが、全く違和感なし。
山田さんの力まないセリフ回しは、
きっと総司はこんな喋り方だっただろうと思えました。
ちなみに結核でどんどん衰弱していく総司を演じるため、
岡田准一さんに教えてもらった減量法で7キロ痩せたそうです。
その減量方法を教えていだたきたい!!
●芹沢鴨:伊藤英明
芹沢鴨というと、鉄扇でべしべし物を殴って破壊し、
お金も女性も力づくでもぎ取る乱暴な酒乱、というイメージでした。
つまり主役ではなく、敵役です。
これまで見たことがあるドラマなどでも
どちらかというと脇を固めるタイプの俳優さんが演じておられたような…。
伊藤英明さんは主役を張れる人であり、イケメンでもあります。
どんな芹沢さんになるのかと、思ったけれど、
意外ですけど、芹沢鴨でしたわ!!
監督は伊藤さんに「粗暴だけれど品もあって教養もある、
子供みたいな純真さもある」芹沢像をと、求められたそうですよ。
そもそもただの乱暴者であれば、仮にも局長にはなれなかったでしょう。
私は、芹沢鴨が自分の弟に似ているから、という理由で
沖田総司を可愛がり、肩を抱きながら歩いていたシーンが好きです。
●お雪:柴咲コウ
お雪さんは司馬遼太郎さんが創作した架空の人物です。
柴咲コウさんはちょっと違う気もしたけれど、
じゃあ、他の誰だったらいいか、と聞かれたら答えられません。
土方さんファンの私にとっては恋敵(?)なので、
点が辛くなっているだけかもね。
原作『燃えよ剣』では、鳥羽・伏見の戦いで大坂に敗走した土方さんが
上町台地に今もある「口縄坂」の上から
お雪さんと共に大坂湾に沈む夕陽を見る場面があるのです。
私は数年間 大阪市中央区に住んていたことがありました。
ある日、上本町六丁目(通称 うえろく)で買い物をした帰りに、
近道をしようとして偶然この坂を発見、大興奮。
「ウォー!!これが口縄坂!!ここから土方さんは夕陽を見たのね!!」と。
そのシーンがあるかなーと期待しておりましたが、ナシ。
そりゃそうか、今は口縄坂から見えるのは高速道路と
マンションやビルだけだものね。
●会津藩主 松平容保:尾上右近
激動の時代にあって、誰が見ても損な役回りである
京都守護職を引き受け、最後まで信義を貫く松平容保公。
最近色々な媒体でご活躍の尾上右近さんが演じましたが、
映画は意外なことに初出演なんですって。
日本舞踊の名手でもあるためでしょう、
和物の立居振る舞いが自然で、風格を感じさせました。
監督は松平容保を、新撰組の単なるスポンサーとは描いていません。
パンフレットによると、同じく司馬遼太郎さんの作品で
松平容保を主人公とした『王城の護衛者』も盛り込んだそうです。
そういえば、徳川慶喜が容保公に京都守護職を引き受けさせるとき
「王城の護衛者になってほしい」って言うてましたわ!
限られた時間の中で、松平容保はかなり登場し、
強い印象を受けました。
●徳川慶喜:山田裕貴
映画を見ながら私は「この慶喜はヒドイ、ひどすぎる!!」
と憤慨していました。
と言うのが、山田裕貴さんはまず着物が身に沿っていないように見えたし、
歩くときに重心が高すぎてヒョコヒョコしていたのです。
松平容保役の尾上右近さんが、着物の着こなしと言い、
座り方、歩き方、何もかもが完璧なだけに、
その上位にいるはずの慶喜公がこれで良いのか?!
と、不満で不満で。
ところが、パンフレットを読んでみると、
それは山田裕貴さんの責任ではなかったことが判明。
監督の要望が「今までで一番変な慶喜にしたい」。
確かに、今まで見た慶喜の中で一番変でした。(笑)
慶喜が変なぶん、利用された容保公の人格がいっそう優れて見えるという、
そんな効果をねらったものかもしれません。
ということで、山田裕貴さんは演出意図を忠実に体現しておられたのだと、
認識を改めた次第。
徳川慶喜以外にも、新撰組の隊服などにも
監督独自のこだわりが詰まっていました。
やっぱりパンフレットは買って読まないとダメだわ。
あ、パンフレットと言えば、解説を寄稿しているのは
神戸女学院大学名誉教授の内田樹先生。
私は在学中、内田先生に教えて頂いたことはありませんが、
若くてマスコミにも出ておられ、人気があったことは覚えています。
名誉教授になっておられるのね、と、しみじみ。
映画に関係のない話ですみません。
●藤堂平助:金田哲
お笑いコンビ「はんにゃ」の金田さん。
パッと写った瞬間に、おお、これはきっと藤堂平助だなと。
色が白くて着物での立ち姿が粗野ではない金田さんは
大名の御落胤と言われていた藤堂平助イメージにぴったりでした。
お笑いの時の金田さんを知っているけれど、
お芝居も良いんだわ、と思いました。
●山崎烝:村本大輔
お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本さんです。
新撰組入隊の面接の時点で、早口すぎて何を言っているのか、
聞き取るのにひと苦労。
山崎烝といえば、密偵ですよ。
もっと仕事人っぽいイメージなのに、
この人が山崎烝なの?!と、不満で不満で。
とにかくセリフが途切れなく早すぎなのがストレスに。
でも、商人に化けながら人が見ていないときは
抜かりなく目を配っている姿などはなかなか良くって、
だんだんこういう山崎もありか、と許す気にも。
パンフレットには村本さんの言葉として、
新撰組のファンは多く、”山崎”のイメージを僕に壊されて
ムカつく人もいるだろうけど、
クレームは監督に言ってくださいと書かれています。
確かにイメージは壊された😁
●山南敬助:安井順平
イメージが違うといえば、山南さんも私のイメージとは違いましたわ。
私が思う山南さんは、インテリで物静かな人。
この映画の山南さんはちょっと嫌味なやつでした。
それに山南さんって、メガネなんてかけてたの?
●清河八郎:高嶋政宏
●丸十店主:柄本明
●本田覚庵:市村正親
三人まとめちゃってすみません。
三人とも出番は一度だけ、それもすごく短いのですが、
芝居を締めているというか、すごい存在感でした。
●井上源三郎:たかお鷹
「源さん」は、私の中ではすごくおじさんのイメージだったので、
たかおさんの外見はイメージ通りでした。
人斬り集団に、どうしてこんな ほのぼの系の人がいるんだろう、
という感じ。
ただ、源さんが亡くなったのは40歳なのですよ、
ちょっと老けすぎだったかも。
●孝明帝:坂東巳之助
映画『清洲会議』での快演(怪演)を知っているだけに、
表情や動きが少ない孝明天皇役は物足りなかったです。
また別の作品で拝見したい。
新撰組の永倉新八、原田左之助、斎藤一は
カツラなどのビジュアルで誰が誰か判別できましたが、
討幕派の桂小五郎、久坂玄瑞、岡田以蔵、宮部鼎蔵は
池田屋の斬り合いなどに登場するので、
誰が誰か、把握しにくかったです。
この作品には宝塚歌劇団出身の人が二人出ておられます。
まずは元宙組トップ娘役 陽月華は、近藤勇の愛人 深雪大夫。
私が認識できた出番は一箇所だけでした。
女性が4人で香道をたしなみながら会話する場面がありまして、
深雪大夫、お雪さん、あと二人(誰か忘れた)が集まっているのだけど
原作にこんな場面あったかな?と思う唐突な場面でした。
4人の女性のセリフは全て、新撰組や倒幕がどうなるのかなどの状況説明。
時間がなくて端折らざるを得なかった場面の説明だったのかも。
この場面は背景(ロケ地)とともに、違和感がいっぱいでした。
うめちゃん(陽月華)の役が深雪大夫だったというのも、
エンドロールを見て初めてわかったくらいです。
元月組の男役 月船さららは芹沢鴨の愛人お梅を。
確かお梅はお店の女将で、つけを払おうとしない芹沢鴨の元に
お金を払ってほしいと交渉に来て、手込めにされ(書いていて恥ずかしい^^;)
いつの間にか愛人になってしまった人。
映画では、場面を変えて「え?こんなところで?!」という演出に
なっておりました。
むむむむ。
最後にロケ地について。
今回の映画では池田屋とその周辺を完全再現したそうです。
それ以外では60箇所ものロケ地で撮影されたそうなのですが、
世界遺産、国宝、国指定重要文化財など素晴らしい場所ばかりで、
見どころになっています。
見たことがあるゾと思う場所も多数ありました。
私がはっきりわかったのは、西本願寺、長谷寺、
夫に教えてもらったのは吉備津神社でした。
行ったことがある場所を映画の画面で見るとテンションが上がりますね。
取り止めもない感想になってしまいました。
土方さんは34歳で亡くなっています。
土方さんの死をもって新撰組の終焉と考えると、
新撰組はたった6年間しか存在しなかった存在です。
歴史は勝者によって作られるもの。
それなのに、負けた徳川幕府方の新撰組が、
今もなお語り継がれ、小説や映画の題材となるのは、なぜなのか。
こんなにも惹かれるのは何故なのか。
もう一度司馬遼太郎さんの『燃えよ剣』を読み返したくなりました。
また、この映画で、新撰組隊士以上にクローズアップされた
会津中将 松平容保が主人公である『王城の護衛者』も読みたいです。
大好きだった司馬遼太郎さんの作品なのに、
これはまだ読んだことがないので。