みのおエフエム 「図書館だより」
私がパーソナリティを担当している
大阪府箕面市のコミュニティFM みのおエフエムの「デイライトタッキー」。
その中の”図書館だより”は箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介するコーナー。
私は司書さんのコメントの代読をし、そのあと自分の感想も付け加えます。
今日は 福澤徹三さんの『作家ごはん』をご紹介しました。
福澤徹三『作家ごはん』
大学卒業後、出版社に就職した山野内和真。
新米編集者である和真は、還暦過ぎのベテラン作家 竹林賢一郎を担当することになった。
竹林賢一郎はホラーからコメディまで幅広いジャンルの作品を手がけていて、和真は一読者として竹林の作品が好きだ。
ただし編集者の立場からみると竹林は厄介な作家かもしれない。
というのも、竹林がデビューして約30年経つが、出版された小説は20冊。筆の遅い作家といえる。いや、遅いどころか陰では「書かずのチクリン」と呼ばれるほどだ。
和真はなんとかして竹林に新たな小説を書いてもらいたかった。そこで、新任の挨拶を電話やメールで済ませず、竹林が一人で住んでいる高尾の家に訪ねて行くのだった。
そこで和真を迎えてくれたのは、猫のガブと、やたら美味しい料理の数々。竹林が自ら作ってくれる料理はどれもこれも美味しく、ついついアルコールも進んでしまう。
何度訪ねても、新たな作品の打ち合わせはできない。ただただ美味しいものをいただいて酔っ払ってしまう和真だった……
(福澤徹三さんの『作家ごはん』の出だしを私なりに紹介しました)
「書かずのチクリン」は食べることに手を抜きません。
せっかく食べるのなら、おいしい食材をおいしくいただくのがモットー。
そこで全国からおいしいものをお取り寄せしています。もちろん調味料も。
例えば、第一話「書かない作家(旨さに驚くポークソーセージと冷奴)」に登場するのは
山形県鶴岡市特産 枝豆
第二話「センセイと大先生(ビールがノンストップの餃子とモヤシ)」に登場するのは
といった具合。
十話まである『作家ごはん』に登場するおいしいものを全てをここにピックアップするつもりでしたが、それでは本の感想ではなく、お取り寄せガイドになってしまうので、このあたりにしておきましょう。
ともかく、のどかなところに独り住まいしていても、パソコンでポチッとすれば全国からおいしいものが届けられる、便利な世の中であることを満喫している竹林先生なのでした。
それはそれはおいしそうで、つい私もお取り寄せしたくなるのですが、その反面「この小説は単なるグルメガイドなのか?」と少し物足りない気分になってきました。それならムック本で事足りる、小説として読む意味がない、と。
もちろん、その不満はすぐに解消されます。
和真が担当することになった新人作家(作家の卵?) 巣籠ひなも一緒に竹林賢一郎の家を訪ねるようになると、俄然、内容が深くなってくるのです。
「書かずのチクリン」が ひなに語る、小説家としての心構え、読んでおいた方が良い作品、小説を書くための準備などが非常に興味深いのです。
また、和真がひなに教える出版業界の現状もなるほど、と思わせられますし、さまざまなタイプの作家像も「もしかしたら実在の作家さんをモデルにしているのかな?」と考えを巡らせる楽しみがあります。
食事を作ることと、小説を書くことは似ている、というのも面白い発見。
そしてもちろん、編集者 和真もただただ食べて飲んでいるわけではありません。
問題をクリアして成長していく姿も見守ることができます。
ちなみにこのブログタイトルの「旨い。旨すぎるっ!」は、登場人物の1人の決まり文句です。
いろいろな意味で「旨い小説」でした。
私は以前にも、こういう「旨い小説」「おいしい小説」を読んだことがあるぞ、なんだっけ?と思い返してみると、それは『侠飯(おとこめし)』、やはり福澤徹三さんの作品です。
福澤さんは本当に、おいしい料理を美味しく書くのがお上手だと思いました。
『侠飯』の感想はこちらに。
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余談ですが「書かずのチクリン」、表紙のイラストを見るとメガネをかけた和服姿。そのせいでしょうか、私の脳内ではずっと筒井康隆さんがチクリンとして動いていましたよ。
声の書評 stand.fm「パーソナリティ千波留の読書ダイアリー」
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このブログとはまた違うことをお話ししています。
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Stand.fm パーソナリティ千波留の読書ダイアリー #0032
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