源氏イラスト訳【若紫266】尼の死
「立ちぬる月の二十日のほどになむ、つひに空しく見たまへなして、世間の道理なれど、悲しび思ひたまふる」
などあるを見たまふに、
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【源氏物語イラスト訳】
「立ちぬる月の二十日のほどになむ、
訳)「先月(=九月)の二十日の頃に、
つひに空しく見たまへなして、
訳)とうとうご臨終をお見届け申し上げまして、
世間の道理なれど、悲しび思ひたまふる」
訳)世の中の筋道であるけれど、悲しみあれこれ思い申し上げております」
などあるを見たまふに、
訳)などとあるのをご覧になると、
【古文】
「立ちぬる月の二十日のほどになむ、つひに空しく見たまへなして、世間の道理なれど、悲しび思ひたまふる」
などあるを見たまふに、
【訳】
「先月(=九月)の二十日の頃に、とうとうご臨終をお見届け申し上げまして、世の中の筋道であるけれど、悲しみあれこれ思い申し上げております」
などとあるのをご覧になると、
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■【立ちぬる月】…先月。今は十月なので、九月のこと
※【ぬる】…完了の助動詞「ぬ」連体形
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【ほど】…ころ
■【に】…時を示す格助詞
■【なむ】…強意の係助詞
■【つひに】…とうとう
■【空(むな)しく】…シク活用形容詞「むなし」連用形
※【空(むな)し】…はかない。死んでいる
■【見たまへなす】…お見届け申し上げる
※【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
※【たまへ】…ハ行下二段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…謙譲の補助動詞(僧都⇒尼君)
※【見なす】…見届ける
■【て】…単純接続の接続助詞
■【世間】…世の中
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【道理(どうり)】…物事のあるべき筋道
■【なれ】…断定の助動詞「なり」已然形
■【ど】…逆接確定条件の接続助詞
■【悲しび】…バ行四段動詞「悲しぶ」連用形
■【思ひ】…ハ行四段動詞。物思いにふける意
■【たまふる】…ハ行下二段動詞「たまふ」連体形
※【たまふ】…謙譲の補助動詞(僧都⇒光源氏)
■【など】…引用の副助詞
■【ある】…ラ変動詞「あり」連体形
■【を】…対象の格助詞
■【見たまふ】…ご覧になる
※【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【に】…単純接続の接続助詞
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光源氏が、宮中行事で忙しくして
北山へのお見舞いを怠っていた間に
すでに、尼君はお亡くなりになっていたようですね。
「見たまへなす」は、
「見なす(見届ける)」に、謙譲語の「たまへ」がついた複合語です。
『源氏物語』の会話文には
このような下二段「たまふ」の謙譲表現がたくさんでてきます。
しっかり確認して、正確な訳出ができるようにしていきましょうね。