源氏イラスト訳【若紫301】ことあり顔
乳母は、うしろめたさに、いと近うさぶらふ。風すこし吹きやみたるに、夜深う出でたまふも、ことあり顔なりや。
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【源氏物語イラスト訳】
乳母は、うしろめたさに、いと近うさぶらふ。
訳)少納言の乳母は、気がかりなために、とても近くにお控えする。
風すこし吹きやみたるに、
訳)風が少し吹き止んだので、
夜深う出でたまふも、
訳)夜の深いうちに帰りなさるのも、
ことあり顔なりや。
訳)いかにもわけありそうな様子であるよなぁ。
【古文】
乳母は、うしろめたさに、いと近うさぶらふ。風すこし吹きやみたるに、夜深う出でたまふも、ことあり顔なりや。
【訳】
少納言の乳母は、気がかりなために、とても近くにお控えする。風が少し吹き止んだので、夜の深いうちに帰りなさるのも、いかにもわけありそうな様子であるよなぁ。
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■【乳母(めのと)】…少納言の乳母。若紫の侍従
■【は】…取り立ての係助詞
■【うしろめたさ】…心配。気がかり
■【に】…原因の格助詞
■【いと】…とても
■【近う】…ク活用形容詞「近し」連用形ウ音便
■【さぶらふ】…「控ふ」の謙譲語(作者⇒若紫)
■【すこし】…少し(副詞)
■【吹きやみ】…マ行四段動詞「吹き止む」連用形
■【たる】…完了の助動詞「たり」連体形
■【に】…順接の接続助詞
■【深う】…ク活用形容詞「深し」連用形ウ音便
■【出で】…ダ行下二段動詞「出づ」連用形
※【出(い)づ】…出発する。ここでは「帰る」意
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【も】…強意の係助詞
■【ことあり顔】…いかにも何かがあったような雰囲気。ここでは、光源氏が若紫と情事を起こしたかのような雰囲気をさす。
■【なり】…断定の助動詞「なり」終止形
■【や】…詠嘆の間投助詞
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「ことあり顔」というのは、
何か事が起こったかのような様子のこと――。
ここでは、光源氏と若紫が、
いわゆる「男女の関係」を結んだのであろうか
…そのようなそぶりで、光源氏は帰って行ったというのです。
…いや、逆に言えば、
この「ことあり顔」という表記があることで、
光源氏と若紫の間には、
何もなかった――
ということが強調されもしますよね。