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「反グローバリズムの日本国民よ連結せよ!」(前半)三橋貴明 AJER2022.7.26
  

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東アジアの軍事バランスを破壊した最悪の組織 その名は財務省[三橋TV第587回]三橋貴明・高家望愛


https://youtu.be/eagaXDeLccA

 


 ちょっと(いや、かなり?)驚くべき変化です。
「日本の農業は世界に打って出ろ!」
「グローバル化は日本の農業にとってチャンスだ!」
「日本の農業の高い潜在能力が花開く!」
 などなど、散々に日本の農業分野の「自由化」を叫び、農協を眼の敵にしていた山下一仁氏が、「食料安全保障」を言い出した。

コメ増産と同時に「回転備蓄」を 山下一仁氏
 世界的な天候不順や新型コロナウイルス禍などにより、食料の高騰が続く。中でもロシアによるウクライナ侵攻で、不測の事態で食料輸入が途絶えた場合、どのように国民に食料を供給するのか、日本の脆弱(ぜいじゃく)な食料安全保障体制が改めて問われることとなった。令和3年度の日本の食料自給率はわずか38%(カロリーベース)だ。農業や食料需給の問題に詳しいキヤノングローバル戦略研究所研究主幹、山下一仁氏、元農林水産相の森山裕氏、東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏に聞いた。このうち、山下氏の話は次の通り。(後略)』

 自民党の食料安全保障に関する検討委員会の委員長も務めている森山裕議員や、鈴木宣弘先生は、真っ当な(あるいは普通な)論旨で日本の食料安全保障崩壊と対策を語っているのですが、何と「あの」お花畑グローバリスト(という印象しかなかった)山下氏までもが食料安全保障について語っている。しかも、かなり危機感をもって。


 山下氏によると、農林水産省が発表した今年のコメの生産見通しは、675万トン。シーレーンが途絶すると、国民の半分の需要しか満たせないとのことです。


 ならば、どうするべきなのか。
 

 山下氏は米を増産し、平時は輸出し、非常事態に備えろという主張で、別に反対はしないのですが、同じことを「世界中の国々」が考えているのですよ。穀物輸出市場は、アメリカのカーギルをはじめ、メジャーのレッドオーシャンです。後発も良いところの日本が「穀物輸出」を目指した所で、「安全保障」に影響を与えるほどには売れないでしょう。


 そもそも国土の性質上、生産性を上げにくい日本の農産物は、基本的には「高い」のです。
「そこは品質でカバー」
 と主張してくるでしょうが、「品質で勝負」では、有事の際に国民を救えるほどの規模、輸出できるはずがありません。少なくとも300万トン規模を輸出しなければならないのです。


 となれば、結局は「価格」です。最低でもアメリカ同様に「再生産価格の補償」により、価格競争力を持つ形で輸出しなければなりません。
 

 と言いますか、あの地平線の向こう側まで農地、といった感じで、無茶苦茶に生産性高く生産されるアメリカの穀物ですら、事実上の「輸出補助金」なしではグローバル市場で勝てないのです。
 

 アメリカは、農家の再生産を可能とする目標価格と市場価格の差を補填する不足払い制度を採用しています。しかも、国内需要向けはともかく、輸出向けまで補填しているため、事実上の輸出補助金です(WTO違反です)。ところが、アメリカは、
「いや、別に輸出農家のみならず、国内向け農家にも補填しているわけだから、別に輸出補助金じゃないだろ」
 という「ジャイアン」な理屈を貫いています。日本に、同じことができますか?

 

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第四十二回「皇統論 藤原純友の乱」「歴史時事 サラーフ・アッディーン」がリリースになりました。
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 日本が本気で「コメを大々的に輸出!」としたいならば、政府が目標価格と(ダンピングした)輸出価格の差を補填しなければなりません。当然、激怒したアメリカから凄まじい圧力(何しろ、ジャイアン)が来ますが、日本の政治家がそれを跳ね返せますか?


 残念ながら、「できるわけがない」というのが現実なのでございます。
 

 ちなみに、山下氏は食料安全保障強化のために、
「生産を増やすだけでなく、備蓄も合わせて行わなければいけない」
 と、これまたごもっともなことを言っていますが、「誰」がやるのでしょうか。当然、政府ですよね。

兵糧攻めの対策が最大の国防 鈴木宣弘氏
(前略)例えば、近年は米価が一俵当たり約9千円にまで落ち込んでいるが、農家が採算を取るには少なくとも1俵当たり1万2千円で売れなければならない。その差額分の3千円を政府が補塡すべきだ。主食用米700万トン分の差額を補塡するには年間約3500億円の予算が必要と試算する。
 この予算要望を、財務省は農林水産予算のシーリング(天井)が2・2兆円で決まっていることを理由に一蹴するだろうが、防衛費を5兆円増額するのに比べても負担は小さい。日本が経済制裁を受け、貿易網が封鎖されれば国民は戦う前に飢え死にする。武器などの防衛費に予算をかけるならば、兵糧攻めにならないような対策の方が重要だ。まさに食料、農業を守ることこそが最大の国防になる。』

 結局のところ、日本の食料安全保障を守るためには、「政府」が財政支出をしなければならないのです。とりあえずは、鈴木宣弘先生が主張している「農家の採算の保障」に予算を支出しなければ、コメ農家は次々に廃業し、そして「日本国民が苦しむ」ことになるのです。


 ちなみに、山下氏は最後に、
『政府は防衛費を増額し、武器や弾薬を整備する姿勢を示しているが、戦争の危機が起きた際に装備だけがあっても仕方がない。食料やエネルギーなども含めて、どうやって確保するのか、いわゆる兵站(へいたん)=ロジスティクス=の議論が足りていない。安全保障の議論が省庁ごとに、「たこつぼ化」しているように感じる。日本の安全保障には、総合性が欠けているということを強調したい。』
 と、語っていますが、これには全面的に賛同します。


 今の日本の安全保障をめぐる議論に必要なのは、いわゆる「総力戦」の発想なのですよ、間違いなく。

 というわけで、今週末の三橋経済塾のテーマは「総力戦」。

 

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