第一地域の災害死史観国

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「日本はサプライロスによってデフレ脱却した(前半)」三橋貴明 AJER2025.3.11
  

令和の政策ピボット呼びかけ人に「作家・予備校講師・歴史系YouTuber 茂木誠先生」が加わって頂けました。

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日本のタブー?誰も語らない特別会計批判(?)の起源[三橋TV第992回] 三橋貴明・菅沢こゆき

https://youtu.be/3YEh9Q-XSWM

 

 以前、三橋TV第969回で解説しましたが、日本は梅棹忠雄・文明の生態史観でいえば、「第一地域」、大石久和・「死」の歴史観でいえば、災害死史観という、世界的に稀有な国です。というか、第一地域の災害死史観国は、日本以外に存在しません。

 

 三橋TVでは、以下のマトリクスを使って説明していますね。

 

【文明の生態史観と災害死・紛争死史観】

 

 我々は、西欧諸国同様に、君主制から封建制、議会制、民主制へと権力を分散させていく第一地域に属しています。なぜ、ユーラシアの西と東の端で、同じような文明が勃興したのかは、人類の謎ですが、とりあえず民族はともかく、単一言語、単一宗教の民主制国民国家が成立しています。

 

 それに対し、ユーラシアステップ周辺の第二地域は、とにかく遊牧民の影響が大きく、共同体は専制主義、官僚制、言論の自由の制限といった、いわゆる権威主義国にならざるを得ない。

 

 何しろ、多民族、多言語、多宗教の人々をまとめなければなりませんので、強権的にならざるを得ないのです。そして、まとめなければ、地平線の向こう側からやってくる遊牧民に対抗できない。

 

 そういえば、ヴィザンチン帝国の皇帝は、世俗のトップであると同時に、宗教的な最高権威でもありました。西欧では、世俗のトップ(神聖ローマ皇帝)と宗教的な最高権威(ローマ教皇)が分かれていたのとは対照的ですね。

 

 民族ごとに大主教はいたものの、正教(オーソドックス)のトップはあくまでローマ皇帝(ヴィザンチン帝国皇帝)だったのです。この体制は、ロシア帝国に引き継がれます。

 

 ヴィザンチン帝国にしても、ノヴゴロド公国、モスクワ公国といった国々にしても、ユーラシアステップで暮らす遊牧民から頻繁に侵略された。位置的に、権力の分散など許されなかったのでしょう。

 

 もっとも、ユーラシアステップから離れている西欧諸国にしても、ひたすら紛争、戦闘、戦争です。日本と同じ島国のイギリス(連合王国)にしても、ローマ人、アングル人、サクソン人、デーン人、ノルマン人と、異なる民族から繰り返し侵略された。

 

 ちなみに、イングランド国王に即位したデーン人は、ヴィンランドサーガでお馴染みのクヌートです。クヌートは、現代のデンマーク王室の始祖でございます。

 

 さらに、ヘイスティングスの戦いでハロルド王を打ち破ったノルマンディー公(※フランス)ギヨーム二世のイングランド国王即位が、現代の連合王国の始まりです。チャールズ三世は、海賊の子孫ということでございますな

 

 かように第一地域に属していても、ユーラシア(及びアフリカ)の人々は、常に殺し合いを強いられてきたわけですが、唯一の例外が我が国なのです。

 

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 日本国は、大東亜戦争までは、侵略されたことがない。というか、刀伊の入寇や元寇など、侵略はされるのですが、普通に海岸線で撃退している。

 

 日本がイギリスと異なる道を歩んだのは、まずは大陸との距離が(ドーバー海峡よりは)長い。ドーバー海峡が30km程度であるのに対し、対馬海峡は(間に対馬、壱岐があるとはいえ)200kmです。

 

 さらには、東アジアにはノルマン人(要はヴァイキング)のような元気な連中(というか凶暴な連中)がいなかった。まあ、刀伊の入寇は女真族の海賊でしたが、どちらかというと後世には日本人の方が海賊となり、大陸を荒らしまくっております(いわゆる倭寇)。

 

 そして、日本人は紛争では死なないものの、災害では死ぬ。世界屈指の災害列島で暮らしている我々は、身内を紛争ではなく、災害で失う。

 

 というわけで、日本は「第一地域に属する災害死史観国」となってしまったわけですが、これが「平和主義」と無茶苦茶に相性がいい。

 

 また、大震災といった災害は予知が不可能です。結果的に、日本人には「災害には備えても無駄」という諦観的な考え方が染みついてしまっている。

 

 もちろん、事前の防災は重要ですが、首都直下地震や南海トラフ巨大地震が起きた際に、「死者ゼロ」はさすがにできない。というわけで、日本人には来るべき災厄に対し、諦観を持ってしまうのです。

 

 だからこそ、将来「確実に」発生する大震災に備えるための財政支出を妨害し、膨大な国民を殺すことが確実な緊縮財政が、ある程度の支持を得てしまう

 

 もっとも、確かに大震災を予知することはできないですが、台風等は可能になっています。さらに言えば、敵国の軍隊の侵略は、事前に把握することが可能なのですよ。現代の日本は、災害のみならず、侵略という脅威とも戦わなければならない。

 

ドイツ 基本法の改正法案可決 財政規律緩和で国防費など増額へ | NHK | ドイツ

 ドイツの連邦議会は国防費などを増額できるよう財政規律を緩和するため、憲法にあたる基本法の改正法案を賛成多数で可決しました。

 今後、成立すれば、財政規律が厳しいドイツでも安全保障の強化に向けた動きが加速するとみられます。

 ドイツの連邦議会では18日、基本法の改正法案の審議が行われました。

 法案は2月の総選挙で勝利した「キリスト教民主・社会同盟」と連立協議を進める「社会民主党」が共同で提出し、国防費などの増額ができるよう、基本法に定められた財政規律を緩和するとしています。

 次の首相に就任する見通しの「キリスト教民主・社会同盟」のメルツ氏は「10年以上、私たちは誤った安心感を享受してきた。いま、防衛能力を一から立て直さなければならない」と支持を訴えました。(後略)』

 

 さすが、第一地域とはいえ、地獄の戦争を何度も繰り返してきた紛争死史観国。あっという間に方向転換しました

 

 ドイツは、元々は政府の財政赤字について、GDPの0.35%未満に抑えなければならないと、基本法(憲法)で定めていました。今回の憲法改正は、防衛費のうち、対GDP比1%を超す部分については、上記債務ブレーキの対象外とするというものです。(というか、債務ブレーキを無くせばいいのに・・・)

 

 日本国は、ドイツと同じような方向転換ができるでしょうか。何しろ、世界で唯一と言っていい、第一地域の災害死史観国で、かつ緊縮財政の思想に汚染されている。

 

 まあ、それでもやるしかないんですけどね。日本国を存続させ、我々の子々孫々に「繁栄の共同体」を残すために。

 

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