2022年12月13日

カウアイキング - 輸入名馬列伝

米二冠を制したメリーランド州産の名馬

輸入名馬列伝シリーズ第二十二弾は*カウアイキング。馬産地としてはマイナーなメリーランド州の生産馬で、ケンタッキーダービーとプリークネスSの二冠を制し同州の殿堂入りも果たした名馬です。なおメリーランド州産馬としてダービーを制した馬は同馬を含め2頭いますが、もう1頭の*フォワードパスは1位入線*ダンサーズイメージの失格により繰り上がり優勝となったもので、先頭でゴールを駆け抜けた馬としては唯一の存在となります。また父は歴史的名馬 Native Dancer で、同馬が生涯で唯一敗戦を喫したケンタッキーダービーを制したただ1頭の産駒でもあります。先日紹介した*アンバロイドとは同期ということで、この年の北米クラシックを制した馬がすべて日本で供用されたということになりますね。
*カウアイキング Kauai King

米国産 1963年生 1989年没 黒鹿毛 父系:ネイティヴダンサー系

<血統構成> Sweep 5×3

Native Dancer

USA 芦毛 1950
PolynesianUnbreakable
Black Polly
GeishaDiscovery
Miyako
Sweep In

USA 鹿毛 1942
BlenheimBlandford
Malva
SweepestaSweep
Celesta

Native Dancer は通算22戦21勝、唯一敗れたのがケンタッキーダービーでのアタマ差2着という北米史上有数の名馬で、種牡馬としても父父として Mr. Prospector を、母父として Northern Dancer を出しており、世界の血統図を大きく塗り替えた存在だと言えるだろう。日本にも多数の後継種牡馬が輸入されたが、中でも重賞未勝利ながら名馬オグリキャップを送り出した*ダンシングキャップは有名だろう。母 Sweep In は非常にタフな産駒を複数産んでおり、プリークネスS6着の Inswept が114戦、トラヴァーズS3着の Nimmer が101戦、ステークスを多数制した Pursuit に至っては151戦36勝の成績を残した。

<競走成績>

年 (歳)主な実績
1965年 (2歳)41
1966年 (3歳)1281着 ケンタッキーダービー(USA) D10F
1着 プリークネスS(USA) D9.5F
1着 ガヴァナーズゴールドC(USA) D8.5F
1着 ファウンテンオブユースS(USA) D8.5F
1着 プリンスジョージS(USA) D8.5F
169

2歳時は4戦して1勝とあまり振るわず、ハッチソンSで2着、ジョリエットSで3着に入ったのが目立つ程度だった。3歳になると一気に頭角を現し、ファウンテンオブユースSで重賞初勝利をあげると、さらにそこからステークスを2勝。大本命の Buckpasser が故障、2歳戦無敗の Graustark も骨折で引退と主力級が不在の中、勢いに乗る同馬がケンタッキーダービーとプリークネスSの二冠を達成した。三冠がかかったベルモントSは*アンバロイドの4着に終わった。Buckpasser とはアーリントンクラシックで対戦が実現したが、このレース中に故障を発症し、それが原因でターフを去ることとなった。3歳牡馬チャンピオンの座は Buckpasser に大きく水をあけられてしまったが、後にメリーランド州の殿堂入りを果たしている。

<繁殖馬としての実績>

馬名生年主な実績
ハワイアンジュエル19773着 皐月賞 1980
ブラビオー19771着 関屋記念 1981
オオシマスズラン19781着 京都4歳特別 1981
ブルキング19781着 阪神障害S(秋) 1983

引退後は当時の最高額となる252万ドルのシンジケートが組まれて北米にて種牡馬入りしたが、わずか4年間の供用で英国に移動、さらに2年間種付けを行った後、タイヘイ牧場によって導入され北海道の前川スタリオンステーションにて供用されることとなった。なお海外では海外ではGIII勝ち馬が2頭出ただけであった。初年度54頭から始まった種付け数は年々増加し、5年目には118頭もの牝馬を集めることに成功したが、ブラビオーが関屋記念を、オオシマスズランが京都4歳特別を勝つなど産駒が重賞戦線で活躍しだしたのは80年代に入ってからであり、5年目をピークにあとは減少の一途をたどった。

<カウアイキングの血を引く主な現役競走馬・繁殖馬>

馬名生年備考
カルストンライトオ19981着 スプリンターズS(GI) 2004
コウキ2019中央1勝

ブラビオーは種牡馬入りし、わずか5頭の産駒からクイーン賞を制したスーパーセブンを出し、さらに同馬が母としてカブトヤマ記念など重賞3勝のウインブレイズを出して気を吐いたが、残念ながらすでにその血は残っていない。*カウアイキング自身も母父として重賞4勝をあげたエルカーサリバー(ほかに皐月賞馬ハワイアンイメージも出しているが、これは海外経由)を、母母父としてスプリンターズSのカルストンライトオらを出すなど、母系ではそれなりに結果を残している。カルストンライトオはまだ種牡馬登録が残っているとはいえ、さすがに現在は開店休業状態のようだが、まだまだ未デビューの産駒が残されている。




この記事へのコメント

1. Posted by 狂犬芭蕉 2022年12月13日 22:52
オオシマスズランはクラシック登録がございませんでしたね。
2. Posted by あ 2022年12月14日 17:52
ネイティヴダンサーの産駒の中で競走成績が最優秀だったので高額シンジケートが組まれた納得ですが、それが僅か6年で日本に放出されるとかよほど走らなかったんでしょうね。
ただこの手の期待外れで流れてきたケースだと日本でもさっぱりというのが多い中、比較的成功した方かと。
3. Posted by Organa 2022年12月14日 22:40
高額シンジケートの割にはメリーランド州での供用だったようなので、そのあたりも不利だったのかもしれませんね。
4. Posted by vx 2022年12月15日 07:37
マイナー産地産馬だとは知りませんでした。マイナー産地からNative Dancerを付けに行ったのか、受胎していた繁殖を買ったかした生産者に拍手を送りたいです。
5. Posted by 青雲空 2022年12月17日 00:07
この馬の名前を見るとどうしてもカウアイキング事件を思い起こしてしまいます。
ただの詐欺のダシになっただけででこの馬にとってはとんだ風評被害ですが。
ある意味この馬への期待感の象徴かもしれませんがね。

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