G. あの頃はすべてが 55. 早朝電話 | 地球一人旅

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 55 .早朝電話

 

 翌朝、母に、たたき起こされた。

 

 お子様にあらず。

 いつもは、目覚まし時計で起きる。

 

 「 ナニ、ナニ 、何事!?」 


 「 電話よ。

 五十嵐さんとおっしゃる方。 」


 「 え!?」


 「 安心しなさい。

 怖くない方の五十嵐さん。」

 さすが母上、わかってらっしゃる。

 「 『 早朝、本当に申し訳ありません 』

 って泣き声で謝って。
 『 だいじょうぶ、もう起きてます 』

 そう言っといた、早く出なさい。」

 「了解!」

 電話へ突進。

 「 はい、ぼく 」 


 「 あ、私です、五十嵐啓子です」

 声でわかるといつも言ってるのに。

 しかも、フルネーム名乗る必要ない。

 でも、そんな啓子さんが大好き!

 「 本当に、ごめんなさい。

 こんなに、朝早く。」

 「もう起きてた」 と言いそうに。

 慌てて口を閉じた。

 お互いに、嘘とか言わない。

 たとえ、気配りの嘘でも。

 あの日、そう約束したので。

 「 私、電話する約束を破って…」


 「 破ってないよ、少し遅れただけ。

 それより、今、どこ ?」

 「 呉駅なの」


 「 遠くへ連れてかれるの!?」

 「 あ、違うの、逃げて来たの。

 今は、自由の身。

 ごめんなさい、心配かけて。」 

 

 「自由の身」の言葉が痛々しい。

 「 駅の近くに監禁されてたの ?」

 「 あ、違うの。

 しげしさんが、朝早く広島へ。

 アルバイトか何かで。

 それが、心配だったから。
 ここで待ってればと思って。」

 「 バイトとか予定してないよ。

 いっしょに過ごす約束の日。
 啓子さんの家に迎えに行く気で。」

 「 私もそんな気がしてきて。

 今、6時47分発が出たの。

 通学もバイトもその電車でって。

 今日は、広島には行かなそう。
 ひょっとして、ウチに来るのでは?

 来ないよう、早く電話しないとって。

 でも、いくらなんでも早過ぎよね。 

 お母様、あきれてらしたでしょ ?」

 「 あ、それは全然心配ないら。

 『お母様』 なんてシロモノでも …

 とか言ってる場合じゃない。

 すぐ行く、動かず待ってて。」

 
 「あ、ゆっくりでいいの。

 もう行き違いはないから安心。

 走ったりとか、絶対しないで。

 待つの大好きだから。」

 

 「でも、1秒でも早く会いたいから。

 1秒でも長くいっしょにいたいし。」


 「それは ……

 啓子も同じ気持ちですけど。」

 

 「 うん、じゃ、すぐ行くから」

 電話をきり、大急ぎで出かける準備。

 「 啓子も同じ気持ちですけど 」

 うれしくて、思わず口まね。

 

 啓子さん、自分の事を「啓子」 と。

 今までは、必ず「私」と言ってた。

 なんか、ぼくに甘えてくれた感じ?

 うれし過ぎなんですけど。

 

 大学の女の子で、自分を、

  「 ヨシコも …… 」

 とか、いつも言ってる子がいる。

 「 幼稚園児かよ !」 

 と、いつも、心の中で突っ込みを。

 でも、「 啓子も 」 は、全く別次元。

 身も心もとろけそう。

 ( オイオイ )

 
 オオット。

 今は、ひたってる場合じゃない。

 怪物は、もう起きてる時間。

 啓子さんが逃げたと知り追跡?

 探す第1候補は、ぼくの家?

 第2候補は、呉駅?


 とにかく、急がねば。

 

 「怖い方の五十嵐さんが来た場合。

 ぼくは、S塾にバイトに行った。

 そう言っといて。

 

 そう、母に頼んでおいた。

 もちろん、日曜は塾は閉まってる。


 家を出る前に、最終チェック。

 あわてると、ひどいミスしがち。

 有り金等入れた財布はポケットに。
 靴も、靴下も、左右同じ物。

 啓子さんが笑う、寝グセも消した。


 呉駅に着くまでの注意点。

 1に交通事故、2に尾行。

 よし、出発 !

          

 

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 地 球 一 人 旅 ( 改訂版 )

 

 第一部 しげしの道

 

 A. 天使と悪魔
 

 B. 化け物屋敷
 

 C. ぼくらのアイドル
 

 D. スターダストメモリー
 

 E. 10月のクリスマス
 

 F. 未確認生命体
 

 G. あの頃はすべてが (公開中)

 

 第二部 しげしの旅

 

 1. アジアの純真
 

 2. あの頃のあの国
 

 3. 隣のスーパーレディ
 

 4. ローマンチック
 

 5. 恐るべき姉妹
 

 6. クリーブフィルの妖精
 

 7. 奇跡の雪