4.29.2012

激しい夜と翌朝の朝食のテーブル Apartment 143



ゴールデンウィークというものが始まっているらしいが、 こちらはあいかわらずのホラー三昧。 しかもまたしてもフェイクドキュメンタリー。 どこかのマジメな映画サイトではこれをPOVと呼んでいたが、 そんな高尚なものではなく、 あくまでもドキュメンタリーに擬態したリアリティ追求の技法と言える。 しかしここまで溢れてくると、 後発は進化・洗練を余儀なくされ、 意外によくできているものに出会うことの多い昨今、 本作もカメラの埃などもそのまま、 ラフに撮っているように見せかけて、 かなりの洗練が見受けられる。 むしろPOVと呼んでもよさそうなニューカマーだ。

スペイン製作ではあるがオリジナル言語は英語で、 スペインは 「REC」 以降 ホラーで躍進中だが、 このあたりはマーケットとの関係がリアルに見え隠れする。 その昔、 イタリア製のホラーの多くが英語だったように。

学者風のオヤジと男女、 計3名の微妙なチームが古いアパートにやってくる。 ここでの霊現象を解明するためらしい。 面白いのは、 このウサンくさいはずの3名様が妙にプロフェッショナルで、 どんな場面にも冷静に対処すること。 基本的には科学的なスタンスで、 ここで起こるポルターガイスト現象の解明に努める。 こんな現象は初めてだ、 とか言いながら、 百戦錬磨の手慣れた態度で解明のステップを進めてゆく。 途中で持ち出される除霊機械?にはなぜかモザイクがかかっている。

この家の住人は父親、 4才の少年、 そして反抗期のティーンエージャー娘とこちらも3名。 奥さんは病気でなくなったらしく、 霊は彼女ではないかと推測されている。 科学班が到着するや否や、 不思議な物音、 心霊映像などの霊現象が頻発する。 しかし核心には到達できず、 何か隠されている秘密があるのではないかとチームは父親を問いただす。 素晴らしい女性だったと話していた奥さんとは実は離婚しており、 彼女の死に至る経緯にはイビツなものがあったようだ。

状況に行き詰まった科学班は、 気分転換のつもりで霊能者を呼ぶ。 しかし、 お前は誰だ?との呼びかけに答えたのは霊能者ではなく、十代の娘だった。 降霊を受けた娘は異様な形相で父を投げ飛ばし、 アパートを壊すまでの異常な力を見せるが、 ふと監視カメラを見ると娘は自室で眠っている・・。 そして翌朝、 昨夜の激しいポルターガイスト現象の余韻を引きづりながらも6人は言葉少なく朝食のテーブルを囲む。 このあたりの微妙なユーモアセンスも悪くない。

反抗期の娘が引き起こす心理的な現象?として調査を終えた科学班だったが、 全室のカメラを撤去したあとに何かが起こる・・。 この路線はいま稼ぎ頭だし、 じゅうぶんによくできた作品なので日本公開もありうるだろう。 6月には 「グレイヴ・エンカウンターズ」 公開を控え、 この夏はフェイクドキュメンタリーあるいはPOVのオンパレードになるかもしれない。 乞うご期待。 。




Apartment 143/Emergo (2011スペイン) 日本公開未定 
監督 カルレス・トレンス 脚本 ロドリゴ・コルテス 
マイケル・オキーフ カイ・レノックス フィオナ・グラスコット 
ジーア・マンテーニャ

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