2024年4月29日、5月2日に円買い・ドル売りの為替介入観測がありました。
5月6日現在153.56円まで円高に振れています。
現状の口先介入とドル円についてまとめてます。
チャートはすべてTradingViewを利用して作成しています。
口先介入の警戒レベル
口先介入の警戒レベル一覧
以下は過去の発言から口先介入の警戒のレベルを6段階でまとめまたものです。
レベル | 特徴と発言例 | 重要ワード | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 |
「コメントしない」がコメント |
「コメントしない」 | ||||||||||
2 |
注視のみ。事実・理想を述べるに留まる |
「望ましい」、「注視」 | ||||||||||
3 |
急速な変動を緊張感を持って懸念し始める
|
「急速な変動」、「行き過ぎ」、「緊張感」、「ファンダメンタルズ」 | ||||||||||
4 |
投機的な動きをけん制し、適切な措置(為替介入)を仄めかす
|
「投機的」、「適切な措置」 | ||||||||||
5 |
断固たる措置(為替介入)がいつでもできることを示す
|
「断固たる措置」、「あらゆる措置」、「海外」 | ||||||||||
準備1 | 3者会合を開催 | ー | ||||||||||
準備2 | レートチェックを実施 | ー | ||||||||||
実行 | 為替介入を実施 | ー | ||||||||||
より詳しい説明は、下記記事をご覧ください。
最近の口先介入と出来事のまとめ
2024年2月9日以降の口先介入と出来事
2024年2月9日以降の口先介入をまとめました。
先ほどの表から、現在の口先介入のレベルを私の独断で決めてます。
ドル円レートは、その日の高値です。
日付 | ドル円 | コメント | レベル |
---|---|---|---|
2月9日 | 149.57 | 鈴木俊一財務相「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要。政府としては引き続き市場の動向をしっかりと注視していく」 | 2 |
2月14日 | 150.78 | 鈴木俊一財務相「為替相場の急激な変動は望ましくない」「なお一層の緊張感を持ってみている」 | 3 |
2月28日 | 150.84 | 神田真人財務官「過度な変動はよくない。行きすぎた変動があれば、適切に対応する」「緊張感を持って見ている」「最近の為替の動きはかなり急速だ。災害対応と一緒で24時間365日対応できるよう準備している」円買い介入について問われ「必要があれば適切に対応する」 | 3 |
3月19日 | 150.96 | 鈴木俊一財務相「金融政策の変更を勘案して、経済、金融市場、為替市場についてよく注視していく必要がある」 | 2 |
3月21日 | 151.81 | 鈴木俊一財務相「高い緊張感を持ってこの動きを注視していきたい」「従来通りコメントしない。市場に影響を与えてはいけない」「安定的に推移することが望ましい」 | 1-2 |
3月22日 | 151.75 | 鈴木俊一財務相「引き続き高い緊張感をもって注視している」「為替は、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映して安定的に推移することが重要」「為替相場は市場において決定される」「為替介入の可能性については最もコメントできないことの一つ」 | 3 |
3月25日 | 151.54 | 神田財務官「為替市場の状況は緊張感を持って注視している。円とドルの相場は大きな変動が見られ、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿っていない方向であり、違和感を持っている」「今の円安の動きは、明らかに投機が背景にあると考えている。投機による過度な変動は、国民経済に大きな悪影響をもたらすものであり容認できない。行き過ぎた変動に対しては、あらゆる手段を排除せずに、適切な行動をとっていく」 | 3-5 |
3月26日 | 151.60 | 鈴木俊一財務相「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切に対応を取っていきたい」 | 5 |
鈴木俊一財務相「高い緊張感を持っている。行きすぎた動きにはあらゆるオプションを排除せず断固たる措置をとる」 | 5 | ||
3月27日 | 151.97 | 3者会合 (18時15分) | 準備1 |
神田財務官「最近の円安の進展はファンダメンタルズに沿ったものとは到底言えず、背景に投機的な動きがあることは明らかだ」「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取る」 | 3-5 | ||
鈴木財務相は財務省内で覆面介入の可能性を問われ「何も言わない」と答えた。 | |||
鈴木財務相「行き過ぎた動きにはあらゆるオプションを排除せずに断固たる措置を取っていきたい」 | 5 | ||
3月29日 | 151.50 | 神田財務官「日米のインフレ率の動向や見通し、金融政策、金利の方向性といったファンダメンタルズに照らすと強い違和感を覚えざるを得ない」「為替市場の動向を高い緊張感を持って注視し、行き過ぎた行動に対してあらゆる手段を排除せず適切な対応を取る」 | 5 |
4月2日 | 151.80 | 鈴木財務相「為替はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要で、過度な変動は望ましくない」「為替市場の動向を高い緊張感を持って注視するとともに、行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取りたい」 為替介入の可能性に関しては「一切申し上げない」 |
5 |
4月5日 | 151.75 | 岸田首相「過度な変動は望ましくない」「行き過ぎた動きに対しては、あらゆる手段を排除せず適切に対応していきたい」 | 5 |
4月9日 | 151.93 | 鈴木財務相「為替市場の動向を高い緊張感を持って注視するとともに、行き過ぎた動きに対しては、あらゆる手段を排除せずに適切な対応を取りたい」 | 5 |
4月11日 | 153.31 | 神田財務官「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取る」 | 5 |
鈴木財務相「過度な変動は好ましくない。行き過ぎた動きに対しては、あらゆるオプションを排除することなく、適切に対応していきたい」 | 5 | ||
4月12日 | 153.38 | 鈴木財務相「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除することなしに適切に対応をとる」 | 5 |
4月15日 | 154.45 | 鈴木財務相「為替、しっかりと注視している」「為替相場の動向に対して万全の対応をとりたい」 | 2 |
神田財務官「日常的に、米国を含む主要国の財務官や中銀幹部と頻繁に連絡を取り合っている」 | 5 |
ドル円150円に迫り口先介入開始
150円に迫った2024年2月9日ころからレベル2の口先介入が始まりました。
3月5日頃からは日米金利差の縮小でドル円が崩れ、いったん口先介入が収まりました。
ドル円は3月のマイナス金利解除の期待で146円台まで下落しました。
しかしアメリカの指標(CPI、PPIなど)が堅調であることで米金利が再び上昇し、3月19日の金融政策決定会合後にドル円は急騰し、151円に迫るまで上昇しました。
3者会合開催も三角持ち合い上抜け
3月25日からは口先介入の警戒レベル5の発言が続き、3月27日(高値151.97円)にはついに3者会合が開かれました。
2024年4月10日のCPI上振れでドル円は急騰し、三角持ち合いを上抜けしました。
4月13日現在は34年ぶりの153.210円まで上昇しています。
2022年9月の為替介入の事例を下にのせておきます。
2022年9月8日(木) 3者会合
2022年9月14日(水) 日銀がレートチェックを実施(午後13時30分ごろ)
2022年9月22日(木) 円買い・ドル売りの為替介入
3者会合があったからといって必ず実弾介入があるわけではありません
2024年4月17日以降の口先介入と出来事
2024年4月17日「日米韓財務相会談」・「主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議」以降の口先介入と出来事をまとめました。
日付 | ドル円 | コメント | レベル |
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4月17日 | 154.73 | ◆日米韓財務相会談 急速な円安に関する深刻な懸念を認識し、為替市場の動向に関して緊密に協議するとの共同声明 |
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◆主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議 為替の過度な変動は経済に悪影響を与えるとした従来のコミットメントを再確認 |
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神田財務官「為替の具体的な水準についてはコメントしない」「G7声明、日本の主張を踏まえて為替のコミットメントを再確認」 | 5 | ||
4月18日 | 154.68 | 鈴木財務相、為替介入「立場説明」 米財務長官と会談 | 5 |
4月23日 | 154.87 | 鈴木財務相 介入を念頭に「環境が整ったのかということについては、そう捉えられてもいい」と述べた。 | 5 |
鈴木財務相「過度な変動に対しては、あらゆるオプションを排除せずに適切に対応するという従来の方針は堅持し、市場の動向を見ている」 | 5 | ||
4月25日 | 155.75 | 鈴木財務相「コメントは控える」 | |
鈴木財務相「市場をしっかりといま注目しているところだ。その注目しているものをもとに適切な対応をしていく思いにいささかも変わりはない」 | 4 | ||
林芳正官房長官「為替相場の過度な変動は望ましくない。為替市場の動向を注視しつつ、万全の対応を行う」 為替介入については「市場に不測の影響を及ぼすおそれがあることから、見解を述べることは差し控える」 |
3 | ||
NEWS▶イエレン米財務長官「『市場が決定する為替レートを持つ大国』にとって、介入はめったにない状況に限定されるべきだ」「介入がまれであることを願う。そのような介入がめったに起きず、過度な変動がある場合に限定され、事前に協議があることが期待される」 | - | ||
4月26日 | 158.44 | 鈴木財務相「為替政策については、タイミングや具体的な手段について述べることはできない。政府としては、引き続き、しっかりと為替市場の動向を注視し、万全な対応を取っていきたい」 円安が日本経済に与える影響について「プラス面、マイナス面あるが、今は物価高騰対策が重要な政策課題だ。マイナス面での懸念を持っている」 |
2 |
植田日銀総裁「金融政策は為替レートを直接のコントロール対象にしていない」「為替が基調的な物価上昇率に無視しえない影響があれば、金融政策運営の判断材料になる」「基調的な物価上昇率に対して、円安は今のところ大きな影響を与えていない」 | - |
海外への日本の立場の説明と連携を確認
4月17日に開催された「日米韓財務相会談」で、急速に進む円安やウォン安について緊密に連携するとの共同声明を発表しました。
また同日の「主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議」では、日本の以降で為替相場への言及も共同声明に盛り込み、為替の過度な変動は経済に悪影響を与えるとしたコミットメントを確認しました。
また日米二国間の財務相会談を開き、イエレン米財務長官との会合で「行きすぎた動きには適切に対応するという政府の今の立場を説明した。よく聞いていただいた」と述べています。
海外との連携が取れていることの猛アピールです。
その後23日には鈴木財務相が「環境が整ったのかということについては、そう捉えられてもいい」と発言し、実弾介入がいつ行われてもおかしくない状態になりました。
しかしこの23日のレベル5の口先介入を最後にレベルがトーンダウンします。
実はアメリカの理解は得られてない?
25日にはイエレン米財務長官の記事がBloombergから発信されます。
イエレン米財務長官は、円の対ドルでの下落に対応するために日本当局がとり得る動きについて自身の姿勢を問われ、為替市場への介入はまれな出来事であるべきだと語った。
誰しもが思ったことでしょう。
4月半ばからの、海外と連携が取れているというアピールはなんだったのかと。。
25日からトーンダウンしたのはアメリカに釘さされたからか?
これで実弾介入できるの・・・?
駄目押しのハト派な金融政策決定会合と止まらない円安
また4月26日には金融政策決定会合が開催され、引き続き緩和的な金融環境が継続することが確認されました。
植田日銀総裁の会見では、「金融政策は為替レートを直接のコントロール対象にしていない」、「基調的な物価上昇率に対して、円安は今のところ大きな影響を与えていない」といった発言がありました。
この発言からは円安を問題視していないことと、円安のために利上げすることはないということが分かります。
円安が物価上昇に寄与してないってマジ?
2024年4月29日以降の為替介入と出来事【NEW】
日付 | ドル円 | コメント | レベル |
---|---|---|---|
4月29日 | 160.21 | 13:05頃~ 円買い・ドル売りの為替介入(5兆円規模)? | 実行 |
神田財務官(為替動介入観測に)「今はノーコメント」 | - | ||
4月30日 | 157.85 | 神田財務官「介入の有無について申し上げることはない」「24時間体制でやる」「引き続き、必要な時には適切な対応を取る」「水準については考えたことはない」 | 5 |
5月2日 | 156.29 | ◆FOMC政策金利据え置き インフレ沈静化の進展は失速 |
- |
早朝5時頃~ 円買い・ドル売りの為替介入(3兆円規模)? | 実行 | ||
神田財務官「(為替の)過度な変動が大きな影響を日本経済に及ぼすことは看過できない」 為替介入の有無については「私から申し上げることは何もない。ノーコメントだ」 |
4 | ||
5月3日 | 161.86 | 鈴木財務相「為替相場は安定的に推移することが望ましく、急激な変化は好ましくない」「行き過ぎた動きはならす必要があるのかもしれない」 | 4 |
5月5日 | 153.75 | NEWS▶イエレン米財務長官「介入の有無についてコメントするつもりはない」円相場は「比較的短期間にかなり動いた」と述べ、「こうした介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」 | - |
4月29日に為替介入観測
4月29日(月・祝日)午前10時、ドル円は一時160.209円まで上昇したのち、13時過ぎから154円台半ばまで急落しました。
過去最大規模の約5兆円であると推測されています。
神田財務官は「ノーコメント」と為替介入の有無について明確にしていません。
取材を受ける神田財務官、「やってやったぜ」と言わんばかりの笑顔だったね
5月2日に為替介入観測
5月2日早朝5時11分頃、再びドル円は157.58円から153円付近まで急落しました。
3兆円規模の円買い介入が行われたと推測されています。
米国時間の1日にはFOMCが開かれ利下げ観測が後退しましたが、FOMC後やや円が買い戻されており、その流れでの円買い介入でした。
大型連休前、そして取引が薄い時間の追撃介入で効果的なタイミングでした。
5月5日にイエレン米財務長官は再び「こうした介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」としています。
結局海外の理解は得られているということでいいのか?
限度はどんなもんなんだろうね?
口先介入のあった時期をドル円チャートで確認
最後にドル円チャートを確認しておきます。
薄い紫が口先介入があった時期、濃い紫は警戒レベル5の口先介入があった日です。
三角持ち合いを上抜けし、4月29日には前回高値の160.4円には及びませんでしたが、160.20円まで上昇しました。
その後2度の為替介入で、5月3日には151.85円まで下落しました。
テクニカル分析ではリターンムーブの状態でした。
リターンムーブとは、チャネルや抵抗線をブレイクした後、またトレンドラインに戻ろうとする現象。
結局この後レジサポ転換してしまうことが多いため、最後のあがきともいえる
リターンムーブ後の動きは下記のように転換点となることがある
三角持ち合いになっていた時の上値抵抗線だった152円がサポートになっています。(レジサポ転換)
このまま反発してまた160円の高値を超えていくか、それとも下落かレンジに転じるか・・・
ブレイク後の三角持ち合いの到達目標は下記のようになっています。
上の記事での目標値は176円付近です。
今回の為替介入でうまく時間稼ぎできて円安を抑えることができるか、今後のファンダメンタルズにも注目ですね。
まとめ
▶口先介入の警戒レベルまとめ|2022年9月22日の為替介入までの発言とドル円レート
為替介入(口先介入)の記録
2022-09-19▶ついにレートチェック!本当に為替介入をするのか?|ドル円145円の壁【円安】
2022-09-23▶金融緩和の継続を確認した後の円買い単独介入の大ショック!|1998年の為替介入を振り返る
2022-10-22▶2022年10月21日の為替介入までの発言とドル円レート
2023-07-02▶145円にタッチ!現在の口先介入の警戒レベルとドル円のボラティリティ
2023-11-05▶一時151円上抜け!口先介入がレベル5に到達