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2019.10.14
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 ひろし君のクラスには、安田というひょろりとした面白い男がいる。背が高くていつもニヤニヤしながら冗談を言うので、クラスの中では「ヤスデ」と呼ばれて親しまれていた。
 そんなある理科の授業中、ひろし君は教科書に載っているヤスデの絵を見て吹き出しそうになってしまった。斜め後ろに座っている安田の顔を見ると、例のニヤニヤ顔で両手を斜め前方に広げているではないか。それでひろし君はとうとう我慢しきれずに、大声で笑ってしまったのである。
 
 「三村!何が可笑しい!」間髪を入れずに、担任の飯島先生の大声が教室に響き渡る。彼は軍人崩れで体も声も超でかい。そして当然暴力教師でもあった。ルールを守らない生徒には、いつも往復ビンタとヤグラ投げが待っていたのだ。

 ひろし君は悪いことをした訳ではなかった。ただヤスデの絵と安田のアクションが可笑しかっただけである。それでそのことを正直に打ち明けたのだが、飯島先生は簡単には許してくれない。
 「そうか、そんなに可笑しかったのなら、校庭を10周してからヤスデを捕まえてこい」。そう言うなり、ひろし君の襟首をつかんで教室の外に放り出してしまったのである。

 もうこれ以上何を言っても、この先生には通じない。ひろし君は諦めて、とにかく校庭を10周することにした。5周したころには横っ腹が痛くなってきたが、途中で止めると必ず往復ビンタとヤグラ投げの餌食になるだろう。それで死ぬ思いでなんとか10周を完走した。そして次は校庭にある桜の木を探したのだが、どうしてもヤスデが見つからない。諦めて教室戻りその旨を飯島先生に報告すると、「それじゃあ今すぐ父親を呼んで来い!」と怒鳴られてしまった。

 ひろし君が家の近くまで来ると、「ドコンドコン」という餅つき機の音が聞こえた。きっと父の紘一郎が大福用の餅を突いているのだろう。
 こんな忙しいときに、授業中にふざけていて先生に叱られ、「父親を呼んで来い」と言われたなどと言えるはずがない。ひろし君は決断が付かず家の近くをグルグルと行ったり来たりした。だが結局は家の中には入れなかった。
 「しょうがない。お父さんに叱られる位なら、飯島先生の往復ビンタとヤグラ投げの刑を受けるほうがましか・・・」そして学校の方向へトボトボと戻って行くしかなかったのである。

 それからひろし君がどうなったのかの顛末はあえて書かないことにしたい。いずれにせよ父親の紘一郎こそ、ひろし君にとって世界中で一番恐ろしい人間になってしまったことだけは間違いなかったのである。何と言っても、まだまだ「地震・雷・火事・親父」の時代であった。

作:五林寺隆


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最終更新日  2019.10.14 16:30:48
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