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アフリカで静かに進行する原発開発〜アフリカのエネルギー事情(1)

2018-09-19 08:00:57 | アフリカビジネス
16日、おなじみフランス国際ラジオ放送(RFI)のウェブサイトは、こんな記事を配信した。

アフリカ諸国、原子力エネルギー政策推進へ
L’Afrique se lance dans l’énergie atomique


記事の内容を少し読み下してみよう。

13億人の大陸、アフリカ。人口は2050年に20億人にまで膨らむ。しかし現在でも電力にアクセスできる人口は43%に過ぎない。アフリカは電力に「渇いて」いる。各国で急ピッチで進むエネルギーセクターのプロジェクト。しかし広大なアフリカ大陸、電力供給が追いつかないばかりか、人口増加でゴールはどんどん遠のいていく。そんな中で「魔法の切り札」になると期待されるのが・・・原子力発電である。記事はアフリカの10の国が原発を推進する方針にあることを伝えている。

実はアフリカにはすでに3基の原子炉が存在してきた。最も古いものが、知られた話であるが、よりによってコンゴ民主共和国にある。独立前の1950年代に旧宗主国ベルギーがレオポルトヴィル(現在のキンシャサ)、現在のキンシャサ大学に設置した「トリコ I号」、発電容量は10〜50kwである。主に医療や農業に応用可能な放射性同位体の研究開発が目的だったという。コンゴは南東部のカタンガ州を中心にウランを算出する。広島の原爆はカタンガで採掘されたウランが用いられたという。ベルギーは地理的合理性からコンゴに原子炉を設置したのか、はたまた本国におけるリスクを植民地に押し付けたのか。

その後モブツ独裁のザイール政権下、1977年に「トリコ II号」(1MW)の稼働が開始される。国際原子力機関(IAEA、仏語ではAIEA)による燃料交換、技術供与などの支援が行われたが、80年代後半にウラン禁輸が発動され、供給は停止。恐ろしいことに、その後予算の手当てもままならず、そのまま放置されることとなった。70年代には燃料棒2本がイタリア系マフィア組織に盗まれ、もう一本は行方が分かっていない。原子炉は大学構内、熱帯の激しい雨による地盤の浸食が進むの丘の上に、炉心に燃料棒を残した危険な状況のまま放置されているという。


現在、アフリカ所在の原子力発電所は南アフリカにある。二基の原子炉が稼働している。南アの原子力開発は当初、秘密裏に軍事目的で進められた。原子力開発というより、核開発である。1982〜89年の間に、15 〜20 ktの投下型原子爆弾が6発ほど開発された。その後、ANCのマンデラ政権が誕生、核拡散防止条約(TNP)を批准し、核開発には終止符が打たれた。

エネルギーとしての原子力開発は1984年、クーバーグ原発建設が端緒である。9割の電力を旧型の石炭火力発電で賄う南アにとって、重要な電源ソースの多様化と考えられた。その後、ジェイコブ・ズマ大統領は原発パーク構想を提唱。6基の原子炉を新設し、9600MWの発電容量を確保する構想だった。1000億ドル越えの大型案件開発に、ロシア、フランス、米国、韓国などの企業が名乗りを上げたという。しかしこのことは国民的な議論を呼んだ。そして先月、ジェフ・ラデベエネルギー大臣は2030年以降の原子力エネルギーの妥当性について調査を進め、それまで原発開発を凍結する、と発表した。



そして今、南ア以外のアフリカの10の国が原発推進に積極姿勢を見せている。アルジェリア、モロッコ、チュニジア、エジプト、ガーナ、ケニア、ウガンダ、ザンビア、スーダン、ナイジェリアである。アルジェリアは当初核開発を志したが、その後民生利用に政策転換している。この他、前出のコンゴ民主共和国、同じくウラン産出国のニジェール、カダフィ体制崩壊以前のリビアなども開発に前向き、と伝えられた。

そして2025年までにおそらく5つの国が原発を保有する公算が高いとされる。IAEAによれば新たに原発開発を志そうとする国の、実に3分の1がアフリカの国だ。アフリカの国が原発に誘われるのは、それがエネルギー問題を解決する「魔法の切り札」として期待されるから、との理由ばかりでない。全世界のウラン埋蔵量の2割をアフリカが秘め、34カ国で採掘可能とされていることも関係する。そして何より、進んだ科学技術を有したいという、いわば国威発揚的な誘引もある。しかしそれが本当にアフリカの体力にかなった、経済的・合理的な選択なのであろうか。記事は疑問を投げかける。

他方、原発開発を志すアフリカの国々を積極的に後押ししているのが、中国、ロシア、フランスである。間違えなく今後人口が増大し、エネルギー需要が拡大するのはアフリカ大陸だ。そこに照準を合わせ、原発商圏をめぐる激しい争いを繰り広げている。

ロシアは2015年、エジプト南部砂漠地帯のエル・ダバアに 1000 MWの原発を建設する計画を支援すると発表した。40億ドルの投資で、2025年までの稼働を目指す。 ロシアはナイジェリア、スーダンでの原子力開発も後押ししている。

中国は中国原子力開発社がナミビアでのウラン開発に関する合意を締結。このほかウガンダ、ケニアでも原発建設に関する合意を結んでいるとされる。


是非はともかく、アフリカでいま原発政策が進みつつある。この背景には強いエネルギー需要、人口増加圧力、国威発揚、外国企業の関心などが絡み合っている構図が見て取れる。
原発推進には、国際社会のみならず、アフリカ市民からも強い反対の意見が聞かれることもある。一方、政策を推進する各国政府には彼らなりの言い分がある。

(次回につづく)


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