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ふるさと納税の控除の裏技!自己負担2000円消える条件 【上場配当を住民税で課税選択した税率差で】

ふるさと納税の控除額計算の抜け道

(2021/11/19) 追記「給与に比べて配当がかなり多い場合

※課税選択の統一化で、この条件は令和4年分まで

 上場株式の配当,株式譲渡の所得税と住民税の異なる選択は令和4年分まで → 令和5年分(令和6年度住民税)から所得税と一致のみ(最新税制大綱)

ふるさと納税は自己負担額が発生するため、返礼品分で家計の節約にはなっても、節税にはならないというのは一般的に知られていることです。また、ふるさと納税は申告方法によって自己負担額が変わるケースもあります。

では、申告方法によって自己負担額自体が消えてしまうことはないのか、むしろふるさと納税した額よりも多く控除される条件はないのか、ということをこの記事で書いています。

※過去の記事では、限度額以内でも自己負担額が2000円を超えてしまう下のケースを取り上げていましたが、その逆で、自己負担額が減ってしまうケースを考えたいと思います。

※自己負担額が増えてしまうケース:確定申告を行う場合の、所得税率の変動や住宅ローン控除を引ききれていない場合など

ふるさと納税の控除のしくみ

自己負担額が2000円となる『ふるさと納税』の控除のしくみは「3階建て」になっています。

A.所得税の寄付金控除(所得控除)による控除税額
B.住民税の寄付金税額控除税額(基本分)
C.住民税の寄付金税額控除税額(特例分)

ふるさと納税額(マイナス2000円)のうちABCで100%を税金から引くというものです。

「ふるさと納税額(マイナス2000円)=100%」

とすると、

「(ふるさと納税によって減る税金の合計)=A+B+C=100%」

となります。

例えば、ふるさと納税として1万円支出すると、税金が8000円減り、正味の出費は2000円となります。

 

ところで、Cは、ふるさと納税分の寄付金だけに適用され、AとBで引ききれない分の残りをCで引くという「控除残額計算」を行います。

(※ちなみに、それぞれ所得に応じた控除限度があります。そのうち限度が一番厳しいCの限度額を逆算することで「いわゆるふるさと納税の限度額」が計算されます。以下はその限度額以内のふるさと納税を前提とします。)

つまり、表向きには、

「C=100%-B-A」

となるように作られています。

C特例控除分の計算の問題点

ですが、このCを計算する上で、Aは住民税の所得状況から逆算して計算するため、実際には次のようになります。

「C=100%-B-(住民税の所得状況から逆算したA’)」

(※住民税の課税総所得を用いて逆算し、「特例控除割合」の中に住民税の所得状況から逆算したA’の情報が含まれています。お住まいの市町村の税条例において、地方税法に定める方法でふるさと納税の控除を計算すると明記されている場合は、この特例控除割合を用いていることになります。)

ここで、最初のABCを足し合わせると、次のようになります。

A.所得税の寄付金控除(所得控除)による控除税額
B.住民税の寄付金税額控除税額(基本分)
C.住民税の寄付金税額控除税額(特例分)

A+B+C

=(所得税分の控除税額A)+B+[100%-B-(住民税の所得状況から逆算したA’)]

=100%+(所得税分の控除税額A)-(住民税の所得状況から逆算したA’)

 

式の中で、

「(所得税分の控除税額A)=(住民税の所得状況から逆算したA’)」

であれば、

「A+B+C=100%=(ふるさと納税額マイナス2000円)」

となります。多くの場合はこのようになります。

所得税と住民税で異なる情報がある場合

しかし、もし、

「(所得税分の控除税額A)>(住民税の所得状況から逆算したA’)」

となる状況があれば、次のようなことも考えられます。

「A+B+C>100%」

つまり、

「A+B+C>(ふるさと納税額マイナス2000円)」

「A+B+C=(ふるさと納税額マイナス2000円)+(追加の控除額)

こうなると、自己負担額は2000円より少なくなります。場合によっては自己負担額がゼロや、手出しはおろか税金まで返ってくる、ということもありえます。

 

では、問題の

「(所得税分の控除税額A)>(住民税の所得状況から逆算したA’)」

となる場合は次の章で解説します。

住民税から逆算する所得税率は実際とズレることがある

「(所得税分の控除税額A)>(住民税の所得状況から逆算したA’)」

となる場合でカギとなるのは、所得税率(総合課税分)です。上の式を所得税率で読み替えると次のようになります。

「(所得税における実際の所得税率)>(住民税の所得状況から逆算した所得税率)」

(※この式の所得税率とは、総合課税分の税率(累進税率)です。)

そんなことってあるのかな?と思ってしまいますが、「逆算した」というところがポイントです。

 

所得税率(総合課税分の税率)は課税総所得で決まります。

課税総所得とは、総合課税分の「所得」から「所得控除」を引いたあとの金額です。

つまり、上の所得税率の式は、次のようにも読み替えることができます。

「(所得税における課税総所得)>(住民税の所得状況から逆算した課税総所得)」

 

ここで注目したいのが、所得税と住民税では計算上、所得や所得控除の金額が異なるケースがあるということです。

「逆算」の際に考慮されるのは、所得控除における人的控除の差額だけです。それ以外は考慮されず「逆算のズレ」が生じます。

上場株式の配当の課税選択

ここで、本記事のタイトルにある「上場株式の配当」が登場します。

上場株式の配当は原則、課税選択ができます。

詳しくは下のマネーフォワードの記事を参照↓

 

たとえば、

上場株式の譲渡損失と配当を相殺させたい場合は「分離課税」を選択する節税方法があります。

また、

総合課税の累進税率&配当控除と、分離課税の税率の兼ね合いから、総合課税にして確定申告を行うと節税になるケースもあります。

そしてもう一つ、

所得税と住民税で、別々の課税選択を行うこともできます。

詳しくは下の日経記事を参照↓

上場株式の配当を住民税で総合課税以外として申告

別々の課税選択として例えば、

所得税では総合課税、住民税では分離課税(もしくは申告不要)を選択してそれぞれ確定申告すると、まさに次のようなことが起こりえます。

「(所得税における課税総所得)>(住民税の所得状況から逆算した課税総所得)」

となり、この条件を満たす所得状況のうち、所得税の課税総所得が税率境界をちょっと超えた付近にある場合は、次の条件を満たすことがあります。(※少なくとも、配当金の額がふるさと納税額より大きいことが必要です。)

「(所得税における実際の所得税率)>(住民税の所得状況から逆算した所得税率)」

(※この式の所得税率とは、総合課税分の税率(累進税率)です。)

こうなると、この章の最初に出てきた次の状況になります。

「(所得税分の控除税額A)>(住民税の所得状況から逆算したA’)」

 

ということは、これを最初のふるさと納税の控除額の計算式に戻ると、

「A+B+C=(ふるさと納税額マイナス2000円)+(追加の控除額)」

となる可能性が出てくる、というわけです。

所得税率に差が出た場合の控除税額を試算

上場株式の配当20万円を、所得税では総合課税、住民税では分離課税で申告した場合、

例えば、

所得税における実際の所得税率=20%
住民税の所得状況から逆算した所得税率=10%
ふるさと納税額=82,000円 (限度ギリギリ)

とすると、

A+B+C

=100%+(所得税分の控除税額A)-(住民税の所得状況から逆算したA’)

=8万+8万×20.42%-8万×10.21%

=8万×(100%+20.42%-10.21%)

=8万×(100%+10.21%)

=8万×110.21%

=約88,000円   > 82,000円!!

 

82,000円の出費で、約88,000円の税金が返ってくる計算になります。6000円の節税で、かつ返礼品ももらえることになります。

 

効果の大きい税率差(各税率で計算した場合の比較)

配当が少ない場合

総合課税分の所得税率は、5→10→20→23→33→40→45 と上がっていきます。

所得税における実際の所得税率=10%
住民税の所得状況から逆算した所得税率=5%
ふるさと納税額=42,000円
A+B+C=4万×105.105%=約42,000円
(ふるさと納税の限度額が小さく効果も弱いが、自己負担はゼロ)

所得税における実際の所得税率=20%
住民税の所得状況から逆算した所得税率=10%
ふるさと納税額=82,000円
A+B+C=8万×110.21%=約88,000円
(最初の計算例:6000円の節税。)

所得税における実際の所得税率=23%
住民税の所得状況から逆算した所得税率=20%
ふるさと納税額=200,000円
A+B+C=19.8万×103.063%=約204,000円
(税率差が小さく、効果も弱い。また、配当額がふるさと納税額より十分大きくない場合、税率差が生まれる可能性が低くなる)

所得税における実際の所得税率=33%
住民税の所得状況から逆算した所得税率=23%
⇒この税率以上の場合は上場配当を所得税で分離課税として申告したほうが有利

 

ということで、一番メリットがありそうな条件は最初に計算したケース(ふるさと納税額82,000円)となりました。

上場配当を総合課税で計算した場合に所得税率20%であり、上場配当を抜きで計算した場合には所得税率10%となるような所得状況のケース(給与ベースでは650~750万円程度)です。

給与に比べて配当がかなり多い場合

こちらは最大の控除額を出せる条件を見ていきます。

設定は、給与が約300万円以下(給与等の総合課税分の所得税率が5%)、上場株式の配当300万円、上場株式の譲渡所得7000万円です。

ふるさと納税額は80万円

課税選択は以下の通り。
配当:所得税で総合課税、住民税で申告不要
株式譲渡:ともに分離課税申告

この場合、総合課税の所得(ふるさと納税の控除の割合を優先的に決める所得)は次の要素になっています。

所得税側:給与所得、配当所得
住民税側:給与所得のみ

そして、さらに配当所得が給与所得に対してかなり大きいため、それぞれの所得税率(相当)が大きく異なってきます。

所得税における実際の所得税率:20%
住民税の所得状況から逆算した所得税率:5%

先の「配当が少ない場合」の例よりも、所得税率が2段階、差が出ています。(5%→10%→20%)

ここで住民税では所得税で引ききれなかった【残り】を、上の「住民税の所得状況から逆算した所得税率」から計算するため、次の割合でふるさと納税の控除額を計算します。

所得税側のふるさと納税の控除割合:20%
住民税側のふるさと納税の控除割合:95%=100%-5%(上記「住民税の所得状況から逆算した所得税率」)

これを合わせると、115%の控除となります。

つまり、
ふるさと納税額80万円に対して92万円の控除となり、自己負担額が12万円のマイナス、となるわけです。

※ここで、株式譲渡の課税選択を住民税で分離課税から申告不要にしてしまうと、ふるさと納税の控除限度額がガクンと下がり、自己負担額が70万円近くになってしまいます。課税選択は重要です。

そんなことがあるのかと感じると思いますが、このような「制度の穴」的なものがなぜ存在しているのかというと、所得税と住民税とで違う課税方式を選択できるようになった(実質的に可能となった)のは平成28年分(平成29年度)で、ふるさと納税の制度ができた平成20年よりも後だからです。

ご注意

※注意1最終税額は、上場株式の配当の課税選択による税額の増減の影響も加わります。(ですが、所得税率20%までは、配当を所得税で総合課税、住民税で分離課税または申告不要にした方が最終税額も小さくなる傾向にあります。)

※注意2所得状況によっては課税選択を変えても「(所得税における実際の所得税率)=(住民税の所得状況から逆算した所得税率)」となり、自己負担額2000円のままの場合もあります。その理由は次になります。

「(所得税における実際の所得税率)>(住民税の所得状況から逆算した所得税率)」なら「(所得税における課税総所得)>(住民税の所得状況から逆算した課税総所得)」

は必ず成り立ちますが、その逆の

「(所得税における課税総所得)>(住民税の所得状況から逆算した課税総所得)」なら「(所得税における実際の所得税率)>(住民税の所得状況から逆算した所得税率)」

は必ずしも成り立ちません。(課税総所得が税率境界のどの位置にあるかによって変わります。)

※注意3所得税と住民税で課税方法を変えるには、住民税で別途申告する必要があるため、詳細はお住まいの役所の税務課へ問い合わせてください。

※注意4:住民税で課税方法を変えると、住民税で計算される他の公的な補助金が影響を受けることがあります。詳細はお住まいの役所の税務課へ問い合わせてください。

シミュレーション方法

この試算は正月を迎えてから確定申告までの間にできることも重要です。

ところで、この試算をするには、所得税と住民税をそれぞれ計算しなければなりませんが、簡易的には、上場配当を加えて計算した所得税率と、加えないで計算した所得税率に差が出れば1つの目安となります。

そんな計算どうやって・・・と思った方は、下のシミュレーションツールで試算することをオススメします。あなたの顧問税理士がいれば相談されてみてはいかがでしょうか?

※この記事の計算を税務署や役所の税務課に問合せても「どうやっても自己負担額は2000円になるはずです」と門前払いされる可能性があります(実際の税額計算は機械任せのため)。

※実際のこの方法で節税効果が得られたという方がいらっしゃいましたら、ご一報いただけると幸いです。

※そんな計算にはならないよ、というご意見もいただければ検証などの参考にさせていただきます。

おまけ:逆のパターン(損)

上の例では、

「(所得税における課税総所得)>(住民税の所得状況から逆算した課税総所得)」

となるパターンで、得をするケースを考えました。

しかし、その逆で、

「(所得税における課税総所得)<(住民税の所得状況から逆算した課税総所得)」

となり、この条件を満たす所得状況のうち、所得税の課税総所得が税率境界のちょっと下にある場合は、

「A+B+C<(ふるさと納税額マイナス2000円)」

「A+B+C=(ふるさと納税額マイナス2000円)-(追加の自己負担額)

となり、追加の自己負担額が発生するケースもあります。

 

それは、上場株式の配当よりも身近なことで、「所得控除の差額」というものが関係します。

上のほうで、所得税と住民税では計算上、所得や所得控除の金額が異なるケースがあるということを書いています。

所得控除については住民税の方が少なく設定されているものがあります。

※具体的には、生命保険料控除・地震保険料控除・ひとり親控除の男性分・配偶者特別控除(配偶者の合計所得金額が50万円以上の場合)です。これら以外の人的な所得控除の差額は、ふるさと納税の計算上で「人的控除の差額の調整」として考慮されています。

所得控除が住民税のほうで少ないということは、課税総所得が住民税の方が多くなる、

つまり、下のような状況になります。

「(所得税における課税総所得)<(住民税の所得状況から逆算した課税総所得)」

 

※『ご注意』の2番目に書いてあるように、課税総所得に差があるだけでは所得税率に差が出る(追加の自己負担額が発生する)とは限りません。課税総所得が税率境界のどの位置にあるかによって変わります。以下のツールで該当するかどうかを試算することができます。

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