世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●“国内ファシズムは許すぞシンゾウ” 望月記者狙い撃ち

2019年02月21日 | 日記

 

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●“国内ファシズムは許すぞシンゾウ” 望月記者狙い撃ち


以下は、日経新聞が、世界の右翼の勢いについて伝える記事だ。


≪ 欧州議会選、極右に勢い 伊・仏で首位予測
【ブリュッセル=森本学】5月下旬の欧州議会選で「反欧州連合(EU)」や「反移民」を掲げる大衆迎合主義(ポピュリズム)の政党が台頭する見通しが強まってきた。欧州議会が18日発表した予測によると、最大会派の中道右派勢力は第1党を堅持するが、イタリアとフランスで極右政党がトップになる勢いだ。英離脱で揺らぐ欧州統合に新たな逆風が吹きそうだ。


 



欧州議会はEU加盟28カ国でつくる立法機関で、議員は5年に1度の直接選挙で決める。5月23~26日投票の次期議会選では、英国が3月末にEUを離脱するため、751から705に減る定数を27カ国に割り当てる。

欧州議会は各国の世論調査を集計して選挙結果の予測をまとめた。イタリアではポピュリズムの連立政権を構成する極右政党「同盟」が27議席(現有6議席)に伸び、同国トップになる見通しだ。個別の国家政党としてはドイツのメルケル首相が所属する独キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)に次ぎ、2番目に多い議席を得る。
 
同盟を率いるイタリアのサルビーニ副首相は難民や移民を排除する強硬な政策を推進してきた。中東やアフリカからの難民を乗せた船の入港を拒むなど扇動的な手法で支持を広げる。だが、かつて主張した「ユーロ離脱」は封印。EU域内の右派ポピュリズム勢力を集め、内側からのEU改革を目指している。

フランスの極右「国民連合」も21議席(同15議席)に伸長し、同国首位になる勢いをみせる。党首のルペン氏はサルビーニ氏とも連携する。
 
「マクロン大統領を倒すための闘いだ」。1月13日、欧州議会選の選挙戦を始動したルペン氏は23歳のバルデラ氏を比例名簿の1位に指名した。同氏はパリ郊外のイスラム系住民が多い地域を拠点に移民対策強化を訴えてきた。「反マクロン」を打ち出し、反政権デモ「黄色いベスト」支持層も取り込みたい考えだ。

スペインは現状で議席ゼロの極右「ボックス(VOX)」が6議席を獲得する勢いをみせる。同国では欧州議会選の直前の4月下旬に総選挙が予定される。中道左派の少数与党が2019年度予算の成立に失敗したためで、ここでもボックスの躍進が予想される。

中東やアフリカからの移民や難民がスペインに向かう流れができたことに不満を持つ有権者がボックスを支持する。総選挙で勢いづけば欧州議会選で予測を上回る結果を得る可能性はある。





ポピュリズム政党は左派にもみられる。イタリアで同盟と組んで連立政権の一角を担う「五つ星運動」は22議席(現有13議席)に飛躍する見込みだ。フランスでは銀行の国有化などを主張するメランション氏が率いる「不服従のフランス」が現有ゼロ議席を8議席に伸ばす勢いをみせる。

左右両派のポピュリズム政党が伸びる一方、中道政党は苦戦を強いられそうだ。独CDU・CSUなどが参加する中道右派で欧州議会における最大会派である欧州人民党(EPP)グループは183議席を獲得する見通しだ。新議会でも最大会派を維持するが、定数に占める比率はいまの29%から26%に低下する。

第2会派で中道左派の欧州社会・進歩連盟(S&D)は135議席で、現有25%から19%に縮小するとみられる。定数が1割近く削減されるなかでの占有率低下は中道勢力の退潮を印象づける。

EPPとS&Dを合わせた中道勢力は318議席にとどまり、欧州議会で初めて過半を割り込む公算が大きい。欧州の安定を支えてきた中道右派と中道左派による「二大政党制」が大きく揺らぐ見通しが強まっている。

議会選後に右派ポピュリズム政党が結集すれば、第2会派のS&Dに迫る勢力となり、重要法案などで存在感を発揮する可能性もある。サルビーニ氏らは、強権的な政治手法を巡ってEUと対立するポーランドの与党「法と正義」などとも連携を探る。ただ、対ロシアなどで温度差もあり、連携の枠組みは流動的だ。

親EU派の新興リベラル勢力も健闘しそうだ。初めて欧州議会選に臨むマクロン仏大統領の政党「共和国前進」は18議席と予測される。連携政党の仏「民主運動」と合わせると20議席にのぼる。仏でこれまでの主要政党だった共和党や社会党をしのぎ、ルペン氏の「国民連合」を猛追する。
 ≫(日本経済新聞)


続いて、米国では、次期大統領選に、無所属のバーニー・サンダース上院議員(77)が再び名乗りを上げた。このサンダース議員の立候補表明は、現在のアメリカホワイトハウスの混迷と対照的だ。


≪民主サンダース氏、米大統領選に出馬 左派の代表格
【ワシントン=永沢毅】2020年の米大統領選を巡り、無所属のバーニー・サンダース上院議員(77)は19日、民主党の大統領候補の指名獲得をめざして出馬すると表明した。左派の代表格の一人で、国民皆保険や公立大学の無償化など「大きな政府」を志向する。民主候補の指名をヒラリー・クリントン元国務長官と争った16年大統領選に続く再挑戦となる。

 

サンダース氏は支持者向けの動画などで「この国を変革し、経済的、社会的な正義の規範に基づいた政府をつくる」と強調した。自身の政策について「16年のときは急進的で過激だと言われたが、今や多くの米国人に支持されている」と訴えた。

国民皆保険は現在、カマラ・ハリス上院議員ら立候補を表明している民主議員の多くが実現を唱える。 民主の大統領候補に関する世論調査では、サンダース氏はその知名度を生かしてバイデン前副大統領に次ぐ2位につけているケースが多い。

党内で左派的な主張が勢いを増しているのも、「民主社会主義者」を自称するサンダース氏の存在が大きい。急進左派の台頭を象徴する米史上最年少の下院女性議員オカシオコルテス氏(29)は、16年にサンダース氏の選挙運動に関わった。 16年に取り込んだ若者層の支持を再び得られるかが予備選を勝ち抜くカギを握る。77歳という年齢もハードルになりそうだ。  
≫(日本経済新聞)


上記の欧州と米国の動きは、特別な関連はないのだが、20世紀から21世紀にかけて、世界を席巻してきた“アメリカンスタンダード”が概ね壊れたことを示唆している。

おそらく、ある日突然、アメリカが覇権を放棄することはないのだから、当面は、様子見で良いと云うのが、日本の政治や安保関連関係者の解釈なのだろう。

しかし、世界が混沌としているのは事実だ。日米安保条約が、一方の国が条約破棄を通告して、1年経過後に解消出来るものだと云う言葉を、まともに受け取っている人間は少ないだろう。

筆者の知る限り、日米安保条約の内容や、日米地位協定、合同委員会の様子から類推すれば、日米安保条約は、アメリカが、永続的に占領し続けると云う事実が判るだけで、それ以上でも以下でもない。

日本側から、条約の破棄など口にしたら、その政治家は、東京湾に浮かぶか、ホテルの部屋で首を括って死ぬことになる。

つまり、日本は、アメリカの隠れた植民地であり、生かすも殺すも、アメリカの意思次第と云うことだ。

ということは、日本は、アメリカの国益に沿うような生き方の中から、幾つかを選択して生きていくしかないと云うことである。

「しょうがなかった」と云う言葉が耳元で囁かれるが、敗戦後72年が経過しているのだ。戦後100年なら「しょうがなかった」と云う言葉が消えるのか、或いは、永遠にアメリカは日本を離さないのかもしれない。

まぁ、トランプが、アメリカ支配の甘い構造を知らない時期に、「日本は核武装させて、米軍は撤退する」という趣旨の発言をしたが、最近では、もっぱら日本を利用することだけ考えるようになった。

安倍の馬鹿に、ノーベル平和賞への推薦状を書かせるなど、安倍政権に恥の上塗りをさせている。

国会では、統計疑惑問題を野党が頑張って追求し、安倍内閣政治家らの、一定の発言を契機に、霞が関官僚がドドット同一方向に動きだす流れが判明しつつあるが、NHKはじめテレビ局は、このニュースをニュースバリューがないものと規定して、4,5番手に軽く報じるに過ぎない。

この各テレビ局の報道姿勢は、今国会が初めって1週間後辺りから明確になってきた。2月に入ってからは、益々、その度を深めている。

東京新聞望月記者バッシングも、最強のレベルで、同記者の追い落としを赤裸々に恥ずることもなく行われている。

東京新聞は、その点で見事な対応に終始している。マスメディア各社に、“爪の垢を煎じて飲ませたい”ものだ。

あからさまに、菅官房長は「東京新聞はわかっているだろうな」と何が判っているのか明示もせずに、恫喝的言辞を弄した態度は、まさにファッショ的だ。

このような、安倍官邸の恥知らずな行為が許されるのも、トランプ大統領から、“シンゾウ、日本国内はオマエの好きにしていいが、国際的な決定権は俺にある。忘れるな”と云う会話が想像できる。日本にあるのは、限定的主権なのである。

いわゆる、「アメリカンファシズム」と命名すると判りやすい。


≪官邸の申し入れ9回 「質問制限」問題を東京新聞が検証
 官房長官会見での東京新聞記者の質問に事実誤認があるとして、首相官邸が記者クラブ「内閣記者会」に「問題意識の共有」を求めた問題で、東京新聞は20日朝刊に「検証と見解」とする1ページの特集を掲載。この記者の質問をめぐり、2017年8月から今年1月までの間に、官邸から9回の申し入れを受けたとし、その内容と回答の一部を明らかにした。
 検証記事によると、18年6月、記者が森友学園の国有地売却を巡る文書改ざん問題について「メモがあるかどうかの調査をしていただきたい」と尋ねた際、同社に「記者会見は官房長官に要請できる場と考えるか」と文書で質問があった。「記者は国民の代表として質問に臨んでいる。特に問題ない」などと回答すると、「国民の代表とは選挙で選ばれた国会議員。貴社は民間企業であり、会見に出る記者は貴社内の人事で定められている」と反論があった、という。
 同年11月には、改正出入国管理法の国会成立の際、「強行に採決が行われましたが」と記者が質問。これに対し、「採決は野党の議員も出席した上で行われたことから、『強行に採決』は明らかに事実に反する」と抗議を受けた。同社は回答しなかったという。検証記事では「他の新聞や通信社も『採決を強行した』と表現しており、過剰な反応と言わざるを得ない」と批判した。ただ、申し入れの一部には、記者に事実誤認や言い間違いがあった、との趣旨の回答をした、としている。
 また、一昨年秋以来、記者が質問中に進行役の報道室長から「簡潔にお願いします」などとせかされたとも指摘。今年1月に官邸側に「事務方の催促は最小限にしてほしい」と伝えたが、その後も同じ状況が続き、1月24日の会見では、1分半ほどの間に計7回遮られた、としている。
 特集では臼田信行・編集局長が署名記事で、「権力が認めた『事実』。それに基づく質問でなければ受け付けないというのなら、すでに取材規制だ」「記者会見は民主主義の根幹である国民の『知る権利』に応えるための重要な機会だ。だからこそ、権力が記者の質問を妨げたり規制したりすることなどあってはならない」などと訴えた。
 同紙は19日の社説でも「事実誤認と考えるなら、会見の場で事実関係を提示し、否定すれば済むだけの話だ」「権力を監視し、政府が隠そうとする事実を明らかにするのは報道機関の使命だ」などと主張した。
 菅義偉官房長官は20日の会見で、「申し入れをまとめたと思われる表の中で、両者の間のいくつかの重要なやりとりが掲載をされていないなど、個人的には違和感を覚える所もある」と述べた。「違和感」を覚えるとした箇所については「政府としていちいちコメントすることは控えたい。東京新聞側はよくお分かりになっているのではないか」と話した。
 東京新聞編集局は20日、朝日新聞の取材に「20日朝刊紙面で、概要を示しています。菅官房長官は『いくつかの重要なやり取り』が何であるかを示しておらず、何を言いたいのか理解に苦しみます」と回答した。
 ≫(朝日新聞デジタル)


 ≪(上)国、投入土砂の検査せず 「辺野古工事で赤土」は事実誤認か
 首相官邸にある記者クラブの内閣記者会に上村(うえむら)秀紀・官邸報道室長名の文書が出されたのは昨年十二月二十八日。その二日前に行われた菅義偉(すがよしひで)官房長官の定例記者会見で、本紙社会部の望月衣塑子(いそこ)記者が行った質問に「事実誤認」があったとしていた。
 「東京新聞側にこれまで累次にわたり、事実に基づかない質問は厳に慎むようお願いしてきた」。会見はインターネットで配信されているため「視聴者に誤った事実認識を拡散させることになりかねない」とし、「記者の度重なる問題行為は深刻なものと捉えており、問題意識の共有をお願いしたい」とあった。  記者会側は「記者の質問を制限することはできない」と官邸側に伝えた。
 官邸側が「事実誤認」としたのは沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設工事に関する質問で、本紙記者が「埋め立ての現場では今、赤土が広がっている。琉球セメントは県の調査を拒否し、沖縄防衛局が実態把握できていない」「赤土の可能性が指摘されているにもかかわらず、国が事実確認をしない」と述べた部分。
 官邸側は(1)沖縄防衛局は埋め立て材(土砂)が仕様書通りの材料と確認している(2)琉球セメントは県の立ち入り調査を受けている-として「質問は事実に反する」と指摘。「赤土が広がっている」という部分も「汚濁防止措置を講じており、表現は適切でない」と批判した。同じ日付で長谷川栄一・内閣広報官から臼田局長に抗議文書も送られてきた。
 実際はどうなのか。十二月十四日に土砂投入が始まると海は一気に茶色く濁り、県職員や市民が現場で赤土を確認した。県は一週間後に「赤土が大量に混じっている疑いがある」として、沖縄防衛局に現場の立ち入り検査と土砂のサンプル提供を求めたが、国は必要ないと応じていない。
 代わりに防衛局は過去の検査報告書を提出したが、検査は土砂を納入している琉球セメントが二〇一六年三月と一七年四月の計二回、業者に依頼して実施したものだった。
 そのため県は「検査時期が古く、職員が現場で確認した赤土混じりの土砂と異なる」として、埋め立てに使われている土砂の「性状検査」結果の提出を求めているが、これも行われていない。
 このような状況から本紙記者は「現場では赤土が広がっているのに、発注者の国は事実を確認しない」と発言したのであり、官邸側の「事実誤認」との指摘は当たらない。

◆「表現の自由」にまで矛先 内閣広報官名など文書 17年から9件
 長谷川広報官の申し入れ文書は「事実に基づかない質問は慎んでほしい」という抗議だけでなく、記者会見は意見や官房長官に要請をする場ではないとして、質問や表現の自由を制限するものもある(表(1)参照)。
 本紙記者は昨年一月の質問で、国連人権理事会のデービッド・ケイ氏が二〇一五年十二月一日から特定秘密保護法や報道の自由度の調査で来日を予定していたが、外務省が三週間前に面会を一年延期したことに触れ、「ケイさんが菅さん(官房長官)や高市(早苗)総務相(当時)に面会したいというときも、政府側がドタキャンしたという経緯があった」と述べた。
 官邸側は、ケイ氏は菅氏に面会を要請した事実はなく、高市氏も日程が整わなかったとして、ドタキャンしたとの質問は事実に基づかないと指摘してきた。
 臼田局長は「官房長官の面会予定があったと受け取れる箇所など、一部で事実誤認があった」と誤りを認める一方、「『政府側がドタキャンした』という表現は論評の範囲内だと考える」と回答した。ケイ氏の来日中止は当時、本紙や毎日新聞、共同通信も「日本政府の要請で突然延期になった」と報じていた。
 今月十二日の衆院予算委員会で、菅氏はケイ氏に関する質問を例に挙げ、「内外の幅広い視聴者に誤った事実認識を拡散させる恐れがある」と答弁した。だが、会見では菅氏も「ドタキャンなんかしてません」と即座に回答しており、記者の言いっ放しにはなっていない。
 昨年十一月、外国人労働者を巡る入管難民法改正案の国会成立について、本紙記者が「短い審議で強行に採決が行われましたが…」と質問したのに対し、長谷川氏から「採決は野党の議員も出席した上で行われたことから、『強行に採決』は明らかに事実に反する」と抗議がきた。
 採決の状況から本紙や他の新聞や通信社も「採決を強行した」と表現していた。それにもかかわらず本紙記者の発言を「事実に反する」と断じており、過剰な反応と言わざるを得ない。
 森友学園に対する国有地払い下げを巡る決裁文書の改ざん問題で、本紙記者が昨年六月、財務省と近畿財務局との協議に関し「メモがあるかどうかの調査をしていただきたい」と述べると、長谷川氏から「記者会見は官房長官に要請できる場と考えるか」と文書で質問があった。
 「記者は国民の代表として質問に臨んでいる。メモの存否は多くの国民の関心事であり、特に問題ないと考える」と答えると、「国民の代表とは選挙で選ばれた国会議員。貴社は民間企業であり、会見に出る記者は貴社内の人事で定められている」と反論があった。
<官房長官会見>
 原則、月-金曜日の午前と午後に1回ずつ、首相官邸で開かれる。主催は内閣記者会。金曜日午後の会見は、内閣記者会に所属していなくても一定の要件を満たしたジャーナリストが参加できる。官邸のホームページで会見の動画を見ることができる。
<内閣記者会>
 記者クラブの一つで、所属記者は首相官邸などの取材を担当している。記者会の常駐会員は新聞、テレビ、通信社の計19社。非常駐会員やオブザーバー会員として地方紙や海外メディアも所属していて、全会員数は185社に及ぶ。


 



【検証と見解/官邸側の本紙記者質問制限と申し入れ】

≪(中)1分半の質疑中 計7回遮られる
 記者会見の進行役を務める上村報道室長が、質問の途中で本紙の望月記者をせかすようになったのは一昨年秋から。「簡潔にお願いします」「質問に移ってください」と繰り返し、そのたびに質問は遮られてぶつ切りとなる。聞き取りにくく、時間がかかる結果となっている。
 本紙は今年1月22日、長谷川広報官に文書を送り、18日の沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設を巡る県民投票に関する二つの質問で、上村氏から途中に計8回、せかされたと伝えた。「お互いが落ち着いて質疑をするために、事務方の催促は最小限にしてほしい」と要請したが、その後も続いている。
 例えば安倍晋三首相がNHK番組で「(辺野古沖の)土砂投入にあたって、あそこのサンゴは移植している」と語った「サンゴ発言」などを巡る1月24日の二つの質問(表(2)参照)では、開始からわずか数秒で「質問は簡潔に…」とせかされ、以後も数秒おきに続いた。1分半ほどの短い質疑で、質問は計7回も遮られた。
 官邸側は本紙編集局長宛てに文書で、会見は記者が意見や政府への要請を述べる場ではないと主張、上村氏が質問を遮る理由にもなっている。ところが他社の記者の質問では、意見が交じって時間がかかっても遮ることはほとんどしない。
 沖縄の県民投票を巡り、今月14日にあった他社の記者の質問(表(3)参照)では、本紙記者よりもかなり長く質問し、最後に「そういうことがあってもいいのかなと思うんですけど、いかがですか」と意見を述べた上で、菅氏の見解を求めている。
 この記者は3問質問したが、本紙記者の場合、当てられるのは常に最後で、1問目が終わるといつも上村氏が「次の質問、最後でお願いします」と宣言するため、2問に限定されている。上村氏が本紙記者に質問妨害や制限を行っているのは明らかだ。
 望月記者は一昨年から森友・加計学園疑惑などで官房長官らに質問してきた。最近では「税を追う」キャンペーンに関連し、増大し続ける防衛予算や沖縄・辺野古の埋め立て工事などの質問を多く行っている。
 森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざんのように、政府側の説明にはうそや誤りがあることがあり、それをスポークスマンである官房長官に質問するのは記者の重要な仕事だ。特定の記者に対する質問妨害に、政府側が嫌う記者を封じ込めようとする意図はないのか。
 本紙記者の質問制限を巡る山本太郎参院議員の質問主意書に、政府は「今後もやむを得ない場合には、司会者がこれまで同様に協力呼びかけを行う」と回答した。だが、比較検証したように本紙記者の質問は特別長いわけではない。狙い撃ちであることは明白だ。


 

≪(下)会見は国民のためにある 編集局長・臼田信行
 官房長官会見での望月記者の質問を巡り、官邸から九回にわたり「事実に基づかない質問は慎んでほしい」などと申し入れがありました。一部質問には確かに事実の誤りがあり、指摘を認めました。
 しかし、多くは受け入れがたい内容です。昨年十二月に辺野古の工事を巡り、「赤土が広がっている。沖縄防衛局は実態を把握できていない」と質問したことに対し、官邸は事実に基づかない質問であり、赤土の表現も不適切だと申し入れてきました。
 本紙は今年一月、防衛省が沖縄県に無断で土砂割合を変更した事実や赤土投入が環境に悪影響を与えている可能性を報じました。記者の質問は決して「事実に基づかない」ものではなかったと考えます。
 取材は、記者がそれまでに知った情報を会見などで確認していく行為です。官房長官は本紙記者の質問を「決め打ち」と批判しましたが、「決め打ち」なら会見で聞くことなどないでしょう。正しい情報を基に質問することが必要ですが、不正確な情報で問いただす場合もあり得ます。
 そんな時でも取材相手がその場で修正したり否定したりすれば済む話で、一般的には珍しくありません。権力が認めた「事実」。それに基づく質問でなければ受け付けないというのなら、すでに取材規制です。
 短い質問の途中で事務方が何度も質問をせかし、終了を促すのも看過できません。会見時間は限りがあり、「質問は簡潔に」との要請は理解できますが、こんなに頻繁に遮る例は他に聞きません。批判や追及の封じ込めとも映ります。
 記者会見はだれのためにあるのか。権力者のためでもなければメディアのためでもなく、それは国民のためにあります。記者会見は民主主義の根幹である国民の「知る権利」に応えるための重要な機会です。  だからこそ、権力が記者の質問を妨げたり規制したりすることなどあってはならない。私たちは、これまで同様、可能な限り事実に基づいて質問と取材を続けていきます。
 ≫(東京新聞)


 ≪ 社説:記者会見の質問 知る権利を守るために
 記者会見での記者の質問は、国民の知る権利を守るために、報道機関として当然の行為だ。権力側が、自らに都合の悪い質問をする記者を排除しようとするのなら、断じて看過することはできない。
 なぜ今、こうしたことに言及せざるを得ないのか、経緯を振り返る必要があるだろう。
 発端は本紙記者が昨年十二月、菅義偉官房長官の記者会見で、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設について「埋め立て現場では今、赤土が広がっており、沖縄防衛局が実態を把握できていない」と質問したことだ。
 首相官邸の報道室長は官邸を取材する報道機関でつくる「内閣記者会」宛てに文書で、質問を「事実誤認がある」「度重なる問題行為」とし「事実を踏まえた質問」をするよう申し入れた。
 また報道室長はたびたび、本紙記者が質問している途中に「質問は簡潔にお願いします」などと催促したり、遮ろうとしている。
 しかし、質問は本紙の取材、報道による事実関係に基づいたものであり、決して誤認ではない。
 もし、政府が事実誤認と考えるなら、会見の場で事実関係を提示し、否定すれば済むだけの話だ。
 菅氏は国会で「会見の様子は配信され、国内外で直ちに視聴できる。事実に基づかない質問が行われると、内外の幅広い視聴者に誤った事実認識が拡散される」と答弁したが、政府の反論が正しければ、誤った事実認識が拡散されることはないのではないか。
 憲法は「表現の自由」を基本的人権の一つとして、国民の「知る権利」を保障している。
 官邸報道室は申し入れに「質問権や知る権利を制限する意図は全くない」としているが、政府に都合の悪い質問をしないよう期待しているのなら見過ごせない。
 申し入れがあっても、質問を制限されないことは、知る権利を尊重する立場からは当然だ。
 菅氏はかつて会見で安倍晋三首相の友人が理事長を務める加計学園の獣医学部新設を「総理の意向だ」と伝えられたとする文部科学省文書を「怪文書みたいではないか」と語ったことがある。
 その後、文書は存在することが分かった。政府が常に正しいことを明らかにするとは限らない。一般に権力は、都合の悪いことは隠すというのが歴史の教訓である。
 権力を監視し、政府が隠そうとする事実を明らかにするのは報道機関の使命だ。私たち自身、あらためて肝に銘じたい。
 ≫(東京新聞2月19日付社説)


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追跡 日米地位協定と基地公害――「太平洋のゴミ捨て場」と呼ばれて
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