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中国のウイグル族収容施設、その実態は。 衛星画像からは「再教育」センターの増設が確認できる

2018-08-21 15:16:44 | 民族・人種問題・宗教・人権問題(差別・迫害)

中国のウイグル族収容施設、その実態は。

衛星画像からは「再教育」センターの増設が確認できる

2018 年 8 月 20 日 09:55 JST   THE WALL STREET JOURNAL

 中国政府は、イスラム教徒が大半を占める少数民族ウイグル族の収容を急拡大させている。当初の収容対象は

ウイグル族の過激派だったが、今では信仰心が特に厚くもない人や高齢者、体が弱っている人を含めて、

同国北西部の収容所に多数のウイグル族が収容されている。


 米当局者や国連の専門家によると、「政治再教育」収容所には最大で100万人のウイグル族が収容されている。

これは新疆ウイグル自治区に暮らすイスラム教徒人口のおよそ7%に相当する。


 一部の海外在住のウイグル族は親類――主に高齢者――が収容中または収容所から釈放された直後に死亡したと語る。


 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)と写真分析の専門家が見た複数の衛星画像からは、収容キャンプが

拡大していることが明らかになった。一部のキャンプではこの2週間ほど建設作業が続いている。あるキャンプは

WSJの記者が昨年11月に訪れた時の2倍の規模になっていた。

 

 収容政策の全容がこれまで明らかになっていなかったのは、多くのウイグル族が声を上げることを恐れていたからだ。

しかし今は経験を語る人が増えている。WSJがインタビューした元収容者6人は、椅子に縛り付けられたり、

十分な食事を与えられなかったりといった収容の実態を語った。


 22歳のアブリキムさんは収容所で「宗教などというものはない、なぜ宗教を信じるのか、神はいないと言われた」と

話す。アブリキムさんは記事中で名字を明かさないよう求めた。

 WSJは現在拘束されているウイグル族の親戚約30人とも話した。そのうち5人は、拘束された親戚が収容中か

収容所から釈放された直後に死亡したと語った。また多くが収容先や健康状態の把握に苦労したと話した。


 中国共産党中央統一戦線工作部の高官、フ・リャンヘ氏は先週、収容所の存在を初めて公式に認めたが、

収容所は「職業訓練センター」だと主張した。


 同氏は国連委員会からの質問に対し、新疆ウイグル自治区で「恣意的な拘束」は行われていないと述べ、

ウイグル族100万人の拘束を否定した。現在、何人が収容されているかは明らかにしなかった。

 

 テュルク語族であるウイグル族は1930年代と1940年代の2度にわたって、短期間ながら独立国家を樹立した

経験がある。新疆ウイグル自治区に暮らす1100万人のウイグル族の中には、今も東トルキスタンという独立した

祖国を求める人がいる。


 中国当局は、こうしたウイグル族の分離独立機運を抑えることに腐心してきた。政府を標的にした数十件の

攻撃についてウイグル分離独立派の責任を主張し、ジハード組織と関連があるとの見方を示している。

最近の攻撃の一部にはジハード主義者の特徴がみられ、テロ対策の専門家は数十人のウイグル族がシリアやイラクで

過激派組織「イスラム国(IS)」に参加したとみている。


 しかし、多くの専門家やウイグル族の活動家によると、自治区の混乱は中国の強引な取り締まりや宗教活動への

厳しい規制、同自治区に移住する非ウイグル族への優遇政策によるところが大きいという。


 中国政府は過去2年間、こうした規制の多くを強化した。男性がひげを伸ばしたり女性がベールを着用したり

することを禁止し、多くの専門家が「世界で最も広範囲に及ぶ電子監視プログラム」とする措置を導入した。


 複数の研究者によると、ウイグル族を裁判なしで拘束する今回の動きは1950年以降で最大。

拘束対象の拡大からは、ウイグル族などのイスラム系民族からイスラム教徒としてのアイデンティティーを

失わせようとする政府の意図がうかがえる。


 欧州文化神学学院(ドイツ)のエイドリアン・ゼンツ氏は「再教育は次の段階だ」と話す。厳しい取り締まりは

コストがかかる上に緊張も招いた。「(中国政府にとって)長期的な解決策は実際に人々を変えることだ」という。

トルファンにある収容所

 

 オアシス都市トルファンにある収容所では、中国語の文字で赤く「党の考えを理解し、党の言葉を聞き、

党の導きに従え」と書かれた看板が掲げられていた。WSJの記者が近づくと、見張りはこの場所から離れろと叫んだ。


 この収容所は有刺鉄線の付いた高さ約4.5メートルの塀に囲まれ、ところどころに監視塔がある。

米国のプラネット・ラボから入手した衛星画像によると、昨年6月以降に施設は拡張されており、今月も複数の

新しい建物が追加された。


 今年2月、アブリキムさんのところに出身地トルファンの警察から電話があった。当時、カザフスタンで国際関係を

研究していたアブリキムさんに対し、警察は新疆に戻らなければ家族が厄介なことになると警告した。

 

 帰国したアブリキムさんはトルファン郊外の施設に連行され、何日も取り調べを受けたという。

取り調べは両手、両足首を椅子につながれた状態で、最長で9時間連続で行われた。取調官は海外で宗教団体と

関わりがあったかどうかを知りたがったという。アブリキムさんは、そうした関与はなかったとしている。


 その後、他の人達と一緒に収容された。収容所では毎朝5時起床で、「共産党は素晴らしい」と叫びながら

45分間走ったあとに、薄いスープと蒸しパンの食事が与えられたという。

 

新疆ウイグル自治区カシュガルでモスク近くのナイトマーケットをパトロールする警察当局者(2017年7月)


 

 その後は政治の授業で、共産党の文書を読んだり、習近平国家主席に関する動画を見たり、

「共産党がなければ新しい中国はない(没有共産党就没有新中国)」などの愛国歌を毎日、最長で4時間歌ったりした。

 


 WSJがインタビューしたアブリキムさんら収容経験者によると、収容所では祈りやコーランの所有、

ラマダン中の断食の禁止を指示された。イスラム教で禁止されている豚肉を食べさせられたという人もいた。

 


 匿名の元収容者は「アラーではなく習近平に感謝すべきだと言われた」と語った。

 

 

 米国務省は先月、新疆ウイグル自治区について声明を発表し、「数十万人、あるいは100万人」に上る

ウイグル族などのイスラム教徒の拘束に懸念を表明。収容所で死者が出ているとの報告も複数あると指摘した。

 

 

 一方、中国外務省はファックスで声明を寄せ、同自治区では「全ての民族が調和して暮らしている」、

「うわさや中傷をでっち上げるのは無駄だ」などと述べた。公安省と自治区の政府や警察にもコメントを

要請したが回答はなかった。


ムラート・ハリ・ウイグルさんと母親

 

 フィンランドで医師として働くムラート・ハリ・ウイグルさんは昨年、トルファンで暮らす57歳の母親が

「愛国的なこと」を学ぶ「学校」に連れて行かれたと父親から聞かされた。1月には父親も収容所に連れて行かれた。

父親は政府の元通訳で、糖尿病を患っている。


 ウイグルさんによると、両親は世俗主義的なイスラム教徒で政治活動には関わっていなかった。父はときどき

酒を飲み、母はヘッドスカーフをかぶらなかった。


 収容されて以降、両親からの連絡はなく、正確な居場所を特定できていないという。トルファン在住の友人からは

収容所がトルファン周辺に3カ所あると聞いた。市政府と警察にコメントを要請したが、回答はなかった。


 ウイグルさんは「まるでブラックホールだ。人が入っていくけれど出てこない」と話す。「今は最悪の事態を

恐れている」


 欧州文化神学学院のゼンツ氏は、自治区の一部で2014年頃から地元当局が過激主義への対策として

「教育による変革」センターを設置していると話した。


トルファンで取り調べ中に死亡したとされるアダレット・テイップさん

 

 ゼンツ氏の推計によると、収容所は現在、最大で1300カ所ある。また78の施設について政府調達や建設に

関する入札があったという。施設には刑務所のようなものや警備が強化された小さな学校もあり、学校では訪問者は

テレビ会議システムを通じてしか生徒と話ができない。


 収容経験のある人や収容されている人の親戚によると、最も多い拘束の理由は外国を旅行した、

中国国外の親戚に連絡したか訪問した、スマートフォンにメッセージアプリ「ワッツアップ」をダウンロードしている、

だという。


 カナダ在住のウイグル族、アダレット・レヒムさん(34)は6月、63歳の義理の母親である

アダレット・テイップさんが3カ月前にトルファンで警察の取り調べ中に死亡したと聞かされた。


 義母は1年前に父親と再教育センターに連れて行かれるまで健康だったという。


 「私たちが知っているのは義母が亡くなったことだけで、遺体も見せられていないし、遺体の返却もない」

 父親はまだ収容所にいるという。


 
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