土木屋政策法務自習室(案)

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道路管理者の異なる交差点の補修工事を一体的に施工することについて考えてみた。

2018年02月27日 00時15分10秒 | 道路法

 道路は、各道路管理者が定めた区域(道路区域)を対象として、その道路管理者によって管理されます。 そのため、各道路管理者の維持管理の程度及び補修の時期の違いによっては、道路区域の境界となる箇所において路面状態が異なる場合があることとなります。
 しかし、路面状態の変化は、道路利用者にとって違和感を生じさせたり安全性を損ねることがあるため、道路区域の境界となる箇所であっても、同一の路面状態を保持し急激な変化を避けることが望ましいものと考えます。
 また、道路区域の別によらず一体として補修工事を行うことができるとすれば、各道路管理者が個々に工事を行うより全体として経済的であったり工事期間を短縮できたりすることとなり、道路利用者に対する影響が軽減できることが考えられます。
 ここでは、管理の境界となる交差点において、道路補修工事を一体的に施行することについて検討をしてみました。


道路管理者の異なる交差点の補修工事を一体的に施行するための検討
 
1.検討目的
 道路は、国、都道府県及び市町村等の道路管理者によって、各々の管理する区域、すなわち道路区域を対象として管理されている。主として国及び都道府県の管理する道路は地域の幹線となり、市町村道はその幹線に対して接続される場合があり、その接続箇所が交差点として管理の境界となることとなる。
 そのため、交差点が道路区域の境界である場合には、複数の道路管理者による補修工事が別々の時期に行われることとなる。
 しかし、交差点において補修工事対象範囲が複数の道路区域に及んでいる場合、道路区域を境界とせずに工事を行ったほうが全体としての工事費が安価になり、また交差点の通行規制の期間についても一時期に集中して行うことができるため、通行規制等による道路利用者に対する負担も軽減されることとなる。
 また、例えば県道との交差点を形成する市道の場合、その補修対象範囲は小規模な場合が多く単独の工事として発注するには小規模すぎるため請負工事の対象とはしづらい。また、通年委託の道路維持管理業務で補修するとすれば、当該業務が穴埋め、パッチング及びひび割れ補修等を予定しているため、面的な舗装打換えとなる交差点部の施工は業務の性質上施工が難しい。そのため、単独の補修工事として発注することが難しく、施工時期を適時に設定できない場合が生ずる。 
 以下には、前述の不都合を解決すべく、県道の補修工事の際に交差点部の市道道路区域の補修工事を一体的に施行することについて検討することとする。

2.一体的に施行する際の運用
 県道の管理は県が行い(道15)、市道の管理は市が行う(道16)こととされており、各道路管理者はその道路の管理上必要とされる事象について費用を支出することとなり、他の道路管理者の管理についてはその義務を負うこととはなっていない。
 また、一方の道路管理者(例えば県)が市の道路の管理費用を任意に負担することについても、地方自治法232条1項(※1)に違反することから認められない。
 そのため、工事費の支出は県及び市がそれぞれの道路区域に掛かる費用を負担した上で、工事の施工については県及び市の道路管理区域を一体的に行うことが必要とされる。
 この運用についての基本的事項を列挙すると以下の通りである。
 ・計画段階 道路管理者間による補修工事の調整
 ・契約段階 採用する契約方式
 ・施工段階 施工管理
 次には、各段階毎の運用の詳細について検討する。
 
※1 地方自治法232条1項 普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体の事務を処理するために必要な経費その他法律又はこれに基づく政令により当該普通地方公共団体の負担に属する経費を支弁するものとする。
 

3.計画段階(道路管理者間による補修工事の調整)
  • 県道の補修工事の区間に接する市道を一体施工の対象とする。
  • 前年度において、県は補修工事予定区間を市に示し、市が一体施工として補修工事を希望する箇所を県に示し承諾を得る。
  • 原則として、交通誘導警備員及び機械運搬費は県の負担とする。


4.契約段階(採用する契約方式
  • 県補修工事の公告の際、本工事と合わせて市道の補修工事(工事概要を記載)を行うこと及び市と随意契約を行うことを特記仕様書に明示する。
  • 市補修工事は、市財務規則に定められた随意契約の額(例えば130万円)を超えない設計額とする。
  • 市は、県の施工業者(契約者)と随意契約により契約を行う。


5.施工段階(施工管理
  • 施工計画書及び施工管理資料等は、様式の統一化、あるいは県と市の記述が分るよう明示した上で様式の同一化を図り、施工業者の負担軽減を図る。
  • 施工業者との打合せは、県、市及び施工業者の3者で行うことを原則とする。
  • 完成検査は、地方自治法234条の2第1項で各自治体に請負契約の検査が義務付けられている(※2)ことから、県と市の検査員がそれぞれの区域を対象として行う。
※2 地方自治法234条の2第1項 普通地方公共団体が工事若しくは製造その他についての請負契約又は物件の買入れその他の契約を締結した場合においては、当該普通地方公共団体の職員は、政令の定めるところにより、契約の適正な履行を確保するため又はその受ける給付の完了の確認(給付の完了前に代価の一部を支払う必要がある場合において行なう工事若しくは製造の既済部分又は物件の既納部分の確認を含む。)をするため必要な監督又は検査をしなければならない。
 

6.おわりに
  法律上、公物に対する管理区域が設定され、その区域の境界によって公物管理に支障が生じたり、利用者に不利益が生じたりするとなれば、それを克服することが必要です。
 競争入札による契約からすれば随意契約は例外的契約手法であると思いますが、前述の支障及び不利益の克服に対して有効であれば、随意契約を採用することも一考に値するものと考えます。
 
以上


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