こんばんは。Aokiです。
週末営業、路地裏の『名も無きBAR』。
今夜は、真面目な方が、その殻から
脱皮する瞬間が見られそうです。
☆☆☆
『マスト』
「そんなに決めつけなくてもいいんじゃないか?」
「いや、役人は働かないと思われているに違いない。
だから俺たちは、深夜まで働かなければならないんだ。」
少し腹の出た同僚に毅然と言い放つのは、
神経質そうに眼鏡の上側から覗き込むように話す男性。
おそらくは30代なのだろうが、団塊の世代を彷彿とさせる勢いだ。
二人の前には、いずれもウイスキーの水割り。
そう、スナックでもBARでも、席に着いたら“水割り”と
教え込まれた世代なのかもしれない。
「深夜まで働くったって、いつもそんなに
忙しいわけじゃないし・・・」
「そんなことはない。
仕事は自らつくりだしていかなければならないんだ。」
「そんなにむきになってやらなくても・・・」
「むきになんてなっていないさ。
みんな漠然と働いているけど、
もっと問題意識を持たなければいけないんだよ。」
「そんなもんかな~」
「そうさ、俺たちの一挙手一投足によって、
国民が役人のイメージを固めるんだ。
だから俺たちは、常に見られていることを
意識しなければならないんだ。
こういう場所でもだ。」
「ふ~ん」
常温の同僚は、沸騰寸前の連れに困惑気味。
温度差に憤りを感じた眼鏡君は、マスターに援護を求める。
「マスター、あなたなら分かるでしょう。
BARでは誰もがマスターの所作を見ている。
それに、客の誰よりも酒に精通していなければならない。
そうですよね?」
「それほど肩に力を入れる必要もないんですよ。
ここはお客さまが寛ぐ場所ですので、
そのお邪魔にさえならなければよいと思っています。
お酒についても、全て知っている必要はないのです。
BARでは、二つとして同じ酒はありません。
大切なのは、今宵出会えたお客さまが寛ぐための、
ほんの小さなお手伝いをする心ですので。
何かをしなければならないのではなく、
お客さまを感じ、どうしたらお客さまが寛げるかを考え、
そして行動することだと思いますね。」
予想外な答に、眼鏡君は戸惑いを隠せない。
「でも、常に最高のパフォーマンスが要求されますよね?」
「そうでもないんですよ。
主役はあくまでお客さまであり、名脇役はお酒です。
バーテンダーは黒子みたいなものですから、
もし間違っていたら直せばいいんです。」
しばし考えている眼鏡君に、同僚はハラハラ。
マスターは優しく見守る。
「主役はお客さまか・・・
あたり前のことを忘れていたのかもしれない。」
眼鏡のマスト君からメイビーが芽生えた。
今夜二つ目の扉が開かれた瞬間。
written by Z.Aoki
★★★★★★★★★
几帳面な方、真面目な方は、ときに
マストへ走る傾向も見受けられます。
丁寧な仕事には、マストよりも
思いやりが大切かと思います。
完璧を求めることは、世界を狭めることもあります。
いいかげんは良くありませんが、
好い加減であれば良いですね。
可愛らしいワンコも、そう言っています。
(本当は、「おやつのチーズをちょうだい」と訴えています。)
Z.Aoki
週末営業、路地裏の『名も無きBAR』。
今夜は、真面目な方が、その殻から
脱皮する瞬間が見られそうです。
☆☆☆
『マスト』
「そんなに決めつけなくてもいいんじゃないか?」
「いや、役人は働かないと思われているに違いない。
だから俺たちは、深夜まで働かなければならないんだ。」
少し腹の出た同僚に毅然と言い放つのは、
神経質そうに眼鏡の上側から覗き込むように話す男性。
おそらくは30代なのだろうが、団塊の世代を彷彿とさせる勢いだ。
二人の前には、いずれもウイスキーの水割り。
そう、スナックでもBARでも、席に着いたら“水割り”と
教え込まれた世代なのかもしれない。
「深夜まで働くったって、いつもそんなに
忙しいわけじゃないし・・・」
「そんなことはない。
仕事は自らつくりだしていかなければならないんだ。」
「そんなにむきになってやらなくても・・・」
「むきになんてなっていないさ。
みんな漠然と働いているけど、
もっと問題意識を持たなければいけないんだよ。」
「そんなもんかな~」
「そうさ、俺たちの一挙手一投足によって、
国民が役人のイメージを固めるんだ。
だから俺たちは、常に見られていることを
意識しなければならないんだ。
こういう場所でもだ。」
「ふ~ん」
常温の同僚は、沸騰寸前の連れに困惑気味。
温度差に憤りを感じた眼鏡君は、マスターに援護を求める。
「マスター、あなたなら分かるでしょう。
BARでは誰もがマスターの所作を見ている。
それに、客の誰よりも酒に精通していなければならない。
そうですよね?」
「それほど肩に力を入れる必要もないんですよ。
ここはお客さまが寛ぐ場所ですので、
そのお邪魔にさえならなければよいと思っています。
お酒についても、全て知っている必要はないのです。
BARでは、二つとして同じ酒はありません。
大切なのは、今宵出会えたお客さまが寛ぐための、
ほんの小さなお手伝いをする心ですので。
何かをしなければならないのではなく、
お客さまを感じ、どうしたらお客さまが寛げるかを考え、
そして行動することだと思いますね。」
予想外な答に、眼鏡君は戸惑いを隠せない。
「でも、常に最高のパフォーマンスが要求されますよね?」
「そうでもないんですよ。
主役はあくまでお客さまであり、名脇役はお酒です。
バーテンダーは黒子みたいなものですから、
もし間違っていたら直せばいいんです。」
しばし考えている眼鏡君に、同僚はハラハラ。
マスターは優しく見守る。
「主役はお客さまか・・・
あたり前のことを忘れていたのかもしれない。」
眼鏡のマスト君からメイビーが芽生えた。
今夜二つ目の扉が開かれた瞬間。
written by Z.Aoki
★★★★★★★★★
几帳面な方、真面目な方は、ときに
マストへ走る傾向も見受けられます。
丁寧な仕事には、マストよりも
思いやりが大切かと思います。
完璧を求めることは、世界を狭めることもあります。
いいかげんは良くありませんが、
好い加減であれば良いですね。
可愛らしいワンコも、そう言っています。
(本当は、「おやつのチーズをちょうだい」と訴えています。)
Z.Aoki