Rainy Soul ~イギリス研究留学してました~

研究者がアカデミックなことなどを中心に徒然なるままに書いています。イギリスに研究留学していた際の情報も載せています。

イギリス研究留学 PhD取得までの過程と理想的なキャリアとは

2019-03-27 | イギリス。
研究者になるにはPhDが必要ですが、日本とイギリスでは必要とされる条件が違います。
追記しながらぼちぼち書いていきたいと思います。自分の経験を基にある程度一般化しながら書いていますが、それぞれの事情で内容が異なる場合もありますので、ご了承ください。


まず、日本での博士号(PhD)の取得は一般的には、大学入学以降『学部4年+修士(博士前期)2年+博士後期3年=9年』が一般的です。
一方、イギリスでは、『学部3年+(修士1年)+PhDだいたい4年(プロジェクトによって異なる)=7-9年』が普通みたいです。
大学に入学する年齢はほぼ同じですので、イギリスの方が若くしてPhDを取得することが可能です。
そして、私が一番大きな違いと感じるのは、イギリスでは(少なくとも私の留学先では)PhDの取得にあたって投稿論文が必要ないということです。日本の場合は2-3報の投稿論文(査読有り)が要求されることが多く、これを満たせない場合は博士課程が4-5年になることもしばしばあります。しかし、イギリスでは博士の取得に論文要件がないことから基本的には期限内に学位を取得することができるようです。イギリスでは博士論文の審査としてVivaというものがあり、審査委員2名と3-5時間程度のディスカッションがありますが、基本的にはMinor correctionで通ることが多いみたいです。私が読んでみた博士論文は日本における修士論文+αくらいのものでした。このような背景があるので、海外ではPhDがないと一人前とみなされないということになるのかなと思いました。イギリスではPhDを取得後にアカデミックの世界に残るためには通常はポスドクを何年か行うことになります。日本では博士終了後にすぐあるいは2年後以内にパーマネントやテニュアトラックのポジションにつくことが多いので、日本の博士課程修了はイギリスで言う1度目のポスドクを終わったくらいに相当するかと思っています。

僕の留学先では、年間の授業料はundergradではHome/EU residentが£9250(約140万円), Overseaが£24540(約370万)で、PhDがHome/EUが£4260(約64万円)、overseaが£21770(約330万円)となっています。イギリスはバーミンガム大学を除きすべて公立の大学ですが、日本の学費(国公立では年間約60万円)と比べるとこのように非常に高く、海外からの学生も多いため、基本的に期間の延長が難しいというのも論文要件が無い事の一つの理由だと思います。

研究業績がなくてもPhDが取得できるのは、アカデミックな世界に残らない人にとってはメリットですが、アカデミックな世界を志す人にとっては大きなデメリットになります。他のヨーロッパ諸国、例えばドイツやスペインでは年数も含めて日本と同じようなシステムで、PhDの取得には投稿論文が必要です。なので、イギリスでは年齢の割には論文数が少ないという状況になりがちです。ヨーロッパ出身の人は普通に英語が話せる人が多いですから、言葉の壁が問題になることも少ないためポジションを取ることは容易ではありません。

日本ではヨーロッパと比べればポスドクとしてのシステムは充実しているとは言えません。それはポスドクを雇用できる研究費が圧倒的に少ないということが挙げられます。日本では科研費は申請者自身か、給料が発生しない学生が研究活動を行うことが前提になっていますが、こちらではPhDやポスドクの給料を含めての研究費となります。ですのでイギリスの大学の研究室の方が構成員の平均年齢が高めで、より研究機関としての要素が多くなります(日本はやはり教育機関としての要素が多いです)。


以上のようなことを鑑みると、個人的に考える理想的なキャリアとしては、
日本で博士の学位取得(学振DCがベター)➡海外特別研究員あるいはポスドクとして海外の大学➡帰国して助教などのポジション
となります。

若いうちに研究業績を多く得られますし、学費も比較的安いので純粋に学位を取得するだけなら日本の方がいいです。
ただポスドク環境は日本はあまり整備されていないのと、言語を含めて得られるものも多いので、ポスドクは海外をおススメしたいです。海外の方が共同研究が多いのでコネクションも得ることができるでしょう。そして、そこで新たに強みを得て日本でポジションを得る。これがベストでしょう。海外でポスドクをするためには相応の英語力が要求されますので、英語に自信が無ければ海外特別研究員など自分でファンドを得て、海外で研究するというのも選択肢の一つと思います。そのためには学生の間にしっかり業績を積んでおかないといけませんが……。それでも海外での研究経験を得られる人自体がそれほど多くないので、キャリア形成においては非常に大きなアドバンテージになるのではないかと思います。

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