蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

神話から物語りへDu Mythe Au Roman 3

2019年10月19日 | 小説
(2019年10月19日)
神話の伝播とは登場人物、筋立て、伝意(メッセージ)が一部族から隣接族に伝わる事象に他ならない。

まずは本投稿のために作成したパラダイム変換の表を提示します。

この表(下に拡大図)が本稿の結論です。以下に記述を;

フィンランド学派(歴史学派とも)は似通う神話を群と設定し、登場人物、動物、挿話、筋立てなどを神話要素に分解し、それらの頻度を計測、比較して最も多くの神話に採用されている要素を神話原典と特定するとした(本書187~189頁)。
写真(本書188頁)で最外周は基本形式(月の妻、Arapaho娘が月に誘われ妻となる)、その内側にヤマアラシの逸話(ヤマアラシに変身した月が娘を誘う)を置く。この図からすると神話原典は「基本形式」で、伝播にあたり一部を除き多くはヤマアラシを採用し….と伝播流れをつかみ、民族分布など地理条件とあわせ鑑みて、神話と民族歴史を構築するとした。(らしい、全て本書からの孫引用。小筆・蕃神はこれ以上を語れない)

写真:神話学フィンランド派が提唱した神話伝播のメカニズム(本書188頁)

レヴィストロースはこの方法に異を唱える。
<nous pretendons prouver ici que les qutre variantes , a partir desquelles Thompson croit reconstituer l ‘evolution historique du cycle de mari-etoile , ne different pas comme des objets internes dont on se contente de reconnaitre l’extention inegale dans l’espace et dnas la duree.>(本書191頁)
トンプソン氏は引用した4の神話をもって、「月の夫」神話の歴史サイクルを再構築できるとしたが、それらは神話自体が内包するところの対象物(レヴィストロースが唱える登場者「protagonistes」、単なる形体)に他ならずその空間的(移動)、時間的(経緯)の差異である(歴史サイクルなどは無い)。

ではレヴィストロースの神話伝播とは?
前述した提題の解を求める事、そのものである。前述は;
1 神話とは、発展する物語とは何か?
2 神話を逸脱し、なぜ物語に向かったのか?
3 神話群が形成する「範囲」とは何か?
前回投稿の最終部<モンマネキ神話の連辞(syntagmatique)側面には浮き出てこないけれど、範列(para-digmatique)側面に一つの主張が宿り、M354はM130の反対(の範列)であり、その逆はあり得ない>の解釈がそれらの解決につながる。

神話の伝播とは;
神話とは3分節の表現形式であり、それら分説は「形式」と「思想」とが対峙している。。形式とは人物動物、筋道であり、思想とは人物(動物)に取り付く役割である。例えば八岐大蛇は「破壊者」、日本武尊は「建国者」など、神話思考においては人物と役割に一貫性がある(これは3分節表現の言語、音楽でも同じである)。第一巻生と調理の前奏曲を参考にして作成(2019年5月31日)したPDFを参照してください(GooBlogではリンク付けができません、あしからず)。

レヴィストロースは;
形式の伝播を重要としない。それらは「空間的(移動)、時間的(経緯)の差異」(前述)の範囲で変化するし歴史「サイクル」など抽象概念なる代物ではないから、規則性を持たない。故に指標として採用しない。では何が伝播するのか;
神話の思想が伝播する。
思想とは「Syntagme, paradigmeのスキームを神話の同類比較に用いよとのお告げ」であります。そこで本日(2019年10月19日)にSyntagme, paradigme表を作成した(写真)。
用語の解説
1 グローバリズム。SyntagmeParadigmeの座標の内側、神話思想の「総括」
2 Syntagme;共時性(syncronie)を持つから分析思考(raison analytique)である。
3 Paradigme ;経時性(diachronie)、故に弁証法の論理(raison dialectique)である。

図:上の写真の拡大。本投稿のために作成した神話群のグローバリズム、パラダイム変換(部族民通信のオリジナル)

前引用の神話(M391,M392、M393、M255、M362、M345)の神話総括は天体の創造(=周期性の確立)である。各神話に共通するsyntagme連辞、分析思考は天体の創造、日夜の交替...(以下は写真を参照)となる。paradigme範列、弁証法の論理は罪、罰、抵抗(反逆)、追放、昇天である。
一神話を取り上げ解釈の手助けに;
M362神話(前回の投稿では引用を控えた、部族民通信ホームページ食事作法の起源3に引用されている)粗筋をパラダイム変換すると;
罪:polyandrie(一妻多夫)で義務(醜い次兄との性交)を拒否した長兄の妻
罰:権利を求めた側、次兄が末弟に殺される
抵抗:(記述はないが「呪う」などの言辞が発せられたはず)
追放:呪われるは不快、故に末弟は死骸の脚を切って池に捨てる、胴体は木につるす
昇天:脚が魚の起源、胴体はオリオン座になる(オリオン座は脚無し男と伝わる)。
(なお伝承していたMucushi族は途絶えたのでPolyandrieを習俗としていたかは確認できない。もしMonogamie(一夫一妻)ならば長兄妻の罪は末弟(次兄を殺害した)との姦通となるが、この筋道はバナールと感じるので)
このparadigmeには連辞syntagmeにある「天体の創造、(日夜の交替は欠ける)、季節、年月の周期性(発生)」がすでに沈潜している。これが<連辞(syntagmatique)側面には浮き出てこないけれど、範列(para-digmatique)側面に一つの主張が宿り>(前回10月17日投稿の記述)の意味である。他の神話も上述のごとく、パラダイム変換は可能である。
ここに展開しているSyntagme、Paradigmeとそれらが形成する視野のGlobalisme。この中に位置を占める神話の塊を「神話群」とするのである。

神話から物語りへDu Mythe Au Roman 3の了(次回は21日予定)


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